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「都市鉱山」が燃える リサイクル阻む脱法業者

2017年01月30日 | 社会・経済

空き地に積み上げられたスクラップが次々と火災を起こす怪現象が日本各地で起きている。燃えているのは金や銀、銅を多量に含む「都市鉱山」だ。本来ならリサイクルされる資源はなぜ放置されているのか。小池百合子都知事は「都市鉱山で五輪メダルをつくる」というが、それどころではない。資源リサイクルの抜け穴をのぞいた。

■スクラップ船火災、5年で38件

 昨年12月25日午前3時ごろ、千葉県市川市。江戸川沿いにある廃品回収業者「ナンセイ」(東京・江戸川)のスクラップ置き場から火柱が勢いよく上がった。空は煙で覆われ、鼻をつくような異臭がする。「有害物質が含まれているのでは」。川沿いの土手で犬を散歩させていた男性(70)は不安そうに煙を見上げた。

 煙は風に乗って住宅地にも届いた。現場から北約1キロに自宅がある会社員の藤井康成(49)は「家を出ると異臭がしたから、外に干していた洗濯物を取り込んだ」と戸惑っていた。

金属スクラップはほぼ丸1日以上燃え続けた。県警市川署によると、業務用エアコンや配電盤、鉄くず、油など約1700トンが高さ5.5メートルまで積み上げられ、国内業者への販売や輸出のために一時的に保管されていた。火災原因は不明だが県警は金属くずから発火したとみて調べている。

 こうした「スクラップ火災」が近年相次いでいることはあまり知られていない。2016年には大阪市此花区のユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)近辺、千葉県船橋市の廃材置き場、川崎市の市営埠頭で起きた。消防庁の調べでは、スクラップなどの屋外集積所で起きた火災は15年に204件にのぼる。陸地だけではない。海上保安庁によると、スクラップを積んだ船舶の火災は11~15年に計38隻で発生している。

 「船の貨物倉から煙が出ている」。15年11月12日午前2時すぎ、埠頭警備員から川崎市消防局に通報があった。川崎海上保安署の専門官、今野哲成が現場に駆けつけると、埠頭に係留された貨物船につまれた金属くずから、3メートル近い火柱と黒煙があがっている。陸は市消防局の消防車両22台、海は海保の船4隻が放水し続けたが、途中から油圧ショベルでスクラップを除去する作業を加えた。水がたまり、船が沈んでしまうからだ。150人近くが出動、1日半たった13日午後にようやく鎮火した。

   

積み荷は金属スクラップ600トン。船はカンボジア籍で中国へ輸出するために係留中だった。今野は「黒焦げになっているので原因は特定できなかった。乾電池など可燃物が混入していたのではと推測するしかない」と話す。

■中古品か、スクラップか

 01年に整備された家電リサイクル法は、一般家庭などから廃棄された家電製品を、認定業者を介してメーカーに戻す仕組みを整えた。だが、リサイクル料金を廃棄時に支払うため、無料回収業者が介在する余地が生まれる。メーカーに回収が義務付けられている冷蔵庫、エアコン、テレビ、洗濯機4品目の回収率は52%。任意回収の携帯やパソコンなどの小型家電は1割にすぎない。不要家電は家庭から自治体に引き渡される過程で業者に流れ、金属スクラップとして高値で取引されるようになった。こうしたスクラップの一時保管場所が、相次ぐ火災の温床になっているのだ。

行政や警察当局は廃棄物処理法(廃棄物の処理及び清掃に関する法律=廃掃法)を根拠に取り締まりに動き出したが、問題は、廃品が本当に中古品で流通するのか、スクラップとして闇に消えるのかの見極めが難しいことだ。

今年1月10日、徳島県警は、チラシを配り無許可で廃棄物を回収・解体したとして鉄・非鉄輸出入業「日昇商事」(徳島県石井町)の中国人経営者ら5人を逮捕した。この逮捕劇は、違法流通の見極めのむずかしさを浮き彫りにしている。

 徳島県警によると日昇商事のビジネスはこうだ。チラシを家々にまき、指定回収日に一軒一軒回り玄関先に置かれた家電を回収する。「ヤード」と呼ばれる作業施設で解体して保管。中国や東南アジアなどに輸出していたとされる。逮捕された経営者らの羽振りはよく、外車を乗り回している姿も目撃されている。

 県警石井署が捜査を始めたのは昨年4月。「中国人が廃棄物の不法処理をしている」と通報を受け、8カ月間張り込みを続けた末の逮捕だった。回収品の不法処理は国道192号線沿いのヤードで堂々と行われていた。内偵の間、家電解体は毎日のように繰り返されたが、それだけでは逮捕できなかった。

「見た目がゴミでも、廃棄物と法的に立証するのが難しい。これは販売目的の有価物であって廃棄物ではない、と反論されれば、廃掃法違反には問えない」。捜査班を指揮する組織犯罪対策課次長の真木野定彦は一計を案じた。

■自由貿易とのかねあい

 家電を日昇商事に引き渡した家庭を訪ねて「ゴミとして排出した」という証言をとった。さらに、捜査員が解体の様子を隠し撮りし、自治体職員に見せた。「ここまでつぶれたものは廃棄物に違いない」

 徳島県警の8カ月の内偵は結実したが、全国無数にある違法流通のひとつひとつの取り締まりにこれだけの手間をかけるのは現実的ではない。「廃掃法はザル法だ」。ある捜査員は吐き捨てるように言う。

 「現在の法律には抜け穴がある。中古品と偽装されると手も足もでない。せめて海外への流通に網をかけられないか」。環境省の廃棄物・リサイクル対策部課長補佐、萱嶋富彦は水際でのスクラップ流通阻止が最後の手段だとみている。

   

萱嶋が旗を振って、環境省と経済産業省の合同会議を立ち上げたのは昨年10月。2月から働きかけを続け、8カ月かけてようやく実現した。「金属スクラップの貿易を規制すれば、世界貿易機関(WTO)に訴えられかねない」という経済産業省の抵抗があったためだ。議題の柱は有害廃棄物の越境移動を規制するバーゼル法と、国内の廃棄物処理を規制する廃棄物処理法の改正だ。

 だが、検討会委員の意見は真っ二つに割れている。自由貿易の尊重か環境規制の強化か――。10年秋の尖閣諸島問題に端を発した中国のレアアース輸出停止を念頭に「他国の資源ナショナリズムに悩まされてきた日本が輸出を規制するのか」という指摘も委員から飛んだ。

 年末にまとまった改正案では、金属スクラップ置き場の登録を業者に義務付けするにとどまった。ただ、対象となるのは、廃棄物と認められたスクラップだけで、有価で販売される場合、どこまで網をかけられるか不明瞭だ。検討会のある委員は「両省の妥協の産物」と酷評する。

■ハノイ近郊のスクラップ御殿

 「アジアは先進国のゴミ箱のようだ」。日本貿易振興機構(JETRO)上席主任調査研究員の小島道一がベトナム・ハノイ近郊の村を最初に訪れたのは04年。以来、毎年のように現地の電子ゴミを追跡調査した。

2~3階建てのコンクリートむき出しの建物や木造家屋が並ぶ中、古紙や金属などのスクラップが村ごとに種類別に山積みになっていた。「農業をやめて本業にしている人もいる。途上国では安い人件費でリサイクルできるから世界中からスクラップが集まっている」(小島)

 スクラップの山に目をこらしてみると、日本で使用されたとみられる家庭用洗濯機のプラスチックが混じっていた。最初に訪問した04年にはなかった立派な家が立ち並ぶようになり、スクラップのおかげで村が裕福になっているのは明らかだった。一方で、銅線を野焼きして銅を回収している女性も目撃した。「行政監督が行き届かず、大気汚染や水質汚濁の原因になる回収方法が横行している」と小島は警鐘を鳴らす。

 こうした金属スクラップは日本から輸出されたものの輸出先政府に有害性の高い違法輸出品目と判断されてシップバック(積み戻し)されるケースは後を絶たない。12~16年の5年間で計42件にのぼった。品目は液晶モニターや使用済みバッテリー、ノートパソコンなどで、輸出先は香港やタイ、マレーシアなどだった。

 小島は「雑品スクラップの中に何が混じっているのか把握できず輸出しているのが問題だ」と指摘する。廃家電を集めればトン単位で海外で高く売れる。バッテリーや廃基板などは有害性が高いとして法律で輸出申告が義務化されているが、雑品の中に混じっていれば税関で見つからず輸出することができるのが実態だ。例え税関で見つかっても罰則はないため、別の港から輸出手続きをすればいい。「いわば違法輸出の再チャレンジが何度でも許されている」(小島)

■五輪金メダル構想

 東京五輪・パラリンピック組織委員会は廃家電から出た貴金属でメダルをつくる構想を決定した。だが、足元ではザルからこぼれる水のように、「都市鉱山」は海外に流出している。

 日本鉄リサイクル工業会(東京・中央)は昨年11月、会員の正規業者約460社にアンケートを実施した。法改正が実現すれば、脱法業者は撲滅されるか――。こんな趣旨の質問に、52%の業者がこう答えたという。

 「法改正後も基準を守ることなく営業を続けるだろう」

=1/30 日経web

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