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異素材組み合わせ軽く強く マルチマテリアルに脚光~海と空で覇権争う

2017年03月21日 | 社会・経済

自動車や航空機などで、異なる素材を組み合わせて造る「マルチマテリアル」が進展し、素材各社の競争相手が同業から異業種に広がっている。鉄やアルミ、炭素繊維などの新素材が入り交じり、より軽く強い素材の覇を争う。ゲームのルールが変わる節目に各社はどう挑むのか。

 世界のどこにもない工場が岡山市にある。作業員がシート状に織られた炭素繊維を型に入れ、一枚一枚手作業で丁寧に積み重ねていく。最大で500~600枚重ねて固めると、商船に使う推進用プロペラになる。開発したのは舶用プロペラ世界最大手ナカシマプロペラ(岡山市)だ。

   

    CFRP製プロペラは水中で竹のようにしなるため振動や騒音が少ない

■銅合金が一般的

プロペラは一般的にニッケルなどを添加した銅合金を鋳造して造る。炭素繊維に樹脂を染み込ませて固めた炭素繊維強化プラスチック(CFRP)製は銅合金に比べ4~5割軽く、強度は同等。しなりも強く、水中での振動を最大で半減できる。航空機の翼で採用が進む次世代の軽量素材が海の世界に攻めてきた。

 開発には布団圧縮機の原理を用いた。型に入れた炭素繊維を覆う袋から空気を吸引、真空状態にしたうえで樹脂を繊維に流し込み、隙間なく確実に樹脂を浸透させる。流し込む経路やタイミング、温度制御に技術の粋を込めた。

 2014年の初採用以降、コンテナ貨物船など向けに10機を受注。受注残は2年分ある。価格は銅合金製の5倍以上だが、燃費性能を5~6%改善できるとあって海運会社から注目を集める。

 今年は従来より5割以上大きい直径4.2メートルのサイズを造船会社に引き渡す。「CFRPで常に世界の先を行く」(コンポジット事業部の山磨敏夫部長)

 省エネは海でも陸でも共通の課題。従来の素材を軽くて強い新素材に替え、複数の素材を組み合わせて使うマルチマテリアルの取り組みには先行事例がある。航空機だ。

 米ボーイングの中型機「787」で胴体や主翼など機体重量の約50%にCFRPが採用され、炭素繊維の存在感は高まった。ただ素材間競争で優位に立った訳ではない。次期大型機「777X」の胴体はアルミ合金。CFRPの採用率は2割ほどに下がるとみられる。

   

CFRPが航空機に本格採用された1990年代以降の勢いに陰りが出てきた。「繊維の差異化とコストダウンの両面から開発しなければ」。帝人の鈴木純社長は話す。

 鉄より軽く硬い炭素繊維にも大きな弱点がある。金属のように溶かして再生することができず、リサイクル性が悪い。そこで帝人は航空機の骨格など部品の成型過程で出る複合材の端切れを再利用する手法を確立した。要求性能が低い「2次構造材」向けだが部材コストは約半分になる。

 東レは高熱下での耐久性が必要なエンジン部品に生き残りの道を探る。高性能なCFRPを開発。これまで採用がないファンブレードなどを開拓する。仏エンジンメーカーのサフランと10年間の長期契約を結び部品メーカーと連携も深める。

 最高熱部でセ氏1500度を超す航空機エンジンは従来ニッケル合金が主力だった。航空機を軽量にする一環で、より軽いチタン材の採用が広がっている。CFRPはその激戦区に攻め入る。

だがその戦いには新興のライバルも控える。航空機エンジン3強の一角、英ロールス・ロイスが腰を上げた。関心を抱くのは炭化ケイ素(SiC)繊維のセラミック基複合材「CMC」。米カリフォルニア州に研究開発センターを新設、実用化に動き出した。

 SiC繊維はケイ素の有機化合物を繊維状に焼き固めた製品だ。重さはニッケル合金の3分の1で強度は2倍。耐熱温度はセ氏1900度とニッケルより2割も高い。

 製造できるのは日本カーボン宇部興産のみ。航空機エンジン世界最大手、米ゼネラル・エレクトリック(GE)は日本カーボンと組み、17年半ばをめどに年産10トンの量産に入る。

 GEは開発中の次期大型エンジン「GE9X」の高圧タービン部品などにCMCを採用する。燃費を2%改善できる。GE子会社GEアビエーションのサンジェイ・コレア副社長は「航空機エンジンから非鉄金属が尽きてしまうのも時間の問題」と言い切る。

■アルミも反攻へ

 マルチマテリアルは伝統素材にとって牙城が崩される構図でもある。航空機で炭素繊維に押されるアルミも守りだけではない。

 栃木県小山市にあるUACJのアルミ押し出し材工場。米アルミ大手アーコニック(米アルコアの下流部門が分離)の独壇場だった「7150」と呼ぶ合金の開発に成功し、サンプルを製造している。翼や胴体の構造部材として18年までにボーイングなどからの認定取得を目指す。20年に航空機向けの生産量を現在の3倍に増やす計画だ。

 だが、王者アーコニックは15年に15億ドルの巨費を投じてチタン製品大手の米RTIインターナショナル・メタルズを買収。脱アルミの流れを見越し、航空宇宙産業向け総合金属素材サプライヤーへの脱皮を図る。

 様々なプレーヤーが入り乱れる群雄割拠時代。従来の常識を超えたものづくりのダイナミズムは産業を強くする。一方で機を逃した企業は淘汰の波に飲み込まれる。マルチマテリアルの版図はどう塗り替わるのか。たゆまぬ技術革新を続けられるかが勝敗を分ける。

  ▼マルチマテリアル 鋼材やアルミニウム、樹脂、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)など性質が異なる複数の素材を積極的に組み合わせて使うこと。単一の素材を使う場合より軽量化や高強度化を実現しやすい。
 自動車や航空機などで広がるほか、スマートフォンなどでも使われている。部品製造の段階で異素材複合部品とすることもある。性質が異なる素材同士を強く接合するのに新しい技術が必要になることが多く、製品メーカーや素材メーカーが開発を競っている。

=3/16 日経web [日経産業新聞〕

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