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技術ではなく(7) 実戦教師塾通信五百三十七号

2017-03-03 11:49:33 | 子ども/学校
 技術ではなく(7)
     ~「集団」を目的とする時の過(あやま)ち~


 1 正門

 昨年11月以来の「技術ではなく」の発行となる。この一年間、今の学校にお邪魔して感じたことを残しておきたい。

 いつものように正門前に立ち、生徒に「おはよう」と声をかけたら、
「うるせえな、バカ野郎」
という、つぶやきともつかない声が返ってきた。もちろんこれは、いま行っている学校での話ではない。私がかつて勤務した中学校での話だ。こう返されたのは教頭なのだが、このあとの感想がいい。
「あれが、あいつの『おはよう』なんだな、きっと」
普通だったら、なんだその言いぐさは、などと刀を振り上げてしまうが、違っていた。
 実はこの生徒、普段はしょうもないカッコウで、遅刻常習の生徒である。それがここのところ遅刻もせず、「普通」のカッコウで正門をくぐっている。オレは一体なにをやってるんだ、みたいなこいつの心境はありありなのだ。そんなこいつの胸の内を、この教頭は自分の中に投影させた。
 いつものように慌ただしい朝なのだが、私はこの心優しい教頭と、正門前で語り合った。

 2 「おねだり」/「評価」
 学校は、あいさつを無条件で肯定し奨励(しょうれい)する。私も別にそれを無下に否定しようとまでは思わない。しかし、教室に大きな声で「おはよう!」と入ってきた先生が、もう一度教室に入り直して、
「オマエら、元気ねえぞ!」
と、子どもたちに「お返し」を「おねだり」する姿は珍しくないし、やっぱり……いただけない。いいものはしつけるという考えでやっているとは思えないぐらい、強引な色合いを持っているからだ。おそらく、先生たちも元気が欲しいんだろう、ぐらいに私は思っている。
 いつの頃からかは忘れたが、私は朝、まるでやけっぱちのように大声で教室に入って行くことをしなくなった。決定的となったのは、中学校の教員になってからではないだろうか。
「センセイ、何そんなに熱くなってるの?」
「いま会話中。センセイ、少しうるさい」
「朝からしんどくないの?」
とでも言いたげな子どもたちの様子に諭(さと)されたのかも知れない。そうなって、
「いいや、許さん! あいさつは万人共通の礼儀だ!」
と、私は思わなかった。良かった。
 この「あいさつ」、ご存じと思うが、成績評定の項目に入っている。行動評価の欄だ。「元気よくあいさつが出来る」というやつである。正義感や責任感ならまだしも、あいさつが評価されて通信簿に記入される。中学校では「内申書に響くぞ!」などという、とてつもなく間抜けな言葉が聞こえたのは確かだ。こんなにも先生の嗜好(しこう)で左右される項目はいかがなもんでしょうか、と私は結構頑張っていたはずだ。通信簿の内容を決定する権限は、校長が持っているのである。しかしこの項目が、全国の学校でずっとそのまま修正されることなく来ている。ため息をつくのは、私だけではあるまい。

 3 あるべき姿?
 声が大きかろうが小さかろうが、気持ちよくあいさつする子はいる。そのせいで朝のスタートがまったく違う。
「ああ、気持ちいいなあ」
と心から思う。でもそれでおしまい。それでいい。あいさつとはそういうものだ。今日は元気がないな、どうしたんだろうと思い、ついその子に、元気?などと聞いてしまう日もある。でもそれでおしまい。それでいい。それがあいさつだ。
「もう一回だ、この野郎!」
「人が『おはよう』って言ってんだろ!」
こうなるのは、クラスという集団の中の「セレモニー」として、あいさつが位置づけられるからだ。

 大声をいさめ、静かに教室に入るようになった私は、ワタシいま来ました、ここにいます程度のあいさつになる。あるいは目が合った子や、そばに来る子とあいさつを交わす。それで何度となく「おはよう」が口から出て行く。そうなってみて、
「毎日元気な方がいい/みんな元気な方がいい」
という気持ちが、実は、
「毎日元気であるべきだ/みんな元気であるべきだ」
という気持ちに寄り添っていたことに気づくのだった。
 セレモニーや行事の時は別だ。あいさつにも特別な「ハレ」の姿と、毎日代わりばえのしない「ケ」の姿があるのだ。

 子どもたちは、夕方から夜、学校と違う時間を過ごし、翌朝再び、学校の門をくぐる。子どもたちはそこで、喜んでか仕方なくか、生活を仕切り直す。子どもたちは早く、あるいはゆっくりと目覚めればいい。私たちがそう思えるなら、
「『おはよう』って言ってんだろ!」
と、子どもに迫ることなく、
「『うるせえな、バカ野郎』があいつの『おはよう』なんだ」
という「間合い」を収穫できるのだ。



        手賀沼の河津桜。満開です。
 ☆☆
今日は雛祭りですね。何人かの子どもたちに「お雛さま飾った?」と聞いてみたんですが、飾っている家はひとりでした! 家にあるかどうか聞けないし、どうして?とは聞けませんでした。まだ小さい猫がいて、雛にじゃれるのが心配で、という子がひとりいたんですが……どうなっているのかなあ?


     こちらは我が家の桃?です。蕾がふくらみました。
 ☆☆
天皇陛下、今度はベトナム訪問です。私のようなものは、このことがなかったら、フランスがベトナムを再び領土とすることに抵抗しようと、戦後もベトナムに残った日本兵がいたことなど、知る由もありませんでした。すごい……

 ☆☆
もうすぐ、私の(中古ですが)新しい愛車(バイク)が来ま~す。多分、来週には紹介できると思います。春よ来~い!

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