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安倍政権をジワジワ追い詰めた、前川喜平氏の「人間力」 by 新恭 〔MAG2.NEWS 2017.8.11 〕

2017-08-13 18:34:08 | 紹介

http://www.mag2.com/p/news/260190より転載

安倍政権をジワジワ追い詰めた、前川喜平氏の「人間力」

kihe.maedacchi

 

捨て身の覚悟で「加計学園問題」の告発を行った前川喜平前文科省事務次官。安倍政権は当時、すぐにメディアなどを使って前川氏への個人攻撃を始めました。しかし、メルマガ『国家権力&メディア一刀両断』の著者で元全国紙社会部記者の新 恭さんは、前川氏の発言にはウソ偽りが感じられず、あの「告発」以降、国民の心が急速に安倍政権から離れ始めたのは起こるべくして起こったことだと持論を展開しています。

安倍政権の支持率を急落させた前川喜平氏の人間力


「ここだけの内緒の話ですが、2015年9月18日の夜、国会正門前に私はいたんです。シールズの連中がね、ラップのリズムで集団的自衛権はいらない、とコールしている。私も一個人としてみんなに混じって声を出してました

前の文科省事務次官、前川喜平氏が先日、福島市内で開かれたイベント「前川さん大いにかたる─加計・憲法・夜間中学などなど」で話した内容だ。

公衆の面前で「内緒の話」もあるまいが、そう言うからには今回が初披露なのだろう。

集団的自衛権を認めるという憲法解釈は成り立たないし、立憲主義に反する。あってはならない解釈にもとづいて法律をつくったあの安保法制は憲法違反です。あの夜、一回きりでしたが、今日行かなきゃもうない、と。バレていないと思いますよ。バレていたら事務次官になっていなかったはず」

当時の前川氏は文部科学審議官である。翌年6月には事務次官にのぼりつめた。官房長、初等中等教育局長をへて順調に出世の階段をのぼっていた。その人が、安倍政権の新しい安保法案に反対し、参院本会議で可決されるのを阻止すべく声をふりしぼっていた国会前の集団の中に身を置いていたというのだ。

たしかに、幹部官僚の人事権を握る官邸がそれを知れば、即座に左遷させられたことだろう。

退職後とはいえ、元事務次官が時の政権に「行政を歪められた」と物申した衝撃と注目度の高さは、想像をはるかに超える。福島で開かれたこのイベントに、はるばる四国から参加した女性もいたほどである。

思い切った言動もさることながら、その人格がどのようにしてつくられたかに関心を持つ人も多いようだ。質問者のなかに「前川さんに興味があります」とはっきり言う婦人もいた。

とにかく前川氏の言うことは論旨明快ウソ偽りが感じられない。だから、安倍首相をはじめ官邸や内閣府の面々が対照的に、胡散臭く見えてしまう。実際、安倍首相の人気急落には、前川氏の出現も大いに影響しているのではないか。

 


こと教育論に限っても、前川氏は安倍首相のアンチテーゼといえる存在だ。教育再生を謳い、「人づくり革命」と意味不明の新スローガンを繰り出した安倍首相は国のために命を懸ける人づくりを教育の眼目とする。

それに対し、前川氏は人それぞれの個性の違いを重視する。「いじめ」についても、道徳教育が足りないと安倍首相は考えるが、前川氏は違う。

この日のイベントで、参加者の一人が前川氏にこう質問した。

「前川さんは、いじめがひどいのであれば学校に行かなくていいと仰っていましたが、そう思ったきっかけは」

前川氏は自身の不登校体験を語りはじめた。親の仕事の都合で奈良から東京に転居した小学校三年生の時、東京の言葉や担任の先生になじめず、学校に行く直前になると吐き気や頭痛がして欠席した。

当時、奈良の学校にはプールがなく、泳げなかった。プールのある東京の学校の水泳の授業が怖かった。四年生になって、別の学校に転校し、担任の先生が優しかったこともあって、ようやく溶け込めたという。そういう児童期の体験が、前川氏の教育観をつくりあげたのかもしれない。

学校の規則や人間を規格にはめようとする教育には抵抗感をもっていました…そういう人間が文科省で事務次官をやってはいけないのかもしれませんが…」

子供を規格に押し込めない教育。その実例として、前川氏が紹介したのは、大阪市立大空小学校だ。同小学校元校長、木村泰子氏によると「スーツケースではなく、風呂敷のような学校」なのだそうである。

前川氏は言う。「スーツケースのような一つの型に入れようとすると息苦しくなって逃げたくなる。大空小学校はどんな問題を抱えている子でもすべて受け入れて個別に対応する。どんな形の子供でもそれぞれの個性を生かしながらやわらかく一つに包みこんで共同体をつくっていく。そのとき、守るべきルールはたったひとつ。自分がされて嫌なことは他人にしない。それだけは守りなさい、と」

おそらく前川氏は、政府、文科省が進めている現実の教育とのギャップに悩みながらも、大空小学校のような教育が実際に行なわれていることに救いを見出していたのであろう。事務次官になっても役人は前例踏襲であるし、組織の論理から逃れることは難しい。そこに、安倍官邸のような締めつけが加わると、それこそ息苦しい。

「学校という仕組みからマインドが離れられないんです。親がなくとも、学校がなくとも、子供が学校以外の場所で学ぶのはいくらでも可能です」

学校に行かなければ不良だとでもいうような風潮を前川氏は戒める。加計問題での勇気ある発言と併せ、日本の官僚もまんざら捨てたものではないと思わせてくれる。

こういう視点を持つ人なら、現役の官僚だったころでも、国の最高権力者が古い道徳や国家意識を押しつけるかのような姿を見たとき、どう感じるかは自明のことだ。

 


安倍首相の明治憲法に回帰するような憲法観
はもとより、「人づくり革命」とか「一億総活躍」とかいったスローガンであらわされる単眼的な人間観には大いなる疑問を抱いていたことだろう。

しかもその権力者が、ほとんど国としては必要としない獣医学部を特例的に新設することを決め、その事業を親友の経営する加計学園に担わせるための認可を、文科省に求めてきたのである。

加計学園が安倍首相はもとより自民党の有力議員の選挙を応援してきたことも知られている。学問や教育が、政治によって歪められる心配もあるのだ。

加計理事長と政治家。これはもう、絶望的に癒着した関係に見える。

松沢成文参院議員が数回にわたり国会で質疑を繰り広げたのが、加計学園グループの学校法人英数学館の敷地内に「自民党岡山県自治振興支部」という自民党の政党支部が存在することだ。

支部長は加計孝太郎氏。会計責任者、埋見宣明氏は岡山理科大同窓会の副会長。

事務担当者、小林正博氏は加計学園グループ・並木学院高校の校長。支部の支出の全てが政治活動費、組織活動費であり、何らかの政治活動が行われていたことは明らかである。

つまり、加計学園の英数学館に事務所を置いて政治活動をやっている。そのスタッフは学園の関係者ばかりということだ。

松沢氏は「教育基本法十四条の二に違反するのではないか」と7月10日の閉会中審査でただしたが、当時の松野文科大臣は例のごとく明確な答弁を避けた。そこで松沢氏は、参考人として出席していた前川喜平氏に「事務方のトップの経験者としてどういう見解をお持ちですか」と質問した。

前川氏は「一般論としては」と断ったうえで、「学校の関係者、校長以下の教職員がそういった学校の立場で政治活動をするということは教育基本法に違反するおそれがあると考えております」と語った。

09年の安倍氏の衆院選挙で、加計学園グループは、傘下の岡山理科大学、千葉科学大学、倉敷芸術科学大学などに所属する事務職員を選挙運動の応援に動員した。

これに教職員組合が反発。「職場の上下関係において上位にあるものが行えば、強要の意図がなくとも下位のものは非常に断りにくい状況に追い込まれる。これは思想信条の自由に対する重大な侵害である」と、加計理事長あてにパワー
ハラスメントの調査を求める要求書を突きつけている。

学校法人が、事務職員を半ば強制的に特定の国会議員候補者の選挙運動にかかわらせるというのは、公職選挙法にもふれる問題ではないか。しかも国から多額の私学助成金を受けているのである。学校ビジネスを拡大するのに政治家を利用し、国からカネを引き出すという加計理事長の経営術は、教育のあり方を考え続けてきた前川氏と、根本精神からして相容れない。


前川氏のような教育観は、教育ビジネスの観点からすると旧態依然とした岩盤であるらしく、6月26日、国家戦略特区諮問会議の有識者議員らが記者会見したさい、竹中平蔵氏は前川氏を激しい口調で批判した。

「改革に反対する人たちが牙をむいてきた。前次官が記者会見で話した内容には、違和感がある。行政が歪められたというが、違うでしょうと。あなたたちが52年間も設置の申請さえ、させないということで、行政を歪め国際的に大きく遅れをとってしまった。だから国家戦略特区という枠組みで歪みをただしたのだ」

竹中氏の発言は、多くの国民が抱いている疑念について触れていない。客観的にことの経緯を見ていくと、全てが“加計ありき”で進められ、加計学園も認可されることを前提に早くから準備を始めている。異例な展開と特別扱いの背景に、安倍首相と加計理事長の親密な関係への官僚の忖度があったのではないか。そのような疑念は無視し、抵抗勢力による岩盤規制こそが元凶だと話をすり替える

ならば竹中氏に問いたい。諮問会議において、今治市の提案が、いわゆる「石破四条件に合致しているかどうか、すなわち既存の大学にはできない研究、教育内容を実現する確信が持てるまでの議論がなされたのか。

岩盤規制の改革はいいが、無条件に何でも認めるわけにはいかない。ゆえに獣医学部設置の条件を定め閣議決定したのが「石破四条件」である。これを無視していいわけがない。前川氏はその点について記者会見で疑問を呈したのだ。竹中氏はそれに答えていない。

官邸、内閣府、諮問会議は、加計学園の名前を伏せ「愛媛県と今治市」の提案として獣医学部新設を審議してきた。しかし8月6日の朝日新聞は、2015年6月に愛媛県、今治市から特区ワーキンググループがヒアリングしたさい、議事要旨に記載のない加計学園の幹部が実際には同席していたと報じている。

国民にはすでにバレている“加計ありきの計画をいつまでも隠そうとしウソの上塗りばかりしているから、政権中枢の信用は低下の一途をたどっているのだ。

このような政権が、いくら「人づくり」を叫ぼうとも、空虚に響くのはあたりまえだ。まして「○○改革」が陳腐になったから「○○革命」と言う。奇妙な言葉遣いで人をごまかそうとする政権には、前川氏でなくとも、あきれ果てる。

image by: WikimediaCommons

 

『国家権力&メディア一刀両断』

著者/新 恭(あらた きょう)記事一覧メルマガ

記者クラブを通した官とメディアの共同体がこの国の情報空間を歪めている。その実態を抉り出し、新聞記事の細部に宿る官製情報のウソを暴くとともに、官とメディアの構造改革を提言したい。

 

 



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