とね日記

理数系ネタ、パソコン、フランス語、映画の話が中心。
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だれにでもわかる図解素粒子物理: 京極一樹著

2008年12月13日 17時40分02秒 | 物理学、数学

だれにでもわかる図解素粒子物理」は先日紹介した「こんなにわかってきた素粒子物理」と同じ著者による本だ。近所の書店に平積みしてあった。

後者を出版した直後に今年のノーベル物理学賞が発表されたため、より一般向けの内容で急いで出版したのがこの「だれにでもわかる〜」である。急いで出版したとはいえ、説明はしっかりしているし記述内容を流用しているわけではないので両方買ってもお金の無駄遣いにはならない。ノーベル賞受賞をお祝いして本には金色の帯に「祝 2008年ノーベル物理学賞受賞」と書かれている。

南部・小林・益川先生はとても小さな世界の物質を研究して受賞したのだということを知っていても、それにどういう意味があるのか、どうして小さい世界と宇宙のことに関係してくるのかわからない、というのが世間一般の人の見方なのだと思う。そういう方にはまず「ニュートン臨時増刊:すぐわかる素粒子物理学」をお勧めする。そして、それではと物足りないという方にこちらはお勧めなのだ。現時点の啓蒙書でいちばんよい本だと僕は思う。

宇宙の起源の痕跡は原子よりはるかに小さな素粒子の種類や性質の中に残されている。素粒子物理学は今現在を知るだけでなく宇宙の歴史にとって考古学のようなものでもある。この極小な世界のからくりを解き明かすことは、この宇宙やその中に含まれる物質がどのように存在していたか、そして現在どうしてこのように存在しているのかを理解することなのだ。

小柴先生の受賞のときに比べて、今年の受賞は日本勢圧勝というインパクトがあり、そのおかげで素粒子物理学の一般書、啓蒙書がたくさん出版された。これまでは相対性理論、量子力学のものは多かったが素粒子物理学の良書は少なかったからだ。

物理学に限らず物事を理解するということにはいろいろなレベルがあると思う。やさしく書かれた入門書で納得できてしまう人もいれば、より深く学ばないと納得できな人もいる。「対称性の破れ」を例え話で説明されても納得できない人も多いだろう。

物理学は詳しく学べば学ぶほど、そして究極的にはその理論の数式や論文を理解できれば、より深い感動と高揚感が得られるものだ。どうして感動や高揚感が得られるかと言えば、それは目に見えなくても現実に存在する世界のからくりをとても正確に解き明かしていく作業をみずから追体験することだからだ。それによって現実の世界がこのようにあることの理由が明らかになっていく。当たり前の世界が神秘に変わる瞬間だ。

それぞれ自分に合ったレベルの良書を選んで最初は興味に過ぎないものを生きた知識に、そしてその知識を感動や高揚感にまで高められればよいと思う。物理学で得られる高揚感は、学校の算数や数学の問題で正解にたどり着いたときの達成感などよりはるかに深いものなのだ。

こんなにわかってきた素粒子物理」のほうは数式が多く含まれている専門書と啓蒙書の中間レベルであるのに対し、「だれにでもわかる図解素粒子物理」では数式は使われていない。(ごく一部に使われいるが、これは使われているうちに入らない。)図版と表を多く使って読みやすくする工夫がされている。

日本語が読めて多少の根気さえあれば誰にでも理解できる本だ。日本語が読めてというのは乱暴な言い方だが、この分野の専門用語はその都度ていねいに説明してあるので予備知識が不要。中学生以上ならば読み進めることができる。しかしこの本から得られる素粒子物理学の知識は(数式がないことを除けば)大学院で使われている教科書にかなり近い。

来年春のLHC再稼動に向けて勉強する時間はたっぷりある。師走のあわただしさを忘れてこの人類の英知にどっぷり浸かってみるのも楽しいかと思う。

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だれにでもわかる図解素粒子物理(目次)

第1章: 2008年ノーベル物理学賞と素粒子物理学小史

1.1 南部・小林・益川氏の受賞
日本の素粒子物理学はトップレベル
- 2008年ノーベル物理学賞プレスリリース
- プレスリリース解説

1.2 素粒子物理学小史
素粒子物理学の発展の6つの段階
[1] 前期量子論の時代(〜1924年)
[2] 量子力学・加速器登場の時代(1925年〜1945年)
[3] 新粒子発見・理論発展の時代(1946年〜1959年)
[4] 標準模型の基礎確立の時代(1960年〜1969年)
[5] 6つのクォークの時代(1970年〜1983年)
[6] 標準模型の進化の時代(1984年〜)

第2章: 素粒子とは何か

2.1 物質を構成するもの
物質は何からできているのか
素粒子にはどんなものがあるか
- 分子・原子・原子核・電子・クォークの大きさ

2.2 クォークとは何か
どうしてクォークが必要だったのか
- メンデレーエフの周期表とクォーク模型
どんなモデルが提案されたのか
- フェルミ-ヤン模型→坂田模型→クォーク模型

2.3 クォーク模型とは何か
素粒子の分類と量子数
スピン量子数とは何か
- クォークの組み合わせによる核子の構成
- スピン量子数の成分の考え方
- クォーク模型の4つのグループ
アイソスピンとは何か
ストレンジネスと超電荷とは何か
- メソン八重項の構成
オメガ粒子(Ω-)の発見から[カラー]へ
- 3つのクォーク(u,d,s)の量子数一覧
バリオン量子数一覧表(u,d,s)

2.4 中間のまとめ
ハドロンとレプトンの関係は?
物質の素粒子がすべて見つかった?
- 物質を構成する粒子・素粒子一覧

2.5 4つの力と素粒子
4つの相互作用とは?
素粒子と相互作用の関係は?
- 4つの相互作用とゲージ粒子
- 素粒子の簡単な一覧図

2.6 π中間子とK中間子
中間子論と強い相互作用
陽子と中性子を結びつけるものは何か
- 核力のふるまいと湯川力の証明
π中間子の発見
K中間子の発見とストレンジネス
- クォーク模型におけるK中間子のπ中間子への崩壊

2.7 クォーク発見の歴史
クォークの発見
現代のラザフォード散乱
- ラザフォード散乱における散乱の度合い
- 原子核内外の散乱実験の概要
ラムダ粒子の発見
- 散乱実験では粒子の2乗和しか見えない
- 散乱実験では粒子の運動量も見える
チャーム・クォークの発見
- ラムダ粒子とは何者か?ストレンジクォークを持つ粒子であった!
- 強い相互作用の質量への影響が小さいクォークは?
ボトム・クォークとトップ・クォークの発見
- 5つのクォークと中間子の関係

2.8 レプトンとウィークボソンの発見
レプトンとは何か
クォークとレプトンの対称性
- クォークとレプトンの3つの世代と質量
ミューオンとタウ粒子の発見
ベータ崩壊におけるニュートリノの発見
- ベータ崩壊におけるエネルギーの分配
弱い相互作用とウィークボソンの発見
フェルミ型相互作用とは何か
湯川ポテンシャルでの力の比較

2.9 ファインマン図の見方
ファインマン図とは何か
- ベータ崩壊のファインマン図

2.10 ニュートリノの探求
3種類あったニュートリノ
- π中間子とタウ粒子の崩壊で生ずるニュートリノ
- 電子・ニュートリノとミューオン・ニュートリノの判別実験
ニュートリノはどうやって捕まえるか
- カミオカンデとスーパーカミオカンデ

第3章: 素粒子理論とはどんなものか

3.1 標準模型とは何か
標準模型・標準理論とは何か
標準模型の基礎理論
- 標準模型の構成
- 宇宙創成直後に起こった4つの力の分離の過程
素粒子に働く力の統一理論
ゲージ理論とは何か
- 標準模型から大統一理論に向けて

3.2 量子力学とは何か
光の粒子性と物質の波動性
- プランクの量子仮説
- レーナルトの実験
シュレーディンガー方程式の発見
ハイゼンベルグの不確定性原理
- ハイゼンベルグの不確定性原理に関するガモフの思考実験

3.3 量子電磁力学とは何か
粒子から波動へ・波動から粒子へ
粒子の生成・消滅の取り扱い
- 粒の量子化と場の量子化
- 素粒子物理学における真空状態
量子電磁力学とくりこみ理論
- 電子と光子の相互作用と量子電磁力学におけるくりこみ

3.4 量子色力学とは何か
量子電磁力学 vs 量子色力学
カラーとグルーオンの導入
- クォーク反応のダイナミクス
グルーオンの導入と量子色力学の構築
- クォークのカラー荷の交換のしくみ
グルーオンの検出
強い相互作用の漸近的自由性
- ハドロンジェットとは何か
- クォークどうしを近づけたり引き離したらどうなるか

3.5 電弱理論とは何か
電磁相互作用と弱い相互作用の統一
ウィークボソンとは何か
- 標準模型と4つの相互作用と媒介粒子
- アップ/ダウン・クォークとレプトンなどの分類
ゲージ理論の対称性
- ゲージ理論の簡単な説明

3.6 素粒子の質量の根源は何か
標準模型における素粒子の質量
- 素粒子の右巻き・左巻きと弱い相互作用
- 左巻きしかない粒子んびは質量がない?
ヒッグス粒子とヒッグス機構
- 対称性の自発的破れの解説
カイラル対称性の自発的破れ
- 質量発生のプロセス

第4章: 最新の素粒子の理論と実験

4.1 クォークの崩壊とB中間子
クォークの崩壊
B中間子崩壊の実験
- 弱い相互作用によるクォーク崩壊の例
B中間子研究の意義
- B中間子崩壊の親粒子
- KEKB加速器とBファクトリー

4.2 物理法則の破れとは何か
素粒子反応と保存則と対称性
- 保存量の保存・非保存(標準模型)
- 保存則と対称性
保存される物理量
相互作用によって保存される/されない量子数
- アイソスピン・弱アイソスピンの例
フレーバーと世代の保存・非保存
パリティの破れとC変換・P変換
素粒子の電荷・質量とクォーク・レプトンの崩壊
CP対称性の破れ
- CP対称性とは?
- K0中間子崩壊とCP対称性の破れ

4.3 CP対称性の破れの理論と実験
CP対称性の破れを解き明かした小林・益川理論
- 小林・益川理論の構造
- 中性K中間子崩壊のペンギン過程
世代混合のしくみ
B中間子崩壊におけるCP対称性の破れ
- 宇宙に反物質が少ない理由は?
- ウプシロン中間子とB0中間子の崩壊

4.4 ニュートリノ振動とは何か
ニュートリノ振動の観測
- ニュートリノ振動のしくみ
人工ニュートリノによるK2K実験
人工ニュートリノによるニュートリノ振動検出実験
T2K実験による3世代間振動の研究
ニュートリノ質量の精密測定
- 最後のニュートリノ振動
- 二重ベータ崩壊とマヨラナ粒子

4.5 標準理論を越えて
大統一理論・超大統一理論とは何か
SU(5)模型の現状
- 標準理論では統一できない3つの力
超対称理論とは何か
超弦理論・M理論・量子重力理論とは何か
- 超対称理論と超対称粒子

4.6 LHCとは何か
始動したLHC
LHCにおける日本の役割
- LHCの規模と実験装置
- LEP・LEPII・LHCとヒッグス粒子探求の歴史
LHCとヒッグス粒子
- 粒子のエネルギーと加速器の発達

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キーワード
素粒子物理学 ニュートリノ 対称性の破れ 素粒子物理 クォーク模型 ニュートリノ振動 量子電磁力学 弱い相互作用 ノーベル物理学賞 強い相互作用 量子色力学 ベータ崩壊 ファインマン図 ヒッグス粒子 ゲージ理論 グルーオン ハイゼンベルグ ミューオン 対称性の自発的破れ
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