とね日記

理数系ネタ、パソコン、フランス語の話が中心。
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重力波、中性子星で観測…重い元素の誕生解明

2017年10月17日 01時43分11秒 | 物理学、数学
2017年8月17日におきた2つの中性子星の合体(左:物質密度、右:重力波)


まさかここまでの発表が行われるとは思っていなかった。これがその動画である。(3時間40分、再生開始から14分後に記者会見が開始する。)




日本時間午後11時に始まったライブキャスト。中性子星の合体による重力波をLIGO-Virgoで観測したという発表だろうという噂は飛び交っていたので、あとは詳しく解説を聞けばよいだけだと思っていた。ブログの記事もその方針で準備していた。

しかし、予想をはるかに超えた発表に、最初にきた「ヤッター!」という感動は、次第に「なんてことだ!」という驚愕の感情に変わっていった。


世界中で70もの天文台が共同観測したのだという、発表は次々と順番に行われている。こんなライブキャストは初めてだ。

新情報が増えつつあるので、この記事はいま書けるところまで書いて、あとは数日をかけて書き足していくことにしよう。だからときどきチェックしてほしい。


今回発表されたことで確認できたことを箇条書きにしておこう。

- LIGO-Virgoで中性子星の合体によっておきた重力波を初めて検出できたこと。
- 世界中の天文台でこのイベントをガンマ線、X線、可視光、赤外線、紫外線、ラジオ波などで16日間に渡り追跡観測したこと。
- 中性子星から発するショート・ガンマ線バーストが初めて観測されたこと。
- その結果、重力波と光(および電磁波)の速度が同じであることが初めて確認できたこと。(一般相対論の予言の検証ができた。参考:EMANの相対論「重力波」のページ)
- 中性子星で鉄より重い金などの元素が生成されたことを初めて確認できたこと。(金など重い元素の起源が明らかになったこと。)
- 中性子星の合体で生じると予想されていた巨新星(キロノヴァ)も光学望遠鏡の追観測で初めて観測されたこと。
- イベントを起こした中性子星は地球から1億3000万光年離れたところにあること。中性子星の質量はそれぞれ太陽質量の1.6倍、1.1倍であったこと。

論文と解説図はここに公開されている:
https://journals.aps.org/prl/abstract/10.1103/PhysRevLett.119.161101

Focus on the Electromagnetic Counterpart of the Neutron Star Binary Merger GW170817
http://iopscience.iop.org/journal/2041-8205/page/Focus_on_GW170817?utm_medium=email&utm_source=iop&utm_term=&utm_campaign=12734-36073&utm_content=FI


LIGO(ハンフォード)、LIGO(リビングストン)、Virgoで観測された重力波の周波数の変化
右上がりになっているのは周波数がだんだん高くなっていることを示し、これは合体が近づくにつれ2つの中性子星がだんだんと高速に回転していることを意味している。




欧州望遠鏡でも重力波観測(発生場所、より正確に)#LIGO #Virgo」という記事でわかるように、重力波としての観測はこれまで4回なので、今回のが5回目となる。2017年8月14日にVirgoで初めて観測されてから、わずか3日後の出来事だったのである。

GW150904
GW151226
GW170104
GW170814
GW170817 ≪- 今回の観測

ブラックホールによる重力波が観測され、ノーベル物理学賞が決まったばかりなのに、これほどたくさんのノーベル賞級の発表が次々と発表される。重力波天文学の幕開け早々、舞台には大勢の役者が登場し、ドラマチックな展開を見せることになった。マルチメッセンジャー天文学が始まったと言ってよい。新情報のあまりの多さに頭の整理がつかない。

この先生方が順番に発表するのだ。(ライブキャストは3時間40分続いた。)





10月17日の午前10時に東京大学と国立天文台による発表が行なわれた、日本の観測機関も参加した結果の発表である。仕事時間に重なったので昼休みに記事を書き足した。

概要:
https://www.nao.ac.jp/news/science/2017/20171016-j-gem.html

詳細1:
https://www.subarutelescope.org/Pressrelease/2017/10/16/j_index.html

詳細2:
http://www.cfca.nao.ac.jp/pr/20171016


2017年10月17日(火)10:00より、理学系研究科と国立天文台における「重大な研究成果に関する発表会見」の動画:再生開始から11分後に会見が始まります。


すばる望遠鏡 HSC で観測された重力波源 GW170817 の様子。(クレジット:国立天文台)









重力波の速度とガンマ線(電磁波)の速度の比較(参考:EMANの相対論「重力波」のページ)


ショート・ガンマ線バースト



Twitterでアンケートをしたところ、58人の方に投票いただいた。新聞一面に載ったにもかかわらずあまり話題にされていない。世間の科学に対する関心度はこのようなものだ。




なお、中性子星って何?という方は、以下のページをお読みいただきたい。

星の一生 宇宙ワクワク大図鑑
http://www.kids.isas.jaxa.jp/zukan/space/star.html

中性子星 宇宙ワクワク大図鑑
http://www.kids.isas.jaxa.jp/zukan/space/neutron.html



重力波、中性子星で観測…重い元素の誕生解明(読売新聞)

【ワシントン=三井誠】宇宙で重い天体が運動した時に出る波「重力波」を観測する米国などの国際研究チームは16日、二つの中性子星が合体して放出された重力波を今年8月に初めて捉えたと発表した。

 この合体で金など重い元素が生まれたことも、世界約70の天文台が参加した光(電磁波)の観測で判明した。一つの天体現象で重力波と光を同時観測したのは初めてで、鉄より重い元素が誕生した起源の解明につながる成果だ。関連論文は英科学誌ネイチャー(電子版)などに掲載された。

 発表した米カリフォルニア工科大などの研究チームによると、合体は地球から1億3000万光年離れた宇宙で起きた。二つの中性子星が互いの重力で引き寄せられ、合体する際にガンマ線やX線などの電磁波を出すため、研究チームが世界90以上の天文台などに追跡観測を呼びかけ、日本のすばる望遠鏡(米ハワイ州)などが参加した。

 重力波は2年前、ブラックホールの衝突で初観測された。装置の開発に貢献した研究者3人は今年のノーベル物理学賞に選ばれている。

 【中性子星】=巨大で重い恒星が寿命を迎えて爆発し、小さく縮んだ時にできる天体の一つ。原子核を構成する陽子と中性子のうち中性子が密集し、半径約10キロ・メートルでも太陽の1~2倍の質量がある。さらに重い恒星が寿命を迎えるとブラックホールになる。


中性子星合体の重力波 日本チーム、光を観測(日本経済新聞)

 国立天文台と東京大学などは17日、重力波をもとに中性子星の合体によって発生した光の観測に初めて成功した国際共同研究の発表を受けて記者会見した。吉田道利・国立天文台ハワイ観測所長は「一連の観測に日本も少なからず貢献した。中性子星合体で生じた光をとらえた人類初の成果」と意義を強調した。

国立天文台と東大などは中性子星合体による光の観測に初めて成功したことを受けて会見した。
 重力波は時間や空間のゆがみが波のように伝わる現象で、今年のノーベル物理学賞の受賞テーマとなった。

 研究では、米国の「LIGO(ライゴ)」と欧州の「VIRGO(バーゴ)」の観測施設で、中性子星が合体した重力波をとらえた。その報告をもとに、日本チームは国立天文台のすばる望遠鏡(米ハワイ)などの施設で合体によって生じた光を観測した。

 吉田所長は「重力波だけでは正確な位置は分からない。光をとらえることでどんな天体なのかが分かる」と話した。成果は重い中性子星が合体して金などの物質が宇宙で生まれた起源の解明につながると期待されている。


ちなみに以下は、今回のニュースとはまた別の発表だ。これもすごい成果である。

「超新星爆発」数日後の様子観測…東大チーム(読売新聞)

東京大の土居守教授らの研究チームは、寿命を迎えた星が爆発する「超新星爆発」直後の様子を捉えるのに成功したと発表した。

 研究チームは昨年4月、米ハワイ島のすばる望遠鏡に取りつけた高性能カメラを使って、地球から約18億光年離れた場所で爆発から数日しかたっていない超新星を見つけた。世界各地の望遠鏡でも詳しく観測したところ、恒星が燃え尽きてできる白色矮星わいせいと呼ばれる星で、まず星の表面を覆うヘリウムが核融合反応を起こし、それが引き金となって、内部が圧縮されて星全体が爆発した可能性が高いことがわかった。

 こうしたタイプの超新星爆発は、一つの銀河で100年に1度ぐらいしか起きず、観測できるのは珍しいという。超新星爆発のメカニズムの解明に役立つと期待される。


関連解説記事:

重力波の直接観測に成功!(とね日記では、この記事がいちばん詳しい。)
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/a8439e8e4d81d7873422737d7bd1640d

2017年 ノーベル物理学賞はワイス博士、バリッシュ博士、ソーン博士に決定!
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/4f6e5823d5cf2358aff0aee5f855e9cf

中性子星の合体による重力波観測か?(LIGOとVirgo)
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/82784e11bf2c22d96e8ad27ad0b0393a

欧州望遠鏡でも重力波観測(発生場所、より正確に)#LIGO #Virgo
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/dbc609477e38672166890301aeca5bdb

10月16日に重力波に関する大きな発表が行なわれる
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/b99c5b1ab7390194bb2e080952b05fa0

アインシュタインが重力波について書いた論文の解説記事。アインシュタインの思考過程がわかるように書いた。1918年の論文では重力波の速度が光速に等しいこと、エネルギーを伝搬することが導かれている。1937年の論文では回転する天体から放射される重力波の形を求めている。

アインシュタイン選集(2): [A8] 重力波について(1918年)
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/7f70d0291e823674435342acba782017

アインシュタイン選集(2): [A9] 重力波について(1937年)
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/52cc9130211d52e55eb1d2ea9f4a9465


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4 コメント

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負けたあ~ (ひゃま)
2017-10-17 04:57:26
中性子星ってとねさんの予想に負けたなw

伊達に 累計400万アクセス達成!じゃないな

素直にいいましょう。

累計400万アクセスおめでとうございます。
Re: 負けたあ~ (とね)
2017-10-17 11:42:42
ひゃま様
勝ち負けじゃないですよ。w
でもうれしい結果ですよねぇ!

僕のほうは「噂」を信じていたから当たっただけです。今日の東大と国立天文台の記者会見もワクワクしますね。こういう科学史に残る仕事にたずさわれるのは幸せなことです。うちの会社から国立天文台でアルマ望遠鏡のプロジェクトの仕事に転職した友人がいますが、うらやましいです。

400万アクセスのお祝いありがとうございます!これからも楽しみながらがんばります。
IOP (ひゃま)
2017-10-17 12:02:42
IOPからメールきたので、リンクしておきますね

Focus on the Electromagnetic Counterpart of the Neutron Star Binary Merger GW170817
http://iopscience.iop.org/journal/2041-8205/page/Focus_on_GW170817?utm_medium=email&utm_source=iop&utm_term=&utm_campaign=12734-36073&utm_content=FI
Re: IOP (とね)
2017-10-17 12:14:00
ひゃま様
ありがとうございます!電磁波にフォーカスした観測結果ですね。

ブログ記事本文にURLを追記させていただきました。

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