クラシック音楽オデュッセイア

2009年の大病以来、月1回程度の更新ペース。クラシックに限らず、身の回りの事なども、気の向くままに書いております。

梅雨の合間に聴くマイスキー

2014年06月29日 | 演奏(家)を語る
去年と同様、今年の梅雨もまたいかにも梅雨らしい梅雨で、よく雨が降る。今日(2014年6月29日)の天気は、その谷間になるような貴重な晴天。今FM放送で、おなじみの『名演奏ライブラリー』を聴いているところ。チェロのミッシャ・マイスキー特集である。1曲目は、私が極めて苦手とするバッハの無伴奏なんたら第1番。この曲については何一つ知った風なことは言えない身分だが、「ああ、いい音だなあ、このチェロ」といった感じの好ましい印象を受けた。

続いて、ピアノのアルゲリッチと組んだフランクのソナタ。有名な<ヴァイオリン・ソナタ>をチェロ用に編曲しての演奏(1981年録音)。馴染みのない音にいささか戸惑い、今一つ聴いていて乗り切れないものがあるけれど、演奏自体は非常に熱のこもった立派な物。特に第2楽章後半と、第4楽章最後の追い込み。このあたりは、ピアノともども気迫十分で非常に聴き栄えがする。

3曲目はバーンスタイン&イスラエル・フィルと共演したブロッホのヘブライ狂詩曲<シェロモ>。この曲については、同じバーンスタインがフランス国立管を指揮してロストロポーヴィチと共演したEMI録音が断トツ、極めつけの豪演であるため、他の演奏はすべて2位以下の順位になってしまう(※あくまで私の中では、の話だが)。同曲の録音をすべて聴いたわけではないので断言はできないものの、今日改めて聴いてみて、マイスキー盤はその第2位につける物かもしれないなと思った。雄弁なチェロを、オーケストラが情熱的に支えている。(管弦楽の響きが十全な厚みを出しきれないのは、オーケストラ自体の限界だろう。)これはロストロポーヴィチ盤の凄演をちょっと一回り小ぶりにしたような演奏、とでも言えるだろうか。(※今思いつくところだと、この2つと並んで私の心に残る同曲の名演は、オーフラ・ハーノイとチャールズ・マッケラスの共演盤。)

4曲目は、オルフェウス室内管弦楽団と共演したヴィヴァルディの<チェロ協奏曲>。いかにもオルフェウスらしい演奏というか、輪郭のくっきりした音とメリハリの利いた表情付けが印象に残る快演。ヴィヴァルディのコンチェルトだからといって、決して「お軽いバロック」にしないところが、このコンビらしい。

次いで再びバーンスタインとの共演盤で、シューマンの<チェロ協奏曲>。オケはウィーン・フィル。発売以来、FM放送でも繰り返し取り上げられてきた音源なので、これは私などにとってはお馴染みの名演である。マイスキーのチェロはここでも、表情豊か。バーンスタインが伴奏指揮をしたシューマンの<チェロ協奏曲>というと、EMIのロストロポーヴィチ盤も思い出されるが、シューマンに関しては、上記ブロッホとは逆に、こちらのマイスキー盤の方が面白く聴ける。ソロの適性の差だろうか。(※私がこれまでに聴いてきた狭い範囲での話だが、チェロ独奏が最も情熱的に迫ってきたのは、ジャクリーヌ・デュ・プレのEMI盤。)

最後に少し残った放送時間の穴埋めは、サン=サーンスの<白鳥>。再びオルフェウス室内管弦楽団との演奏。聴きなれたピアノ伴奏版ではなく、控えめな弦とハープの爪弾きが背景を作る編曲がユニーク。ゆったりしたテンポで、チェロが深々と歌う。内省的で、味わいのある演奏だ。「でも、この曲の最後の部分はやはり、ピアノでこそ生きるんだよなあ」なんて思ってしまったのも事実。

―というところで、今回はこれにて。
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