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安倍首相の改憲私案に小沢一郎氏「巧妙にできているが反対」
2017.06.27 16:00
従来の自民党の憲法改正草案と全く違う独自の私案(※注)を読売新聞で発表した安倍晋三・首相は、国会を閉じると早速、自民党内に改憲手続きを進めるよう号令をかけた。
【※注/5月3日付の読売新聞に掲載されたインタビューで、安倍首相は「憲法改正2020年施行目標」を掲げ、現行憲法9条の1項、2項を残しつつ「自衛隊の存在を記述する」とした。2012年の野党時代に作成された自民党憲法草案には「国防軍を保持」などと明記されており、大幅に異なる内容となっている】
憲法改正論議がいよいよ本格化するが、国民の間に奇妙な現象が起きている。
安倍首相こそが“正統な改憲論者”とされ、その方針に反対する政治家は改憲論者でも「改正反対派」「護憲派」のレッテルを貼られる。野党第一党の民進党が「安倍首相の手による憲法改正には反対」という非論理的姿勢で議論を拒否していることもその風潮に拍車をかけている。
20年前から改憲試案を世に問うてきた小沢一郎氏は、この改憲論議をどうとらえているのか。政治ジャーナリストの武冨薫氏がインタビューした。
──安倍首相の改憲私案をどう読んだか。
小沢:特に9条についてはものすごく巧妙にできている。9条の1項と2項を残し、自衛隊の存在を追記するという内容は、国民にいかにも平和主義というイメージを与えつつ、『自衛隊は災害活動を一所懸命にやっている。憲法に明文化するだけならいいんじゃないか』という雰囲気にさせる。
──あなたも反対できない?
小沢:いや、反対する。9条は「国権の発動」たる戦争と武力の行使の放棄を定めている。すなわち自衛権を海外で行使しないと書かれている。安倍政権は昨年の安保法制で海外派兵を可能にして、事実上、9条を骨抜きにした。いまさら平和主義を守るというなら、まず安保法を廃棄せよ、と。それが筋です。
──小沢改憲試案(1999年)の9条改正案と今回の安倍私案は似ているという指摘がある。
小沢:僕があの中で書いたのは、日本が国際社会の平和活動に積極的に参加すると明記してはどうかという提案で、米国との集団的自衛権を行使して自衛隊を海外派兵する安倍さんの考え方とはまるで違う。
もし、9条に加えるとすれば、日本国は「急迫不正の侵害」に対して反撃する権利を有するし、そのための戦力保有を妨げるものではないという規定をおけばいい。
──教育無償化も盛り込むと言っている。
小沢:教育の権利と義務については現憲法にすでに明記されている。無償化などは法律で決めればいいこと。憲法のテーマではない。改憲の議論をするなら国会の二院制のあり方とか、他に議論すべきことがある。
──安倍私案は自民党の草案ともまるで違う。
小沢:自民党はよく何も言わないね。『総理、わが党にはすでに草案があります。それを変えたいなら、党の憲法調査会にあなたの案を出して説明しなさい』とぴしゃっと言うべきである。
──それどころか「読売を読め」といわれて一所懸命読んでいる。
小沢:政治家の劣化だろう。政治家の劣化は同時に国民の劣化を意味する。すなわち、最終的には主権者たる国民がしっかりしなければならない。
※週刊ポスト2017年7月7日号