録画人間の末路 -

人は記録をしながらじゃないと生きていけない

ある時代のあだ花

2016-10-12 22:27:40 | Weblog
気にしている人も少ないと思いますが、数年前には街のあちこちに立っていた「金・プラチナ買い取ります」の幟が少なくなっていると思いませんか? ウチの近所ではしぶとく経営しているチェーン店が一店残るのみとなり、特に他業種が「ついで」のようにやっていた金買い取りはほぼ全滅しました。理由はもちろん金の枯渇です。バブル時代を最後の頂点に反映し続けた日本経済の遺産とも言うべき貴金属の宝飾品は目を付けられ、わたしのような昔から取り扱ってきた職種以外の業種が多数「買い取り」に参入、大激戦となりました。その中には「押し買い」のようなかなり非合法に近い方法を取っていた業者もあったようですが。景気の悪さによる現金を求めた人が多かった、金・白金が高騰した、という二重の事情がその流れに拍車をかけたのは言うまでもありません。
あれから数年、もはや日本の個人の手に残る貴金属のたぐいはその多くが業者によって海外へ流出しました。かつてはマルボな方々を中心に100g200gと言った、首が痛みそうな重量の金・白金のネックレスやブレスレットがガンガン入ってきたものですが、今や30gでもトップクラスの重量です。ウチも良かったころは6件もの買い取り業者が金・白金を買いに来ていましたが、今や2件しか来ていません。そのうちの1件は、務めていた会社が貴金属の扱いから撤退するというのでウチに来ていた人が独立して起こした貴金属業者です。金額は頑張ってくれるものの、弱小であるという不安はこちらとしては残っております。そのくらい貴金属系は良くありません。

ただ、実はまだ日本の家庭には、最後の金が残っています。それを掘り起こせれば再び日本の金市場も活性化するかも知れません、なにせこれ以上ない高品質の金であることが保証されているものですから。
その名は十万円金貨。かつて昭和天皇在位六十年・現天皇陛下ご即位の時の二回にわたって発行された、バブルの影響が残る時代の産物です。これ、なぜかウチみたいな店に持ってきて現金化する人、多いんです。法律上銀行持っていけば間違いなく十万円分の紙幣と交換できなければならない代物なのですが、そっちにはいかずにウチに持ってくるんですね。銀行でなんだかんだ言われたりして交換してもらえなかったり、いろいろと面倒さを感じさせられたり・・・そうするくらいならお店で現金化しようって人もいるみたいなのです。ただ、最近はいわゆる「プレミアがついた」ことを期待して額面の十万円を超える金額を要求して持ってくる人が大半だったりします。プレミアがつくどころか多くの人が持て余していて、逆に目減りするんですが、そういう額を提示すると、わざとらしい「ワッハッハッハ」という大笑いとともに怒鳴りつけられたり、過剰気味の動きであきれられたりするばかり。正直わたしらとしてもすでに十万円金貨の印象は良くないです。だいたい十万円金貨が十万円以上の値になるとしたら、それはその値段でも欲しがる人がいるからです。日本は某テレビ番組の影響で、モノは時間が経つほど値段が上がるもの、と信じている人が大勢いるのですが、誰でも手に入るようなものが高価格になったりするわけないんですね。
ただし、やろうと思えば十万円金貨に十万円を超える価格を付けることは不可能ではないんです。天皇陛下御即位記念の十万円金貨は純金であることが保証されているうえ、重さが30gもあるのです。そのため、ただのGOLDとして計算すれば市場価格は十万円を超えちゃうのですよ。これは当時より金の価格がずっと上がっているから起きた逆転現象です。なら金貨を貴金属として売れるか、と言うと、売れないわけです。お金、MONEYですから、それを加工するのは法律で禁止されてるんですね。そのため、先にあげた貴金属業者なんかでも十万円金貨は嫌がるわけです。「どこかで誰かが潰してくれてスクラップになれば買えなくもないんですけどねぇ」とは言われましたが、もちろん誰もババ引きたくないですから、結局売り買いされないわけです。違法行為をしているところもある、という噂もありますが・・・。間違いなく貨幣でも、これで支払いのできる店はおそらくないでしょうから。法律上は支払いに使えても、実際は持っていってもなんだかんだ言われて拒否されるだけだと思います。なお、その逆転現象を起こしているのは30gのものだけで、昭和天皇在位六〇年の時の発行の金貨は20gしかないので逆転現象は起こっていません。

品質のよい金、まだまだ意外とある市場在庫、価値はあるけど誰も売れない買わない。そんな扱いの面倒な品になってしまった十万円金貨。最近のああした高額硬貨は発行されてもせいぜい5万円くらいのうえ、全く話題にもならないというくらい存在感の薄いものになってしまったのは、十万円金貨でいろいろ懲りたからでしょう。ただ、そうしたものが平気で発行できるのが好景気の証だ、とも言えますので、後年困る代物が出てくるくらいでないと景気回復、という実感は誰も持てないでしょうね。
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2 コメント

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Unknown (emanon)
2016-10-14 23:33:07
 だからヤフオクなどで沢山でてたのか 外国人観光客向けにすれば何とかなるのかな? 

1gで細密に作られた小さなコインとか手ごろなの見てみたいな ポケコインをリアルゴールドで作ってみるとか マリオのコインとか  

銀の剣とか脇に置いて装飾品にしかならない物を本気で名工に作らせて海外でも展示会開くとかね 外国人ばかりにゲームの武具を作らせておくのは勿体ない と思う 本気で作って素材から価値が有るなら価値は減らないはず 



Unknown (krmmk3)
2016-10-19 00:00:57
>emanonさん
知らない人をターゲットにして、だれか引っかかればいいや、くらいに考えて出品している人は多い印象です。
日本はあまり1gくらいの金は扱いませんね。海外では1gのコインバーみたいなのは普通にありますが。
やるにしても金は高すぎますから、なかなか。武器はないですが、なぜか怪獣やモンスターの純金像というのは絶えず作られて販売されているのが日本の文化です。

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