健保のつぶやき

食事、トイレと他人様に頼る必要はないが、薬に頼る生活がソロソロ始まりました。当面は「親鸞さん」に照準。

医師の立場で糖質制限普及はハードルが高い

2016-08-30 09:52:32 | 糖質制限推薦

並大抵の覚悟や努力では、真の医療を行う事は出来ない。

世間も患者さんも医療サイドも「真の赤ひげ」を夢見るが、現実は生易しい物ではない。

赤ひげなど現代医療では、単なる妄想に近いかも知れない現実は承知の上です。

 昨日の私の拙い愚痴のようなFaceBook投稿に対して、私が尊敬して止まない内科開業医の ○○先生から個人的なメールを頂戴致しました。

 以前は大学病院で非常に評判の高い外科医でしたが、原因療法や予防的な観点から思い立って現在、内科を主体に開業されておられる外科・内科の先生です。

その先生から個人名は出さないで欲しいというご要望があり、お名前は出せませんが、昨日個人的に頂戴したメールをほぼ原文で転載させて頂きます。

真の医療人である○○先生が、近しい場に居て下さる事を日々感謝致しております。

以下は、○○先生からの頂戴したメールの転載です。

いつもFBを拝見して勉強させて頂いています。
私も医療経営がとても苦手です。
50歳を過ぎての自己資金0での落下傘開業で
銀行とリース会社の為に働いているのではないかと錯覚する時があります。
糖質制限を知り(傷の湿潤療法もですが)広めようとする気持ちが開業を後押ししました。
高橋先生にも、糖質制限で経営的に大丈夫か?と心配して頂いた様に
本来なら、A1c13-14%の患者さんをインスリンを使用すると保険点数が高く経営的には安定する所を時間をかけて説明し、スーパー糖質制限指導し、3-4か月で5-6%に正常化するので保険点数が上がらす経営的には失格です(・・・甘いのですが、患者さんにとっては、負担が減るのでまあいいかと思いやっています)。
そのためか、土日は当直三昧です。
一度、京都の講演会で江部先生に私も経営的にはどうすればいいのか質問しましたが、
やはり地道にコツコツやるしかないと返答を頂いた記憶があります。
それでも、最近は糖質制限で来院する人がありがたい事に
少しずつではありますが増えてきています。
本気で糖質制限に取り組んでいる●●●の●●さんや高橋先生と知り合えたのが
うれしい事です。
本日のFBを見て勝手にメールをしてすみませんでした。
高橋先生の活動を拝見し刺激を受けながら、糖質制限の啓発を行っていきます。
今後ともよろしくお願い致します。

以上、転載でした。

○○先生の身命を賭したご努力に比べれば、私などは、毎日ただ遊んでいるに過ぎない。
○○先生には、いつまでも沢山の患者さんを救って頂きたいです。
いつも真の医師の姿を見させて頂いております。いつも有難うございます。

 
 
 

変革的治療を実現するための条件

私は医師3年目の後期研修医の時代に、

とある小さな病院で褥瘡のラップ療法を初めて導入しました。

職員の誰もがその存在を知らない環境の中でかなり挑戦的な試みでしたが、

スタッフ全員の協力あって無事にこの治療を当地へ根付かせる事に成功しました。

かたや医師4年目で働いた大きな病院では同じことを試みても成果を成し遂げられませんでした。

一体何がこの違いを生み出すのか、改めて考え直してみたいと思います。
まず、この件に限らず私が普段から感じている事に「大きな組織ほど変えがたい」というのがあります。

大組織になればなるほど、良きにつけ悪しきにつけ、様々なシステムが複雑に運営されています。

この褥瘡治療に関して言えば、小さな病院の場合はシンプルに主治医の治療方針に基づき治療される形ですが、

大きな病院の場合は、主治医の治療方針とは別に、褥瘡治療の専門家とされる形成外科が診療に介入したり、

そうでなくとも褥瘡対策チームなる認定看護師を中心に組織される集団が治療に関わるようになります。

従って小さな病院でラップ療法を導入しようと考えた場合は、主治医の意識が変わる事が再重要案件となりますが、

大きな病院では主治医の意識が変わるだけでは変革には不十分です。主治医以外に形成外科や褥瘡対策チームの意識も変わってもらう必要があります。

しかし、当ブログ読者の方々ならもうおわかりのように、専門家程最も変革を嫌う人達なのです。

なぜならば変革を起こすことは、専門家の最先端の治療を否定することにつながるからです。

患者の立場であれば、専門家の最先端治療であろうと、ラップ療法であろうと、治る治療であれば何でもいいと思うのでしょうけれど、

専門家にとっては専門家の治療以外で治されることは俄かに受け入れがたい事であるからです。

従って、治療方針の変更をめぐってまず第一の壁が立ちはだかる事になります。


また、うまく治療方針が変更できたとしても、それだけではまだ不十分です。

治療というものは医師一人ではできません。常にメディカルスタッフの協力あっての作業です。

なぜラップ療法がいいのか、看護師さんに理解してもらうとともに、治療効果を実感してもらう経験が必要です。

いくら主治医の治療方針があるからと言って、スタッフの納得がいかない状況の中で無理に推し進めれば必ずひずみを生じます。

それは主治医への不信頼という形かもしれませんし、治療のボイコットという形かもしれませんし、最悪の場合離職という事につながるかもしれません。

すなわち「変革的な治療を実践するためには仲間の理解と協力が不可欠」だという事です。

仲間の協力と理解を得るためには、変革者がそれ相応の行動を起こす必要があります。

私が褥瘡のラップ療法を小さな病院で導入する際には、毎日写真を撮って傷をよく観察し、危ないと思ったらすぐに従来の治療に戻すことをスタッフへ約束しました。

そして院内の各部署に褥瘡のラップ療法について紹介するDVDを無償で提供したり、月1回の委員会でそのDVDを見てもらう機会を提供したり、

さらにラップ療法を行った症例の経過を毎月写真入りで報告する事を義務化し、圧倒的な効果をスタッフに示し続けました。

その甲斐あって私がその病院を離れた後も、褥瘡のラップ療法は無事に受け継がれ変革させることに成功したと私は思っています。

かたや大きな病院であれば関わるスタッフの数も膨大になりますし、

大病院の一部署でそれを行えたとしても、病院全体としてそれを認めるかどうかはまた別の問題になり、

上層部に理解が得られていなければ、せっかくの変革的治療もただの問題行動とみなされてしまいます。たとえどんなに素晴らしい治療効果を上げていたとしてもです。


もう一つの必要条件は、「現場が治療のニーズを感じているかどうか」です。

そもそも既存の治療に問題点があるからこそ、変革的治療の必要性が生まれるわけですが、

現場が治療の問題点に気が付いていなければ、そもそも変革的治療が必要と感じる機会がないわけです。

ここで問題なのは、「専門家の治療が最善」と考える現場の中にいると、それ以上の治療は存在しないと考えてしまう心理です。

つまりニーズが存在するのに、目の前のニーズに気が付かない盲目的な状態となってしまうのです。

客観的にみてどう考えても現在の褥瘡の標準的治療はうまく行っていません。

特に巨大褥瘡は「治らなくても仕方がない」「患者の栄養状態が悪いから仕方がない」と思われる風潮がはびこっています。

しかしひとたび専門家最善の先入観を捨てて、広く世の中を見渡した時にはラップ療法という素晴らしい治療法が実在するのです。

それならばまずは現状が最善という考えを見直すことから始めましょう。

常識的なものの見方を外し、もっとよい治療はないかと考え続ける歩みを止めないことです。

その事にみんなが気付き、患者さんの治療が第一だという原則を思い出す事ができれば、変革的治療を起こす事は可能だと思います。

褥瘡のラップ療法でそれを実現したように、

同じことを糖質制限でも私は成し遂げたいと考えています。


たがしゅう