教育大綱

2017年08月13日 | 日記
教育大綱 平成28年3月

1 大綱の位置付け

 この大綱は,地方教育行政の組織及び運営に関する法律第1条の3の規定に基づく「地方公共団体の教育,学術及び文化の振興に関する総合的な施策の大綱」として位置付けるものです。

 また,新たに策定される茨城県総合計画の目標や政策展開の基本方向(「人が輝くいばらきづくり」)と連動し,かつ,新たに策定されるいばらき教育プランの目標や施策の基本となるものです。

2 計画期間

平成28年度から平成32年度までの5年間とします。

3 基本テーマ

一人一人が輝く 教育立県を目指して

~子どもたちの自主性・自立性を育もう~

4 基本目標

 学校・家庭・地域がそれぞれの役割を十分に果たしながら,社会全体で子どもたちを守り育てる体制を構築します。

 特に生涯にわたる人格形成の基礎を培う乳幼児期において,家庭のしつけの徹底などにより,自主性・自立性に富み,優しさや思いやりを持って,強くたくましく生きられる子どもを育て,その上にたって「確かな学力」「豊かな心」「健やかな体」のバランスのとれた子どもたちの育成を図ります。

 近年,個人の自由を優先する社会の風潮を背景に,自分さえ良ければ良いという,行き過ぎた「個人主義」の考え方がはびこり,子どもたちの社会性や規範意識などの低下が指摘されています。

 また,ライフスタイルや家族構成の変化,人間関係の希薄化などにより,家庭や地域の教育力の低下が指摘される中,子どもたちの基本的な生活習慣の乱れや,過保護・過干渉による子どもたちの自主性・自立性の欠如が見られます。

 このような状況において,少子高齢化や人口減少,社会経済のグローバル化が急速に進展する中,資源小国である我が国が今後とも世界で確固たる地位を占め,将来にわたって大きく飛躍していくためには,個性や能力を発揮し,いきいきと活躍できる人材を社会全体で育てていくことが不可欠です。

 特に,これからの時代を,社会的・職業的に自立し,たくましく生き抜いていくためには,子どもたち一人一人が,基礎となる学力,体力を土台としてしっかり身に付けた上で,想定外の事象や未知の事象に対しても,持てる力を総動員して主体的に解決していこうとする力や,他者に共感できる感性,思いやり,他者との意思の疎通を図るコミュニケーション能力などを培っていくことが必要となります。

5 施策の基本方針

 基本テーマ及び基本目標の実現に向け,次の4つの基本方針を掲げます。

 家庭や地域,大学,企業など子どもたちの育成に携わる機関がそれぞれの主体性を尊重しつつ連携協力し,基本方針に基づく施策を推進することにより,一人一人が輝き,いきいきと活躍できる社会を実現する教育立県を目指します。また,一人一人が将来にわたり活躍するための基礎・土台として,乳幼児期からの教育・保育を通じて,たくましい心を持ち,自ら考え行動できる子どもたちを社会全体で育んでいくため,「子どもたちの自主性・自立性を育もう」というサブテーマを共有し,家庭や地域,大学,企業など「オール茨城」でその実現に向けて取り組んでいきます。

基本方針1 社会全体による子どもたちの自主性・自立性の育成

基本方針2 確かな学力の習得と活用する力の育成

基本方針3 生涯にわたる学習と文化芸術,スポーツ活動の推進

基本方針4 誰もが安心して学べる教育環境づくり

基本方針1 社会全体による子どもたちの自主性・自立性の育成

 本県では,全国に先駆けた県立高校1学年での道徳の授業の導入や,さわやかマナーアップ運動の推進,「いばらき教育の日・教育月間」における県民運動により,子どもたちの規範意識や公共マナーの向上,豊かな心を養うための取組を進めてきました。

 しかしながら,子どもたちの規範意識の低下や問題行動の低年齢化が課題となるなど,更なる対応が求められています。特に,自主性・自立性に富み,優しさや思いやりを持って,強くたくましく生きる力を育てるには,自然体験活動や読書活動などにより,自ら考え積極的に行動し,自分の行動に責任を持つなどの社会を生き抜く力を育成することが重要です。また,生涯にわたる人格形成の基礎を培う乳幼児期における家庭教育等の充実のほか,道徳教育の更なる推進,世代をつなぐ意識の醸成なども重要です。さらに,情報の積極的な発信など開かれた学校づくりや学校を核とした地域コミュニティの再生など,社会全体での推進体制の整備が求められます。

 このため,家庭や地域の教育力の低下が指摘される中,教育の主体となる学校・家庭・地域などが,それぞれの教育力を高め,連携して子どもたちを守り育てることにより,社会全体で子どもたちの自主性・自立性,規範意識などを育み,人間として生きていく上での基礎力を培います。

[施策項目]

○ 社会を生き抜く力の育成

 (体験活動や読書活動の充実,コミュニケーション能力の向上,災害等の危機管理能力の育成)

○ 生活習慣・しつけなど家庭の教育力の向上

○ 就学前教育の充実

 (幼児教育・保育の充実,小学校教育との連携及び円滑な接続,発達障害児・学習障害児への早期対応)

○ 豊かな心を育むための道徳教育の推進

○ 命を大切にする教育,世代をつなぐ教育の推進

○ 開かれた学校づくりの推進

○ 青少年の健全育成,情報モラル・情報リテラシーの向上

○ 地域コミュニティの再生

○ いばらき教育の日・教育月間の推進

基本方針2 確かな学力の習得と活用する力の育成

 本県では,一人一人に応じたきめ細かな指導のための少人数教育の推進や,小学校高学年における理科教科担任制の実施など,児童生徒の基礎学力向上に向けた取組を推進してきました。

 その結果,「全国学力・学習状況調査結果」においては,調査対象の多くの分野で全国の平均正答率を上回るなど,児童生徒の学力の向上が見られます。

 一方,グローバル化の急速な進展による国際競争や国際交流の活発化など教育を取り巻く環境は大きく変化しており,自国や郷土固有の自然・文化・歴史等を正しく理解するための教育や,つくば・東海等,科学技術の集積地である本県の特色を活かした教育などが一層重要となってきています。

 国においては,課題の発見と解決に向けて主体的・協働的に学ぶ学習の在り方や,小学校での英語の教科化,国民投票や選挙権年齢の満18 歳以上への引き下げを踏まえた高等学校における新たな科目の新設など,新学習指導要領の検討が行われています。

 このように変化の激しい時代をたくましく生き抜いていくため,国公私立の学校を問わず,地域を正しく理解し,グローバル社会で活躍できる力や最先端の科学技術を担う力など,これからの日本や世界をリードする人材となるために必要な基礎的・基本的な知識・技能や,自ら課題を発見し解決できる能力など,確かな学力の習得と活用する力の育成を図ります。

[施策項目]

○ 課題解決型等,新たなニーズに対応した教育の推進

 (基礎的・基本的な知識・技能,思考力・判断力・表現力,主体的に取り組む態度などを育む教育,環境教育,消費者教育など)
○ グローバル社会で活躍できる人材の育成を目指した教育の推進(国際教育)

○ 科学技術の集積地である本県の特色を活かした教育の推進(理数教育)

○ 郷土教育の充実

○ キャリア教育,職業教育の充実

○ 情報活用能力を育てる教育の充実

○ 政治的教養教育の推進(主権者教育)

基本方針3 生涯にわたる学習と文化芸術,スポーツ活動の推進

 本県では,いつでもどこでも学べる機会を充実させるとともに,生涯にわたって質の高い学びを続けることができる環境づくりや,心に潤いと感動をもたらす文化芸術活動の推進,スポーツ活動の振興にも取り組んできました。

 特に文化・芸術面では,平成26 年全国高等学校総合文化祭茨城大会の開催を契機に,本県高校生の文化芸術活動が活性化するとともに,児童生徒の体力・運動能力の面では,「全国体力・運動能力,運動習慣等調査結果」において男女とも得点合計が全国トップクラスの高い水準を維持しています。

 近年,県民の学習ニーズ,内容の多様化・高度化に伴う様々な学習機会の提供や,社会構造や生活様式の変化に対応した地域文化の継承の取組などが重要となっています。

 また,国においては,スポーツ基本法の策定やスポーツ庁の設置など,スポーツに関する施策の総合的な推進が図られています。

 このため,生涯にわたり学べ,スポーツに親しめる環境を整備するとともに,文化振興条例に基づき,総合的な文化振興の推進に努めるなど,心豊かな県民生活の実現を図ります。また,体力づくりや食育,がん教育などの健康教育の推進により,生涯にわたりいきいきと活躍できる健やかな体の育成を図るとともに,特に平成31 年の第74 回国民体育大会「いきいき茨城ゆめ国体」や,その翌年の東京オリンピック・パラリンピックを契機とした競技力の向上やスポーツの振興を図ります。

[施策項目]

○ 生涯にわたって学び続けることができる環境づくり

○ 文化芸術活動の活性化による地域づくり,文化芸術に親しむ環境づくり

○ 文化財の保存と活用

○ 地域の文化を理解し継承していく取組の推進

○ 茨城国体,東京オリンピック・パラリンピックを契機とした競技力の向上とスポーツの振興

○ 体力づくり,生涯にわたりスポーツに親しむ環境づくり

○ 食育,がん教育などの健康教育,薬物乱用防止に関する教育の推進

基本方針4 誰もが安心して学べる教育環境づくり

 少子化の進展により,本県における公立小・中・高等学校の児童生徒数も年々減少し,国や県がガイドラインを示して学校規模の適正化や学校の適正配置を進めているものの,学校の小規模化に伴う教育上の諸課題がこれまで以上に顕在化しています。

 一方,特別支援学校や特別支援学級等に在籍する児童生徒数は増加傾向にあり,障害の多様化や重度・重複化に伴い不足教室の解消が必要です。

 また,親世代の不安定な雇用や低い所得水準による子どもの貧困など,経済状況や家庭環境等による教育格差や貧困の連鎖,いじめや暴力行為等の問題が指摘されています。

 さらに,「県人権施策推進基本計画」及び「障害のある人もない人も共に歩み幸せに暮らすための茨城県づくり条例」を踏まえ,誰もが個人の尊厳及び権利を尊重され,幸せに暮らすことのできる社会の実現が求められています。

 こうした中,子どもたちが将来に必要となる力を確実に習得し,一人一人が輝く社会の実現を図るためには,誰もが安心して学べる環境をつくり,子どもたちの学びを支えることが必要です。

 このため,少子化の進展など時代の変化に対応した魅力ある学校づくりの推進を図るとともに,信頼・尊敬される教員の育成や,ICT 教育の推進,問題行動への対応,児童生徒等の安全の確保を進めます。また,自立と社会参加に向けた特別支援教育の推進,家庭の経済状況などに関わらずすべての子どもが等しく学習することのできる機会の確保,人権教育の推進などを図ります。さらに,私立学校における教育条件の維持向上や保護者の負担軽減等のため私学助成の充実に努め,建学の精神に基づく特色ある質の高い私学教育の振興を図ります。

[施策項目]

○ 学校の適正規模・適正配置の推進,魅力ある学校づくりの推進

○ 信頼・尊敬される教員の育成

 (資質能力の向上,優秀な人材の育成・確保,サポート体制の充実)

○ 安全・安心な学校施設づくり,ICT 教育など社会の変化に対応した教育環境づくり

○ いじめ,暴力行為や不登校等への対応,児童生徒等の安全の確保

○ 自立と社会参加に向けた特別支援教育の推進

○ 子どもの貧困対策などすべての子どもたちへの学習機会の確保

○ 多様性を認め合う社会づくり,男女共同参画についての教育の推進

○ 教育を推進するための行政運営(教育行政の責任体制の明確化への対応)

○ 私学教育の振興