とね日記

理数系ネタ、パソコン、フランス語の話が中心。
量子テレポーテーションや超弦理論の理解を目指して勉強を続けています!

時間旅行はできるようなのです。(タイムマシンのこと)

2006年03月23日 02時47分53秒 | 物理学、数学
どうやら理論的には時間旅行は可能なようだ。

日曜に掲載写真のようなタイムマシン関連の本を2冊買って読んでみた。両方ともSFの本ではない。タイムトラベルに関連する最新の物理理論をわかりやすい言葉で解説したもので、両方ともアインシュタイン以降現在に至るまでの最先端の物理学の研究成果から予想されるタイムトラベルについての仮説を解説している。この分野について大学時代まではいくつかの本を読んでいたのだが、久しぶりに現代科学に触れてみてかなり驚いた。僕が大学生だったころに得ていた知識から、たった20年でかなりの理論的な発展をとげているのだ。

アインシュタインが一般相対性理論で物質の重力は空間と時間を曲げてしまうことを予測し、1950年代から70年代にかけてその予測は実験によっても確認された。つまり光が重力で曲がることや、光の速度が一定であること、物質の質量はエネルギーと等価で質量をエネルギーに変換すると膨大な破壊力を持つ核爆弾などが作れることなどが証明された。またアインシュタインとは別にボーアが唱えはじめた量子論によって電子の位置と運動は同時には観測できず、波動方程式による確率分布としてしか捕らえることができないことも確認された。この相対性理論と量子論を基礎として20世紀の物理学は発展したわけである。相対性理論も量子論も完全ではなく両者相容れない理論だ。両方をまとめてひとつの理論とする試みがなされてきたが、いまだに結論はでていない。(統一場理論)

これらの理論を数学的に僕は勉強して理解してきたわけではないけれども、それらの成果については受け入れてきたつもりだ。つまり重力で空間や時間が伸び縮みすることなど。実際、高速で移動する飛行機に載せた原子時計と地上に置いた原子時計の間の進み具合にアインシュタインの予想したのと同じ時間の差が観測されたというのだから、その実験結果を信じるしかない。

しかし、タイムマシンの本を読むうちに、自分がこれまで受け入れてきた先人たちの研究成果の断片と、最近ニュースで見た科学上の成果を考え合わせると、とんでもないことになりそうなのだ。それが今日紹介した本の前半部分を構成している。

因果律という言葉をご存知だろうか。物事には原因があって結果があるという法則だ。手からボールを離したからボールが地面に落ちる。親が結婚したから(結婚しなくてもすることをしたから)子供ができる。受験したから大学に合格する。などである。原因よりも結果が先に起こることは絶対にない。因果律は宇宙全体について成り立つ大鉄則だ。相対性理論だって量子論だって、すべての物理法則は因果律が守られなければ成り立たない。

アインシュタインは「光速を超えるものは存在しない。」と予測した。何故か?

光速を超えるものが存在すると因果律が崩壊してしまうからだ。これが崩壊すると世の中がめちゃくちゃになってしまうから、これだけは絶対にゆずれない条件だったのである。

しかしながら1990年代以降、光速を超える物質の存在が実験によっていくつか観測されてきているのだ。1992年にドイツのケルン大学のチームが「トンネル効果」の実験をした際に光速の1.7倍〜4倍で進む電磁波を観測。2000年にはアメリカのプリンストン大学の研究チームがセシウムガスを入れた容器にレーザーを照射したところレーザーが光速の310倍で進む現象が観測されたのだ。

また、先日NHKの「プロフェッショナル 仕事の流儀」という番組で紹介されたのだが、東大の古澤明助教授が世界ではじめて素粒子のテレポーテーションの実験に成功した例がある。テレポーテーションとは物質や情報の瞬間移動のことである。瞬間移動はもはやSFではなく現実なのだ。この理論は1対の電子(2つの電子)の回転がお互いに離れていても同時に影響し合うという「電子のからみ合い(専門用語でentanglement)」を基礎とした理論だ。つまり、片方の電子の動きは離れた場所(どんなに離れていても)同時にもう一方の電子に伝わるのだ。光速どころか無限大の速度が存在することの証明になるではないか。(注:テレポーテーションでは古典チャネルと量子チャネルの2つを使う。古典チャネルでは光速で情報が伝わり、量子チャネルでは瞬時に情報が伝わるので全体としてテレポーテーションは光速で伝わる。量子チャネルについては光速を超えているわけだ。)

ひとつひとつのニュースや研究成果は、ふーんなるほどと納得してきたが、それらを合わせるとどのような結論がでてくるのか考えてみる。

A君とB君が地球上にいるとしよう。A君は地球にとどまり、B君は地球時間の午前0時に光速の0.8倍で航行するロケットに乗って宇宙の彼方に旅立った。その2時間後の午前2時ちょうどに地球に残ったA君はロケットにいるB君に向かって光速の4倍で伝わる通信を送信する。B君は地球時間のほぼ30分後(午前2:30)にこの通信を受ける。このときB君は地球から約14億キロの宇宙を飛行している。ところがロケット内にいるB君にはこれはあてはまらない。光速の0.8倍で飛んでいるからロケット内では地球上より時間がゆっくり進んでいるからだ。相対性理論による計算によると時間の流れ方は0.6倍に遅くなるのでB君は自分の時計で午前1:15にA君からの通信を受信する。

しかし、ロケットのB君の基準から見ると状況は違う。彼から見ると光速の0.8倍で遠ざかっているのは地球である。そして彼の時計で午前1:15には、地球は彼から約11億キロほど離れている。そこでA君からの通信を受け取ったB君はただちに返信をA君に向けて送信する。受け取った瞬間に返信したとすればB君が午前1:15に光速の4倍の速度の通信を使って返信すると、B君の時計で15分後の午前1:30にA君に届くはずだ。

しかし、この返信を受け取る地球のA君は光速の0.8倍で遠ざかっており、B君から見るとA君の時計は0.6倍のゆっくりした速さで時を刻んでいる。そのためB君が彼の時計で午前1:15に返信した通信はA君には彼の時計で午前0:55に届いてしまう。つまりA君はB君に通信を送るより1時間以上も前にB君からの返信を受け取ってしまうのだ。

超光速が存在すると、このようにわけのわからないことが起こる。これが因果律の崩壊である。でも、理論が何を予言しようと、この宇宙でそんなことが起こってはこまるのである。だからアインシュタインは超光速を決して認めようとはしないままこの世を去った。

しかし、前に述べたように1990年代以降、超光速で進む電波や情報、素粒子が観測されてしまったわけだ。どういうことなのか。

タイムマシンから話がそれてしまったように見えるがそうではない。もしあなたがA君が送った送信と一緒に宇宙を飛んだらどうであろう。午前2時に出発し、B君の元に到着してからB君の返信と一緒に地球のA君のもとに戻る。A君のところには午前0:55に戻ってくる。つまり過去に1時間ちょっとのタイムトラベルをしたことになる。

A君とB君の通信のやり取りを図で示してみた。



さて、タイムトラベルが理論的に可能なことが示された。そうするとタイムパラドックスの名で知られる数々の矛盾が頭をもたげてくる。

その1つの例が「親殺しの問題」だ。もし自分が過去に遡って子供時代をすごす母親を殺したとしたらどうなるだろうか。自分は母親から生まれたのだから自分も消滅してしまうのではないか。すると母親を殺しに行く自分も存在しないわけで。。。。とどうどうめぐりになり、矛盾が生じてしまう。これが「親殺しの問題」である。このような矛盾を生じさせるのだからタイムトラベルができるという前提が間違っている。これがタイムトラベルを否定する人の根拠である。少なくとも僕自身もこれらの本を読むまでそう信じてきた一人だ。タイムパラドックスはこれ以外にもたくさんあるが、興味があったら本を買って読んでほしい。

紹介した本の後半では、因果律の崩壊をさせずにそしてタイムパラドックスも矛盾なく説明できるようなタイムトラベルの理論を考えることができるかということにページが割かれている。

それが「多重世界」という考え方だ。これは量子論の確率的な現実解釈からもたらされるもので、物を観測する行為自体が物のあり方に影響を与えてしまうという考え方を発展させたものだ。「多重世界」のほか「並行世界」、「パラレルワールド」と呼ぶこともある。

箱の中に1匹の猫がいるとしよう。箱の中には放射線を出す装置と毒ガスを出す装置も設置してある。もし放射線が出れば毒ガス装置が作動して猫は死んでしまう。放射線が出なければ猫は死なない。箱を開けるまで放射線が出ているか出ていないかは放射線の電子の運動の波動方程式によって決定されるから量子論によると確率的にしかわからない。すなわち箱を開けるまで猫が生きているか死んでいるかは確率的にしかわからないのである。そして箱を開けるという行為が猫が生きているか死んでいるかという結果を現実化させるということが重要な点だ。箱を開けるまでは「猫が生きている世界」と「猫が死んでいる世界」の2つが存在するというのが量子論的なこの世界の解釈である。この猫の実験のことを「シュレディンガーの猫の実験」という。

「母殺しのパラドックス」に話を戻す。母親を殺した場合、その時点から新しい別の世界がはじまり、母親を殺さなかった場合の世界とは独立して新しい歴史が誕生するというのが量子論から発展する「多重世界」の考え方である。多重世界は無数に私達の世界の身近に存在する。母親を殺す殺さないはいささか物騒であるが、そこまでいかなくてもたとえば「もし自分が今日友達に会っていなかったら」という分岐点から派生する別の世界も存在する。もし今日の夕食にハンバーグを食べていなかったらという別の世界も存在する。この世界で「もし」で考えられるすべてのことの数だけ「多重世界」は存在するのだ。また別の世界から見た僕たちの住んでいるこの世界は彼らの世界にとっての多重世界のうちの1つに過ぎない。どの世界が現実でどの世界が仮想世界かということでなく、それぞれの世界が同じ現実性を持って存在している。また、それぞれの世界の間では因果関係はない。すなわち私達は別の世界を見ることはできない。

多重世界の考え方を認めると、因果律を崩壊させることなく超光速の存在やタイムトラベル、タイムパラドックスを矛盾なく説明できるのだ。自分が過去にタイムトラベルして母親を殺したとしても、母親がいないもうひとつの世界がそこからはじまるので派生したその世界では因果律は保たれている。母親がいない世界では自分は生まれず、その代わりにこの世界からタイムトラベルしてきた自分が生き続ける。多重世界全体としては因果律の崩壊は生じていない。

これが紹介した2冊の本の書かれていることで、残りの部分は「それではどうやってタイムマシンを作ったらよいのか。」という方法が理論を添える形で3〜4つ解説されている。

多重世界の考え方はSFの世界では昔からあった。しかし、これが現在最先端の物理学や数学の分野で真面目に研究されていることを思うと、あらためてこの世界の不思議さを感じる。

今日紹介した本:(「タイムマシンの作り方」のほうが面白いしわかりやすいのでお勧めです。)

タイムマシンの作り方:買う
タイムマシンを作ろう:買う

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6 コメント

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難しい日記 (laiaizi)
2006-03-23 22:45:50
分かりやすく書いてあるが、やっばり数学、物理がいつも不合格だった私にとっては、分かるような気がしますが、分からないのです。



つまり過去に1時間ちょっとのタイムトラベルをしたことになる。



これはどいうふうに理解すればいいですか?光速よりもっと早いスピードの超光速という物質は存在するので、時間旅行が出来るのこと?この時間差を利用して、過去、未来へ行けるのこと?、過去、未来もすでに存在するわけ?またこの世界のほかに、また別世界も存在する?科学幻想小説みたいのものですね。



頭がちょっと混乱になってしまう....





Re: 難しい日記 (とね)
2006-03-24 00:38:45
> つまり過去に1時間ちょっとの

> タイムトラベルをしたことになる。

> これはどいうふうに理解すれば

> いいですか?



通信を手紙の封筒だと思ってください。そしてその封筒に自分が入っていると思ってください。午前2時に地球を出発してB君の乗っているロケットに到着。そしてB君の返信封筒に乗って地球に戻るのだけど、地球への到着時刻は午前0時55分。つまり出発時刻の午前2時から1時間5分だけ昔の時点に到着してしまいました。普通は到着時刻のほうが出発時刻より後ですよね。だけどこの場合は過去に到着してしまったので「過去へのタイムトラベル」になっています。



ポイントはAがBの時計を見ても、またBがAの時計を見ても相手の時計のほうが自分の時計よりゆっくり進んでいるように見えることです。AもBも自分の時計が正しいと思っています。時間の遅れは常にお互いにとって相対的なのです。ここが難しいところでしょう。わかりましたか?



この説明でもわからなかったら、図を見て理解していただければ十分です。



> 光速よりもっと早いスピードの

> 超光速という物質は存在するので、

> 時間旅行が出来るのこと?



はい、そうです!



> この時間差を利用して、過去、未来へ

> 行けるのこと?、



はい、そうです!!(理解してますね。)



> 過去、未来もすでに存在するわけ?



はい、そうです!!!(理解してるじゃないですか!)



> またこの世界のほかに、また別世界も

> 存在する?



はい、そうです!!!!(ちゃんと読み取れていますね!)

図解が理解しやすい (lailaizi)
2006-03-24 14:30:26
図解を見ていなかったため、理解が苦しかった。たぶんそいうことじゃないかなってコメントを出しました。今、大体理解が出来ています。



図解が理解しやすい (とね)
2006-03-24 17:02:57
理解できてよかったです。
Unknown (necktie)
2008-10-22 20:26:59
テレポーテーションですか…うーん、
「物体や情報が軌跡を描かずに別の地点に移動すること」
と認識しているのですが、コレでいいんですか?
necktieさんへ (とね)
2008-10-22 23:18:50
necktieさんへ

古い記事へのコメントありがとうございます。

> コレでいいんですか?

はい、そのとおりです!テレポーテーションについては以下の記事を参考にしてください。

テレポーテーションは実現している。(リンク集)
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/cc0bc7e88d02231138f8b6a9f5859c93

量子のからみあう宇宙
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/eca52392c32b9903c004183915c812d7

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Unknown (lailaizi)
?光倒流可以????(1/3) ?文