とね日記

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量子テレポーテーションや超弦理論の理解を目指して勉強を続けています!

大栗先生の超弦理論入門:大栗博司

2013年08月24日 01時04分55秒 | 物理学、数学
大栗先生の超弦理論入門:大栗博司」(Kindle版

内容
私たちは「どこ」に存在しているのか?物質の基本は「点」ではなく「ひも」とする超弦理論によって、ニュートンの力学、アインシュタインの相対性理論に続く時空概念の「第三の革命」が始まった。現代物理学における究極のテーマ「重力理論と量子力学の統合」にはなぜ「ひも」が必要なのか?「空間が九次元」とはどういうことか?類のない平易な説明の先に待ち受ける「空間は幻想」という衝撃の結論!
2013年8月刊行、288ページ。

著者略歴詳細な経歴
大栗博司
カリフォルニア工科大学 カブリ冠教授 および 東京大学 カブリIPMU 主任研究員。京都大学卒業、東京大学理学博士(素粒子論専攻)。
東京大学助手、プリンストン高等研究所研究員、シカゴ大学助教授、京都大学助教授、カリフォルニア大学バークレイ校教授などを経て、現職。
超弦理論の研究に対し アメリカ数学会アイゼンバッド賞(2008年)、フンボルト賞(2009年)、仁科記念賞(2009年)、サイモンズ賞(2012年)などを受賞。アスペン物理学センター理事、アメリカ数学会フェロー。
ホームページ: http://ooguri.caltech.edu/japanese
ブログ: http://planck.exblog.jp/


理数系書籍のレビュー記事は本書で229冊目。

ブルーバックス創刊50周年記念として刊行された日本の超弦理論研究の第一人者による一般向けの入門書である。(著者の大栗先生は9月8日に創刊50周年記念講演もされる予定だ。記念講演会の感想文記事はこちらからお読みください。)


超一流の科学者による入門書は異例のこと

僕のブログを読んでいただいている読者に大栗先生や超弦理論をあらためて紹介する必要はないのだろうけれども、日ごろ科学や物理学になじんでいない方がいらっしゃるかもしれないので、本書の出版が「きわめて異例」であることをまず説明しておこう。

科学系の入門書というものはこれまでにも数多く出版されてきたが、ひととおりの学問的な成果をあげた科学者が、定年を迎えられる前か定年後にお書きになったものがほとんどだった。近年になってようやく現役の先生方も入門書を出すようになり「時代は変化しつつある」ことが実感できるようになった。

けれども世界的に著名な超一流の科学者になるとそうはいかない。ご研究や学会、論文の執筆、後輩の指導などで忙しく一般書を書いているヒマがないのだ。

超弦理論は現代の最先端の物理理論として知られ、大栗先生はこの理論を研究されている第一人者のうちのおひとりである。

だから先生がお書きになっているブログを見つけたときや一般向けの著書を出版されたとき、朝日カルチャーセンターで講座を担当されることを知ったとき、そのたびごとに僕は度肝を抜かれていた。朝日カルチャーセンターの講座は一般市民向けのもので、先生が講座を担当されるのはイチローや松井のようなスーパースターが草野球チームに指導すべく定期的に帰国してくれるようなものだからである。講座で初めて先生にお会いしたときは(そして今でもそうなのだが)胸がドキドキしたし、質問させていただいたときも僕の声はうわずっていた。

これまでに先生は幻冬舎新書から「重力とは何か」、「強い力と弱い力」という2冊の入門書をお書きになっている。そして今回がブルーバックスから刊行された3冊目、先生がご専門に研究されている超弦理論がテーマだけにとても気合いのこもった本に仕上がっている。

以下は大栗先生ご自身による本書の紹介動画とブログ記事で、すでに本書をお読みになった方々の感想記事へのリンクも張られている。動画の冒頭で先生の両側にいらっしゃるのが1984年に超弦理論に革命をもたらす発見をしたマイケル・グリーン博士ジョン・シュワルツ博士だ!シュワルツ博士は超弦理論の生みの親でもある。お二人の業績も本書で紹介されている。



『超弦理論入門』: http://planck.exblog.jp/20587736/
『超弦理論入門』、1分42秒ビデオ: http://planck.exblog.jp/20642050/
人間原理: http://planck.exblog.jp/20663458/


読者モニターの件

本書は完成前に早刷の段階で「読者モニター募集」が行われていて、実をいうと僕はそれに参加していた。400文字以内での感想文を求められていたので、次のような文章を講談社の担当者に送っていた。

------ ここから ------
超弦理論は最先端の研究分野であるため日常の言葉だけで説明するのはとても困難なことです。一般の読者には直観に反し、理解しにくい理由は、物理学の他の分野と違って超弦理論の舞台が日常経験している空間次元と時間次元とは全く違う6次元の余剰次元の空間だからです。その舞台に入るためには相対論や量子論、ゲージ理論など超弦理論以前の高度な物理学の知識が欠かせません。一般向け書籍では前提となるそれらの理論の解説にページが割かれ、肝心の超弦理論にあてられるページ数が減ってしまいがちです。その点を大栗先生は十分心得ていて、超弦理論の解説をできる限り本の最初のほうから始めるという工夫をされていると思いました。また、理論を紹介するだけでなく「なぜそうなったのか。」のように理論の根拠や理論どうしの整合性をとてもていねいに解説されているので、超弦理論をより深く理解し、その正当性を納得することができました。
------ ここまで ------

早刷版


完成版は8月20日に出版され、一昨日入手することができた。早刷版にあちこち手直しをされているようなので、全体を読み直すことにした。

本書は6月に行われた「超弦理論(朝日カルチャーセンター)」という講座の内容に沿ったものだ。本と講座のどちらが先に進行していたのかはわからないが、本のほうが講座の内容よりもずっと詳しく書かれている。


僕の感想

先生の著書は既刊のものを含めて「素晴らしい!」の一言に尽きるのだが、それでは小学低学年並みの感想になってしまうので、僕が「すごい!」と思った箇所を列挙しておこう。

●卓越した日本語力、解説力

本書のタイトルが表紙に縦書きで書かれていることから象徴されるように、徹底的に「日本語で表現する」ことにこだわっている。センスのよいちょっとした言葉があるかないかで文章はとても理解しやすくなったりするものだ。たとえば本書45ページに外村彰先生のグループによる電子による干渉縞実験についての説明があるのだが、これを「一つひとつの電子が降り積もっていくと、それらが集まって波のように干渉縞ができることがわかります。」とお書きになっている。一見文学的な「降り積もる」というこの実験の本質を見事に表している言葉を見たとき大栗先生のセンスのよさに僕はうならされた。僕だったらもっと難しい言葉でだらだらと説明することだろう。

なお本書で紹介される「電子の二重スリット実験」や「アハラノフ-ボーム効果」については「目で見る美しい量子力学:外村彰」という記事で紹介している。

224ページの「しかし、膜には必ず円に巻きつかなければいけない『義理』はないのです。」という文にも感心させられた。『義理』という言葉は物理学の本ではまず使われることはない。「膜には必ず円に巻きつく必然性はない。」と表現するのが普通だ。細かいことだと思うが、『義理はない』とあえて言うことで読みやすい文章に仕上がっている。

●当たり前のことでも新鮮に思わせ、好奇心がくすぐられる

86ページには「『超空間』とはなにか」という節がある。この中で先生は「では、『普通の空間』とは何でしょうか。」と説明を始めている。中学の数学で学ぶようなことなのであえて説明する必要はないと思うのが普通だが、大栗先生は手を抜かない。

「普通の空間では、空間の中の位置を特定するのに、数字の組を使います。たとえば、…」のように続ける。こうやって空間を定義してもらうと読者は昔習ったことを思い出し「ああ、そういうことだったよな。」とうれしくなるのである。さらに「3次元空間での待ち合わせ」として京都の町での待ち合わせの例が紹介され、「四条河原町の高島屋の6階で」のように「四条」、「河原町」、「高島屋の6階」という3つの座標が待ち合わせに必要なことを説明する。当たり前な「普通の空間」のことがこんなに新鮮で素敵な例で理解できるなんて素晴らしいなと思いながら読者は早く次を読みたい気分にさせられるのだ。

あと92ページに「物理法則の回転対称性」の説明で「上下が特別な方向であると私たちに感じられるのは、私たちが住んでいる地球が重力を及ぼしているからであって、」と普段当たり前に感じていることに対して、あらためてその再発見としての意味合いを強調されているあたりは、さすがだなと思ってしまうのだ。憎いほど細かい配慮が行き届いている。

●論理に飛躍がないこと、理論と理論の整合性がていねいに解説されていること

早刷版に対して送った感想文にも書いたことだが、「なぜそうなったのか。」ということをとても大切にして説明を展開されている。超弦理論は9次元空間の理論だというけれども、「次元を増やせばいろいろなことの説明が自由にできるだろうし、超弦理論は何でも説明可能な都合が良すぎる理論なのではないか。」という大ざっぱな素人考えを持っている方もいるかもしれない。けれども相対論や量子力学、場の量子論、素粒子物理学とのつながりをその都度ていねいに説明し、また超弦理論の発展史の中でも新しい考え方がでてくるたびに「なぜそうなのか?」を先生は説明されている。このように論理に飛躍がないので、きちんと読みさえすれば最後までちゃんとついていける本なのだ。

理論の整合性についてだが、ファインマン先生のことが大好きな僕にとって、場の量子論のために考案したファインマン図進化した形で超弦理論でも活躍しているのを見たときはうれしかった。

●専門用語は使われるが、自然に理解できてしまうこと

一般向け書籍といえども物理学の本を専門用語を使わずに書くと冗長になり、かえって読みにくいものとなってしまう。かといって専門用語を多用すると読みにくくなるのも事実だ。本書では難しい用語を使ったらかならず日常表現で言い換えをして説明しているので読者は自然な文脈の流れの中で理解できてしまう。152ページでは「アノマリー」のことを「理論の病気」と言い換え、さらに「理論の整合性が失われてしまうことを、アノマリーといいます。」と続けているあたりは見事だと思った。

●数式は2つでてくるが、本書の魅力アップに効いていること

一般向けの本では「数式を1つ書くたびに読者は半分減る」ということが言われている。悲しいことだが数式はそれだけ敬遠されるというのが一般常識なのだ。先生はもちろんそれを承知されているにもかかわらず、本書では数式を2つ(厳密に言えば3つ)紹介している。

まず「オイラーの公式」である。



これがものすごく不思議な式だということは、算数さえできればすぐわかる。本書の巻末にその証明が与えられているのは、とても親切でうれしく思う読者が多いことだろう。

そして2つめは弦理論や超弦理論の次元の数Dが決まってしまう不思議を示した数式だ。結局それはDを変数とする1次方程式になるのだが、その解を求めるときにDの箇所に直接、次元の数を代入して方程式が成り立っていることを示している。普通は変数を移項したり、両辺から同じ数を足したり引いたりして方程式を解くプロセスを示すのだろうけれども、あえてそういう手順は示さない。数式アレルギーを持っている読者に敬遠されないための細かい配慮だと思った。

大栗先生の本では弦理論の場合の空間の次元数25を求める方法が紹介されているが、以下の記事によると超弦理論のときの時空の次元数10は次のようにして求めるのだそうだ。(超弦理論で空間の次元数は9である。)

宇宙を支えていたのは、驚異のたし算だった 人はたすことをやめない~オイラーの超絶技法 | JBpress(日本ビジネスプレス)
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/46939



「1+2+3+4+…=-1/12」をわかったつもりになる
(高校数学レベルの解法、このページの「無理やり-1/12を導出する方法」という箇所)
http://nakaken88.com/2014/12/08/080818

なぜゼータ関数の自然数の和は無限大に発散しないのか?
(大学数学レベル、解析接続を使った解法)
http://www.geocities.jp/x_seek/Euler.htm

また次のページは超弦理論にいささか懐疑的なのだが、時空の次元数10の計算方法が紹介されている。

超ひも理論とループ量子重力理論は実在のものなのか?
http://www7b.biglobe.ne.jp/~kcy05t/nigst.html


●先生独自のユニークな例示で解説されていること

弦理論や超弦理論の次元の数の導出手順を示した本は、おそらく本書以外にないだろう。(と先生もお書きになっている。)

また電磁場の法則のゲージ対称性や場の量子論でのゲージ対称性、ゲージ原理の説明に、金利相場と為替相場、裁定機会の動きを例にとったきわめてユニークな解説をされている。これは先生の「専売特許」と言ってもいいだろう。また、それを理解するために必要になる「位相」という数学概念も先生の考案した考え方によって素人でも理解できる説明がなされている。

「ゲージ原理」を日常語だけで解説した本として先月「「標準模型」の宇宙:ブルース・シューム」を紹介したが「リー群論」の説明に踏み込んでいるため、相当なページ数が説明に割かれている。大栗先生の本では、対象読者を明確に意識し、難しい数学理論にはあえて踏み込まず、かなり少ないページ数で効果的に「ゲージ原理」を解説するという目的を見事に達成されている。

●実験による検証がされたことが紹介されていること

超弦理論を「数学的な机上の理論にすぎない。」と考えている科学者がいるのも事実だ。けれども本書246ページから「重イオン衝突実験」で「クォーク・グルーオン・プラズマ状態」を作り出すことに2005年に成功したことが紹介されている。これは超弦理論の「重力ホログラフィー原理」で予言されていたことである。実験による検証が紹介されている点も本書の特長のひとつだと思った。

●解明されてない事柄にも触れていること

超弦理論は「究極の理論」とか「万物の理論」とも言われているが、現在は発展途上の理論だ。この理論で説明できない事柄が本書では紹介されている。究極の謎解きは始まったばかりであることを大栗先生は正直に述べられている。先生のそのような姿勢にとても好感がもてた。

●先生ご自身のことが紹介されていること

大学院に入られてから現在にいたるまで、先生ご自身のご研究が超弦理論の発展史にどのように関わってきたか、とても詳しく若い頃の先生や同僚研究者の写真付きで紹介されている。まさにリアルで今も発展途上にある理論であることがわかり、ますます興味が沸いてくるのだ。


今回の紹介記事では本書で解説される理論自体の説明はしなかった。それは僕の中途半端な説明を読むより、大栗先生による第一級の説明(つまり本書)をお読みになったほうがよいと思ったからだ。

超弦理論に至る100冊の物理学、数学書籍」という記事を書いたことがあるが、もし「最短で超弦理論に至るための一般書籍」という記事を書くとしたら間違いなく大栗先生の「重力とは何か」、「強い力と弱い力」と今回紹介した「大栗先生の超弦理論入門」の3冊ということになるだろう。


最後にひとつだけ気になっていることがある。先生のお書きになる一般向け本や朝日カルチャーセンター講座はこれで打ち止めになるのではないかということだ。そのように心配するのは前著2冊と本書、先日の講座で超弦理論までひととおり完結したからである。

でもおそらくそれは杞憂だと思う。きっと新しい展開が待ち受けているに違いない。


関連記事:

重力とは何か アインシュタインから超弦理論へ、宇宙の謎に迫る:大栗博司
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/f63cdcd45ec542fa62d535b4cc715d69

強い力と弱い力:大栗博司
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/06c3fdc3ed4e0908c75e3d7f20dd7177

素粒子論のランドスケープ:大栗博司
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/5201583450c82ac59cb4d71efe52b3d9

はじめての〈超ひも理論〉:川合光
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/2484943aee0230f7f2df114a6a543fe4

Dブレーン―超弦理論の高次元物体が描く世界像:橋本幸士
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/e18ed1e00f1c877cf3e7926a564f01ae

超弦理論に至る100冊の物理学、数学書籍
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/d37fe65a84df23cca2af7ecebb83cfc6

超ひも理論、M理論に至る勉強ロードマップ
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/0e1ae44c88899b9c469b24012d180cca

販売状況:日本語の超弦理論・M理論の教科書
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/61e4dd2232d54cf4a5f3da1aeb83975a

カラビ-ヤウ空間を見てみよう!
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/b3ab2b9875e9a2b81b055153c078439b

見えざる宇宙のかたち:シン=トゥン・ヤウ、スティーヴ・ネイディス
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/943c5a3cf09a78c3b4e8e933ce379879

重力のふしぎ(朝日カルチャーセンター)
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/243ec8bcf130122f0b25d7838a33b6a8

重力をめぐる冒険(朝日カルチャーセンター)
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/0471486930f344c4daa7aaa5ba2fdcc4

ヒッグス粒子とは何か(朝日カルチャーセンター)
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/f4a1756c8de4273487ffac8184c8b0c7

強い力と弱い力(朝日カルチャーセンター)
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/59084db3bdfb94a2705989a51fcc37ab

超弦理論(朝日カルチャーセンター)
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/ee9d62fa4bcd23fe49301d6b015ea52f

ブルーバックス創刊50周年、特別記念講演会
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/cf675b90b22a9437d2b984c703b45768


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大栗先生の超弦理論入門:大栗博司」(Kindle版


内容:
物質の基本は「点」ではなく「ひも」――これが「超弦理論」の考え方です(「超ひも理論」と同じですが研究者は超弦理論と呼んでいます)。しかし、なぜ「ひも」なのでしょうか? 超弦理論は物理学者の悲願「量子力学と重力理論の統合」を期待される最先端の理論ですが、それだけに難解です。
●なぜ「点」ではなく「ひも」なのか?
●なぜ「弦理論」ではなく「超弦理論」なのか?
●なぜ超弦理論は9次元あるいは10次元の理論といわれるのか?
●なぜ超弦理論では量子力学と重力が矛盾しないのか?
多くの人たちの理解を阻んできたこれらの「壁」に、『重力とは何か』『強い力と弱い力』(いずれも幻冬舎新書)がベストセラーとなった大栗先生が挑み、誰にでもわかる、しかしごまかしのない説明にチャレンジします。なかでも「次元の数」が決まる理由の謎解きは圧巻です。そこでは、あのオイラーが発見した、ある驚異的な公式が大活躍します。読んでいくうちに空間は9次元であると当たり前のように思えてくるでしょう。
そして最後には、とんでもない疑問に突き当たります。「私たちが存在しているこの空間は幻想ではないか?」というのです。空間は9次元だと思ったら、実は幻想だった! 世界の見方が根底から覆る衝撃を、ぜひ体験してください。
本書はブルーバックス創刊50周年にして初めて、表紙の書名を縦書きにしています。そこには、この難解な理論を「日本語の力」で説明してみせるという著者と編集部の思いが込められています。
※早刷版をご覧いただいた読者モニターの方からは、さっそく次のようなご感想をいただきました。
「何が問題で、どう解決したのか。私自身が謎解きをしているようでした」
「誰もが一度は考える物質や時空の成り立ちに、 こうも広大な知の営みがある。この世界や、生きていることの素晴らしさが実感できる、 いつまでも心に残る最高の一冊です!」
「一見浮き世離れしたような理論をこれほどまで読みやすくわかりやすい表現で明示した労作は前代未聞。理系を毛嫌いするすべての老若男女に一読を勧めたい」
「現代の理論物理学が難解なのは、理論が進化してきた過程が見えなくなっているからだ。大栗先生は300頁に満たないこの本で『進化のはしご』を再現するという離れわざをやってのけた」

はじめに

第1章:なぜ「点」ではいけないのか
- 「点」とは部分を持たないものである
- 物質は何からできているか
- 標準模型の問題①暗黒物質と暗黒エネルギー
- 標準模型の問題②重力を説明できない
- 遠隔力の不思議を説明する「場」
- 点粒子だから起きる「無限大」の問題
- 「点」を放棄しないアイデア
- Column:「ひも」か「弦」か

第2章:もはや問題の先送りはできない
- 無限大を解決する二つの可能性
- 光は「波」でもあり「粒」でもある
- 「反粒子」から生じる無限大もある
- 予想以上に機能した「くりこみ」
- くりこみが可能にした「無知の仕分け」
- 重力がくりこみに歯止めをかける
- ブラックホールは階層構造の終着点
- Column:思考実験

第3章:「弦理論」から「超弦理論」へ
- 根本的な解決をめざした弦理論
- 17種類の素粒子が「一種類の弦」から現れる
- 開いた弦はタリアテッレ、閉じた弦はペンネ
- なぜ弦は無限大を解消できるのか
- 光子は「開いた弦」の振動
- 「閉じた弦」は重力を伝える
- 弦理論と超弦理論の違い
- 「超空間」とはなにか
- 「超対称性」とはなにか
- 私たちは超空間にいるのか
- Column:南部の失われた論文

第4章:なぜ9次元なのか
- なぜこの世界は3次元なのか
- 弦理論が使える空間は25次元
- 光子には質量がない
- 「量子ゆらぎのエネルギー」はゼロではない
- 「光子の質量」の求め方
- 脅威の公式が導く25次元
- なぜ超弦理論は9次元なのか
- Column:「わかる」ということ

第5章:力の統一原理
- 力には共通の原理がある
- 電磁場は金融市場に似ている
- 電場と金利相場
- 磁場と為替相場
- 金融市場にもある「電磁誘導」
- 電磁場にも「通貨」がある
- 電磁場の「物差し(ゲージ)」は回転する円
- 「高次元の通貨」を考えたヤン-ミルズ理論
- Column:金本位制とヒッグス粒子

第6章:第一次超弦理論革命
- 見捨てられかけた超弦理論
- パリティを破れないII型の超弦理論
- 「病気」を抱えていたI型の超弦理論
- 標準模型のアノマリーは相殺された
- 「32次元の回転対称性だ」
- 超弦理論と弦理論の「結婚」:ヘテロティック弦理論
- カラビ-ヤウ空間で9次元をコンパクト化
- カラビ-ヤウ空間のオイラー数が「世代数」を決める
- 人間原理への抵抗
- Column:学問の多様性

第7章:トポロジカルな弦理論
- 忘れられない第一次超弦理論革命の感激
- 距離も測れない空間で何ができるのか
- 計算のしかたがわかった
- トポロジカルな四人組
- カリフォルニアで直面した第二次超弦理論革命

第8章:第二次超弦理論革命
- ウィッテンが抱いていた不満
- 一つの理論の五つの化身
- 二つのII型理論を結びつけた「T-双対性」
- 異端、されど美しい10次元の超重力理論
- 1次元の弦から2次元の膜へ
- 10次元の理論から9次元の理論を導けるか
- 「力の強さ」が次元を変える
- 「双対性のウェブ」とM理論
- 次元とは何か、空間とは何か
- Column:宇宙の数学

第9章:空間は幻想である
- 10次元空間に現れる5次元の物体
- 「主役」を降ろされた弦
- 開いた弦が張り付いたDブレーン
- 弦は復活した
- 開いた弦は「ブラックホールの分子」だった!
- 事象の地平線は映画のスクリーン
- 重力のホログラフィー
- 空間は幻想である
- 検証された予言
- 空間は何から現れるのか
- オー、マルダセナ!

第10章:時間は幻想か
- 空間とは何か
- 時間は幻想か
- なぜ時間には「向き」があるのか
- 宇宙の始まりを知っている重力波とニュートリノ
- 超弦理論の挑戦は続く

あとがき
さくいん
付録:オイラーの公式

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12 コメント

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Unknown (ベイシー)
2013-08-24 09:31:40
超弦理論は単なる数字の遊びで物理が無く興味なし。
ベイシー様 (とね)
2013-08-24 10:39:00
超弦理論は「机上の理論にすぎない。」という反対の立場をとる科学者がいるのも事実です。
そのような反対のご意見、反証論文などで議論や考察が深まることで科学は進歩していくのだと思います。
超弦理論は物理 (hirota)
2013-08-24 11:29:57
ここの6/23の記事でも重イオン衝突実験に使用されてると書いてあるのに、読んでないのかね?
興味なくて無知な事で、わざわざ恥を書く事もなかろうに。
Re: 超弦理論は物理 (とね)
2013-08-24 11:40:59
hirotaさんへ

この記事にも重イオン衝突実験での検証のことを追記しておきました。
専門書レベルで超弦理論を学んだ方かどうか厳密には判断できないので上のような返信をさせていただきました。
相対性理論にしても「間違っている!」と考える人も今だにいるくらいですから、生まれたばかりの超弦理論を受け入れることができない人がいるのは仕方がありません。

あと、どんなに面白い科学書でも、世の中には全く関心をもたない人ってたくさんいますしね。僕にしても「面白いよ!」と薦められても無関心な分野はたくさんあります。
まさに一流の学者 (えいいち)
2013-08-24 23:43:18
全く違う分野なのですが、日本を代表する国文学者である小西甚一先生がこのようなことを本に書いていました。
「これからの日本を背負ってゆく若人たちが、貴重な時間を割いて読む本は、たいへん重要なのである。学者が学習書を著すことは、学位論文を書くのと同等の重みで考えられなくてはいけない(古文研究法)」
新しい事を発見する、高度な事を理解するのも学者の仕事ですが、次世代を教育することもまた、学者に求められる極めて重要な仕事なのだと思っています。
大栗先生ともなると、その日々の忙しさを想像することは難しくないですが、そんな中でブルーバックスでの入門書を執筆してくださるとは、本当に有難く、素晴らしい。感服しました。
素晴らしい本を紹介していただき有難うございました。時間が空いたときに、是非とも目を通したいです(僕も一応理系卒とはいえ、かなり難しそうですが笑)。
超一流の学者の言葉がここまで身近に読めてしまうなんて本当に素晴らしい世の中、時代だなぁと、感動してしまいました。
Re: まさに一流の学者 (とね)
2013-08-25 00:37:08
えいいち様

気持ちのこもったコメントをいただき、ありがとうございます。
まさにえいいち様のおっしゃるとおりですね。

カルチャーセンターの大栗先生の講座はこれまでに何度も受講しましたが、講義が夕方や夜終わるにも関わらずそのの足で空港へ向かわれたことが何度かありました。これだけお忙しいと疲労もたまるはずですが、毎回お会いするたびにお元気なので先生は風邪ひいたり、体調崩されたりすることがないのかな?と不思議に思ったこともありました。
先生の本、たくさんの方がお読みになるといいですね。
小西甚一 (アルキメデス)
2016-01-05 20:47:41
小西甚一博士は

量子力学まで学んだといいますからね

国文学者なのに

私が俳句や短歌などに興味持ったのも

小西甚一博士の
「俳句の世界」
「日本文学史」

読んだから
Re: 小西甚一 (とね)
2016-01-05 22:41:27
アルキメデスさん

小西甚一という人を知らないなと思ったら、国文学者なのですね。ウィキペディアで見ると

能(観世流)、狂言(和泉流)、俳句(『寒雷』同人)、将棋4段で、能・狂言は自ら舞台にも立った。
国文学者としては珍しく、語学を得意とし、英語・中国語に堪能で、ドイツ語・フランス語は読み書きができ、朝鮮語を読むことができた。

と書かれています。そのうえ量子力学までとは。。。
国文学に生かそうとして (アルキメデス)
2016-01-06 00:35:11
量子力学学んだそうですよ

学園紛争のとき
毅然とした態度で対応し 左派学生に敵視されたとか

サムライです
ドイツ語は (アルキメデス)
2016-01-06 00:37:53
ハイデガーの存在と時間を読むためじゃないかな

国文学に生かすために
アルキメデスさんへ (とね)
2016-01-06 00:54:53
昔は教授側にも学生側にもサムライがいましたね。山本義隆先生のように。

アマゾンで「存在と時間」の日本語訳でいちばん古いのを探したところ1960年~1963年に刊行されたものがありました。これがいちばん古いのかわかりませんが、原書を読むのがいちばんなのでしょうね。

同じくアマゾンで小西甚一先生の本でいちばん古いのを検索したら「梁塵秘抄考」というのが見つかりました。1941年刊行で先生が25歳の頃の著作です。本当に長い期間、国文学に貢献された方なのですね。
フッサール (アルキメデス)
2016-01-06 02:00:05
ハイデガーの師匠は現象学始めたフッサールですが

フッサールは

1+1=2

は意味が確定しているが

君はバカだ

にはいろんなニュアンスがある

この違いは何か

から哲学に進んだとか

存在と時間の和訳は英語訳より早かったと聞いたことあります

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