おっさんじゃないぜ!

気が付くと周りはしょぼいおっさんだらけ・・・オレもそうか?いや、ちゃうぜ!・・・きっと・・・

原作おはなしーその6「作戦」

2016年10月18日 14時00分49秒 | ジバクレイ達の世界
時の堰(ときのせき)第6章「作戦」

「みな、戻られたか。」監物は工場内へ戻ってきた兵達に声を掛け、サヨ達7人も無事なのを確認すると、「さあ、どうして天子を討つかのう。」と言って、みなを円陣に集めた。

「うらら殿の父上。ちと呼びにくいんで何と呼べばよいかの。」

監物はうららの父にそう尋ねた。

「ワケ様のパパは社長だから、綾瀬社長って呼ぶのはどう。」

サヨが監物にそう言うと、「綾瀬社長殿か、まあ、こっちの方が呼びやすいかの。」と言った。

「城代。社長は敬称だから、社長殿はおかしいよ。」

サヨがそうつっこみを入れると皆が大きな笑い声を上げた。

「サヨ姫も千代姫同様賢いのう!」

照基がそういい、監物の肩を叩いてサヨの頭を撫でた。

「ワケ様のパパは、綾瀬社長って呼ぶのがいいと思うの。」

サヨが言うと「そうじゃな。うらら殿の父上は、綾瀬社長と呼ぶぞ。」照基がサヨの大きな瞳を見つめ、強面を微笑みながら言った。

「んじゃ、うらら殿の父上は、綾瀬社長じゃ。」

「パパ。私は城代を父上、パパをパパと呼ぶね。」

うららがそういうと「千代姫には二人の父上ですぞ。城代には二人の千代姫ですな。」と家重がいい、場を沸かせた。

「いやはや。」と言いながら照れる監物はサヨをヒョイと抱き上げ、肩に乗せた。

「ワシはサヨ殿と仲ようするでな。綾瀬社長は千代と今は仲ようなされ。」

監物はそういうと、うららの顔を見て微笑んだ。

「さて、綾瀬社長。天子の事はよくご存知か。」

監物は円陣の真ん中に立ち、サヨを肩に乗せたまま、綾瀬社長に尋ねた。

綾瀬社長は「少しお待ちください。」と言い、奥へ駆けていき、息を切らしながら直ぐにタブレットを持って戻ってきた。

「ボクは天子の呪縛によって、この工場から出られなかったんですが、この工場内には何かと設備があるので外を見られるドローンを10台あまり作って外へ飛ばし、いろいろ調べて地図を作ってみました。」

「ほう。さすがじゃな。綾瀬社長はなんでも作るんじゃな。」

監物はそういうと「で、ドローンでなんじゃ。」と尋ね、サヨに「空飛ぶトンボみたいな機械の事だよ。」とつっこまれた。

笑い声が湧き、兵達から「サヨ姫は、ほんに賢いのお。」と聞こえた。

サヨは流石に恥ずかしくなり、顔を赤らめていた。

場の雰囲気は穏やかで、みな楽しそうだった。

綾瀬社長がタブレットを手前に持ち皆に見えるようにしてから話し始めた。

「この世界はそう広い世界ではなく、町、山、沼地、草原、雑木林、工場地帯が連なって大きなサークルになった構造で丁度盆地のように中心に向かって下っているようです。」

綾瀬社長はそういうと多くの写真の中から一枚を大きく表示させた。

「これを見てください。中心には大きな塔があって、まるでブリューゲルの絵にあるバベルの塔のような景色ではありませんか。」

その写真はまるで絵画のように美しく、幾何学的でもアナログ的でもあり、神秘的でもある。

「塔はこの世界を真ん中に集め、上へ繋いでいるかのようにも見えます。天子はおそらくこの塔に居ると考えるのが妥当です。」

「おおー。」と兵達から歓声が上がり、皆、吸いついたかのようにタブレットの写真を見つめた。

「美しいのう。」

監物がそういうと「ほんに。」「本当じゃ。」「この世はこんなにも美しいのでしょうか。」と照基、家重、士郎が口々に呟いた。

「この真ん中の塔は何で途中で崩れておるんじゃ。」

監物は綾瀬社長に尋ねる。

突然、中畑君が呟いた。

「まるで旧約聖書の創世記11章だ。バベルの姿か。まるで我々は散らされ乱された民か。美しいまでに恐ろしい。これが世界の姿なのか。」

「そうね。この世界に呪縛され誰とも接触できないジバクレイは旧約聖書のバベルの民ね。怖いまでに美しいね。」

うららもそういうと、監物に「南蛮の書記にこれと似た風景を記したものがあって、この風景がまさにこれなのです。」と言った。

「民が神に近づこうと天高く塔を築いたのですが、神の怒りをかって、塔は崩され、民は散らされ言葉を交わせないようにされたという話しです。」と続けた。

「神によって崩された塔か。」

監物はそう呟くと「やはり天子は神か。」と言った。

一同にため息まじりの「神が相手か。」と呟く声が聞こえ、沈んだくらい雰囲気があたりを包み込んだ。

「天子が神様。そんな事ないでしょ!神様だったら呪縛なんてしないよ!神様は苦しんでる人を助けるんじゃん。」

サヨが暗く落ち込んでる一同に向けて叫んだ。

「私は天子と戦ったけど、そんな崇高(すうこう)なものじゃなかったよ。」

うららもそう言い、監物が「呪縛して民を苦しめるなんぞは神は神でも禍神(まがかみ)のやるこっちゃ!ヤマタノオロチ同様じゃ。ワシが討ち果たしてくれようぞ。」というと、淀んでいた雰囲気が一転して「天子は禍神じゃ!」と一同から口々に呟く声が聞こえ、禍神は討ち果たせとかけ声が起こると一同は再び活気に満ちた。

「城代!このまま塔へ行こうよ!」

サヨは監物にそう耳打ちすると、監物はサヨを肩にのせたまま立ち上がり、「一同、これより塔へ向い、天子を討つ!ご一同、かちどきをあげよ!」と大きな声で言った。

空虚な工場内を一同のかちどきが響いた。

一同が天子討伐に沸き立つ中、監物は照基、家重、士郎にうらら、中畑君に綾瀬社長、サヨとレンを集め話し始めた。

「綾瀬社長。塔にはどうやって行けるのかの。」

「ドローンの空撮によると、このまま工場地帯も塔に隣接しているので工場の中を日の光を背に真っすぐ進むと塔にぶつかります。」

綾瀬社長はうららの隣に腰を下ろしてそう言う。

「ただし、この工場内の塔へ近い区域に天子がいた筈です。」

「この工場内に天子が。」

監物はそういうと、少し考え込んだ。

暫くして、「では、ご一同、まず、工場内の天子をみつけて討ち果たそう。そのためにはまずは天子を発見して、ワシと千代、照基殿に家重殿の四人で天子を囲んで討つとしよう。士郎はサヨ殿達6名の警護を任す。」といい、鐘を叩いて連絡をとるのは天子に知られてしまうので何か方法はないかと綾瀬社長に問う。

綾瀬社長は監物の前にイヤホンのような小さい機器を取り出し見せた。

「これはインカムと言って遠く離れていても付けている全員と話しができます。」

「工場内をいくつかのエリアに分けて、5人づつの調査部隊を編制して探索させて、天子を見つけたら場所を知らせるという作戦ではどうでしょうか。兵だけでも100人近くおられるので5人ずつ20の部隊を編成すればかなりの広範囲を探索できます。戦闘部隊は報告を受けてその場に向かうと言う事で、探索範囲が進めば戦闘部隊も進むというイメージではいかがかと。」

監物、照基、家重がインカムを受け取ると、うららに習ってインカムを耳に架けて、イヤホンを耳に入れてマイクを頬に向けた。

「父上、照基殿、家重殿」

三人の耳元でうららのささやくような声が聞こえた。

「ほう、文明の利器じゃな。さっすが綾瀬社長じゃ。すごいの!」

三人はそれぞれささやくように「すごいの!さすがじゃ!綾瀬社長は天才じゃの!」と言い合った。囁くように。

インカムは全員に配られ、20人の部隊頭に使い方をうららがレクチャーした。20人の部隊頭は部隊の4人に教え、工場内を横に広く日の光を背に塔へ向かった。

「このインカムとやら、凄いの。」

囁く兵達の声も皆で共有されている。

「綾瀬社長は天才じゃな。これがあれば戦に勝てるな。」

「おお。みなみながたの声が聞こえる。」

「おもしろいぞ。」

一同のささやきにサヨはちょっと面白くなって、くすくす声を殺して笑ってしまった。

「おお、姫が笑っておるぞ。」

「本当だ。」

「姫、面白いですか。」

一同のささやきが増した頃、監物のしわがれた声が皆に共有された。

「おまいら、真面目に天子を探せ。なにやっとんのじゃ。」

「申し訳ございませぬ。」

照基がささやく。

「何か見つけたか。」

「い番隊、何もおりませぬ。」

「ろ番隊、こちらも。」

「は番隊、なにもなし。」

・・・各隊の報告が囁かれ、やがて、

「ち番隊、何か光が見えます。」と報告がきた。

部隊は一旦止まり、「全部隊、身を隠せ。」と監物が言うと、ち番隊方面に監物を先頭にうらら、照基、家重が辺りを伺いながら進んで行く。

「ち番隊、今、向かっておる。天子か。」

監物がそう囁くと「天子のようです。」と返答があった。

ち番隊に近づくと、明るい光が見えた。

「あっ。私が戦った天子だ。」

うららの声が共有された。

遠目で見るその姿は神々しくも邪悪にも見えた。

「照基殿と家重殿は後ろに回り込め。」

監物はそう囁くと、二人は「あい。わかった。」と囁いて、天子の後ろに回って行った。

「回り込んだか。」

「おう、いつでも良いぞ。」

準備ができたようだ。

サヨは士郎にち番隊の場所へ連れてってと囁き、サヨ達もち番隊へ向かっていた。

監物とうららは天子の前に立ちはだかった。

天子は監物とうららを見ると動揺もせず、手に持った三つ又の槍をうららに向けて言った。

「私の罪人。何故ここにいる。罪人は永遠の罰を受けている筈。」

天子は監物を差し、「罪人の因果の罪人よ。因果の罪人も永遠の罰を受けている筈。因果の罪人はここに現れてはならぬ。」と言って三つ又の槍をかざし、襲いかかって来た。

「いざ。」監物がそう呟くと照基と家重が天子の後方から現れ、天子に斬りつけた。

「やったぞ。」照基がそういうと、斬りつけた天子の背割れて中から鮮血と共に大きな蜘蛛に似た化け物が現れた。

照基と家重は刀を構えたまま、唖然としている。

「なんじゃ!この化け物は!」

蜘蛛に似た化け物は糸を吐き、照基と家重に襲いかかって来る。

「罪人が私に歯向かうとは愚かな事だ。」

監物はすかさず、天子に向かって斬りつけるが、天子の動きは速く、刀は三つ又の槍でことごとくかわされてしまう。

うららは低く構え高く飛んだ。天子はうららを狙って三つ又の槍を繰り出す。素早いうららの動きに天子はついてきている。同時に天子は監物の剣技にさえもついてきている。

照基と家重は蜘蛛の化け物と交戦中だが、とても善戦しているとは言いがたい。蜘蛛の化け物はシールドのように糸を張り、二人の刀を防御しながら槍のような足を素早く繰り出して攻撃して来る。

サヨ達が現場に到着すると天子と蜘蛛の化け物と戦う4人の姿がそこにあった。四人は天子と戦っているが天子は恐ろしいほど強い。

レンは天子の姿を見ると槍を取って構え、「サヨ達は来るな。」そう囁くと疾風のように駆け出した。

「レン!」サヨはそう名を呼んだが、レンは振り返らず、天子の元へ向かって行った。

天子は駈けて来るレンの姿を見つけると、驚愕の表情を浮かべあからさまに動揺している。

「あなたが何故この外道にいる!」

レンの槍が天子に向かって投げられ、天子はそれをかわしたが、ひるんだ一瞬を監物は逃さなかった。
監物の太刀が天子を両断すると天子の断末魔の叫びが工場内に響いた。

「貞時!」

天子はそう最後にレンに視線を送り一言呟くと蒸発するように粉々と散った。
同時に蜘蛛の化け物も蒸発したかのように粉々と散った。

天子の後には歯車のような何かが落ちている。

監物はそれを拾うとレンに訪ねた。

「天子がレン殿を見て”貞時”と言って驚いているようだったが何の事じゃ。」

レンは少し考え、話せば長くなりますがと前置きして皆が集まって来た頃合いをみて、話し始めた。

「サヨが首無し王の宮殿でジバクレイを見つけて一人で追って行ったのに気がついて、オレもサヨを追ったんだけど、サヨが隠し扉を入った後にオレも部屋にそっと入ったら、サヨが鎧に殴られ捕まってしまったんです。」

「どうやら隠し扉の両脇に鎧がいたようで、サヨは気がつかずそのままジバクレイを追ったら後ろから殴られ気絶して捕まっちゃったようでした。」

「オレはそのまま奥に連れて行かれたのを追って行ったら例の首切り部屋に出て、サヨが斬首されそうになってて、でもオレ一人だし相手は少なくとも三人はいたし、でもサヨを助けなきゃって思ってちょっとビビりながら、どう戦うか考えていたんです。」

「そうしたら暗がりから大人の女の人でサヨにそっくりな人と若い男の人が現れて、”貞時様、レンと共にサヨを救ってください”ってオレの方を見たあと、男の人を見て言ったんです。」

「男の人は”うむ、レン、共に行くぞ”ってオレを見て言うと走り出して”レン、槍を持て!”と言ったんで壁にかけてあった槍を手に取って、男の人の後を追ったら、男の人とオレが重なって、そしたらグングンと力が湧いて来て、槍を構えてそのまま首無し王の鎌をブチ割っちゃったんです。」

「後は槍なんか持った事もなかったのに当たり前のように振り回す事が出来て、自信と勇気と技が急に湧いて来たといった感じでしょうか、今も苦戦している監物殿、うららちゃんを見て”オレが助けるんだ!”と感じて思わず飛び出しちゃったんです。」

レンを囲ってみな黙って聞いている。

「そうだよね。レン、あの時から急に強くなったよね。助けてくれた姿も妙にかっこ良かったし。」

サヨがそういうと監物が「レン殿が見たその姫は千代姫じゃな。男の人は千代姫の旦那の三田貞時殿じゃな。」と言った。

「ワシも詳しくは知らぬが千代は上杉の重臣で後の徳川の旗本の青梅の三田家へ嫁いだそうじゃ。旦那は貞時殿という槍の名手で千代より一つ年下だったそうじゃ。」

監物はハッとしてレンを伺うと大きな声で、「すると何か。うらら殿は千代の転生で、レン殿は千代の末裔でかつ千代の旦那の貞時殿の転生か。」と言った。

レンは動揺して「オレが千代姫の夫の転生なんですか。」と監物に聞いた。

監物は手を叩いて”がはは”と声を上げて笑い、「婿殿、初めてお会いする千代の父の監物でござる。千代を大事にしていただき、ただ、ただ、感謝いたす。レン殿が婿殿の転生なら、サヨ殿とうらら殿と三人仲ようされているのも良く解る。サヨ殿は千代にそっくりじゃて、うらら殿は元妻なのじゃからな。」

照基も家重も士郎もただ驚いたが、レンが千代の夫の転生と知り、手を叩き喜んで口々に言った。

「千代姫の婿殿も我らとともにおったか!お二人は転生しても夫婦かのう。」

「レン殿はうらら殿をサヨ殿を皆を救うじゃて愛がなければ救えんじゃろ。」

レンがふとうららを見ると、いつもは冷静沈着なうららが顔を赤らめて視線をこちらに向けない。

「ほら、千代、貞時殿と並べ。夫婦なんじゃから。」

監物はそういうとうららを連れて来てレンと並ばせた。

「おひな様のようだね。」憧れの目を潤ませて白井さんが言うと吉良さんもキヨミもサヨも憧憬の的を見るように二人を見つめている。

「まさに戦国の時を超えた青梅のロマンス。」てっきり興味無しなのかと思ってた中畑君が言う。

「ボクもこんな恋がしたい。」中畑君が呟くと、「アタシも。」と皆が呟いた。

「で、婿殿、なんで天子が婿殿を恐れるんじゃ。」

そう監物に言われて、レンは悩んだが、心当たりはなかった。恐らく天子が恐れるのはオレじゃなくって貞時なんじゃないかと。今はオレと貞時が一緒に重なっているから天子はオレを恐れるんだろう。でも天子は貞時の何に恐れているんだろうか。

レンは考えてみたがどうしてなのか解らなかった。

「城代。全く以て思い当たる節はありません。」

レンがそう答えると、「婿殿わかった。でも天子が恐れるとは、心強い。また、千代に加え婿殿にお会いできるとはこれほど嬉しい事は無い。」と監物が満面の笑みを浮かべて言った。
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