松明 ~光明を指し示して~

暗闇を照らし赤々と燃える。が、自身が燃え上がっては長くはもたない。火を消すことなく新しい松明へと引き継がれねばならない。

立松和平さんと「6年国語『海の命』の授業」

2010-05-22 20:29:34 | Weblog


 追求方式の授業の6年生国語「海の命」を何回か参観したことがある。どの授業も教師の教材解釈が深く、子どもたちも言葉や文に拘り、集中して学んでいた。
ところで立松和平さんが亡くなられてどれくらい経つのだろうか。栃木弁のなまりで、ぽつりぽつりと話す。何て純粋で朴訥で正直な人だろうといつも思っていた。
 誰が言ったのか知らないが、立松和平さんを「真面目で途方に暮れていた人」と評していたが、ほんとうに私も同じように感じていた。
 さて、こんな立松和平さんが書いた6年国語(光村図書)「海の命」の授業を何回か参観したことがある。三重県の森川先生は、次のように教材を解釈していた。

本当の一人前の漁師になるためにふさわしい獲物である大きなクエを求めて、太一がこの瀬にもぐるようになってから一年が過ぎた。そして突然、自分で納得できる大物のクエに出合えた。太一は、そのクエを挑発するが、クエは全く反応もせず、ただ太一を見ているだけだった。その姿を、太一は殺されるのを望んでいるかのようにさえ思った。
 無抵抗で殺されたがっている魚を殺すことで、本当の一人前の漁師になることを証明しなければならないことは、太一にとっては不本意以外の何でもない。太一は情けなくて泣きそうになる。しかし、情けないことであるけれども、本当の一人前の漁師になりたい太一は、それを実行しなければならないと思っている。
 この追い詰められた状況のなかで、太一は、そのクエの姿から、本当の一人前の漁師になるという自分の欲望は、あまりにも利己的なものであったことに気づかされる。そのことを教えてくれ、そして殺すという行為を躊躇させてくれたクエを、父そのものであると思うことで、太一は「殺さなければならない」という束縛から解放される。

授業の展開と主な発問では、①「ふっとほほえみ」~なぜ殺すのをやめたのか。②「泣きそうになりながら思う」~なぜ泣きそうになるのか。③殺さなかった原因は何か。④クエを父と思ったのはどうしてか等によって、太一の心の変化を捉えようとした。子どもたちは自分の考えを持ち、それを出し合い、辞書を引き、文章を分け、言葉や文に着目し、根拠を話し合うことにより真実を読み取っていった。

光明小の酒井先生、平野先生の「海の命」の授業もすごいものであった。今でも子どもたちの学びや教師の姿が鮮やかに目に浮かんでくる。
こんな授業を思い出す度に、私は恐れ多いことではあるが、これらの授業を立松和平さんにも見てほしかったと思うである。
立松和平さんは、いったいどんな感想を持ってくれるであろうか。・・・今となってはもう遅いのだが・・・・・。


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海の命 (totoro)
2010-05-24 13:58:39
私たちの解釈が合っているのか違うのか、それは定かではありません。

私と平野先生と二人で、何度も何度も言葉を手がかりに議論し、「村一番の漁師と、一人前の漁師はどうちがうのか」とか、「こう思うことによって~すむ。」とはどんなことなのだろうか、「そもそも、どこから大魚を殺せない人間になっていたのだろうか」などと、どこを問題として子どもたちにぶつけたらよいだろう、と、毎夜遅くまで話し合いました。

そして、次の日の授業が終わると、それが子どもにどう受け入れられ、子どもちがどこが理解しがたいのかを話し合い、また次の時間の授業の組み立てを考え合いました。

教材をさらっと読んで分かったつもりになっていた「主題である=海の命=自然との共生」が、毎日毎日ほんの少しずつではありますが、薄皮をはいでいくように、さらに鮮明になり、時に姿を変えていく様は、わくわくさせられました。

私たちがわくわくしながら取り組む授業、子どもたちもわくわくして取り組んでくれたと思います。その議論は延々と続きましたが、それは苦しい時間でなく、なんだか幸せな空気に包まれた至福の時間で合ったように思います。

私と、平野先生と、それから子どもたちとで、行きつ戻りつして考えたこの物語の解釈が、はたして立松和平さんの狙ったところかどうかは、わかりません。
でも、そうして作品の言わんとすることを楽しく掘り下げる作業は、評価していただけるのではないかと思います。

こんな文を見つけました。

http://siva.cc.hirosaki-u.ac.jp/kokugo/yamamoto%20okiba/ronbun%20uminoinochi.pdf

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