瀬戸際の暇人

今年も偶に更新します(汗)

異界百物語 ―第71話―

2008年08月30日 22時16分52秒 | 百物語
やあ、いらっしゃい。
蒸し暑さが戻って来たようだね。
こんな日の午後は夕立に見舞われ易い。
暫くは傘を忘れず持って行った方が良いだろう。

昨夜は特に凄かった。
夜9時から鳴り出した雷が、朝まで轟いていたよ。
雨も土砂降りで、溢れ出す様な勢いだった。

そんな悪天候の中来て頂いて嬉しく思うよ。
けど道中くれぐれも気を付けてくれたまえ。

さて今夜紹介するのは、昨夜の話の現代版だ。
どうやら青森の女子高生の間で噂になった話らしい。




友達から聞いた話なんだけどォー、


或る女子高生に子供出来ちゃってェー。

そんで困っちゃってェー、

だって育てられっこないじゃーん?

だから父親の男と一緒にィー、

こっそり車で遠くの湖まで出掛けてってェー、

そんで袋で包んで重石付けて、底に沈めちゃったんだってェー。

親にも知らせてなかったしィー、

誰もそのコが妊娠して子供産んで捨てたなんて解らなかったらしいよォー。


それでね、7年位経ってから、学生時代とは別の男と付き合って、結婚してェー、

で、2人目の子供産んだんだってェー。

もちろん結婚した男や周りには黙ってて、初めて産んだ子供だって事にしてたんだけどねェー。

その結婚した男とは上手くやって行けたみたい。


また何年か経って、子供も大きくなって、家族で旅行したんだってェー。

でね、その子が「湖に行きたい」って言うんで、湖まで出掛けて、そこの遊覧ボートに家族で乗ってねェー、

そしたらその子が急に「おしっこしたい」って言うからァー、

お母さんになったコが仕方なく抱えてやって、ボートの上で湖にさせたワケよォー。

したらさァ…その子が母親の方、くるって振り返ってさァ……


「今度は落とさないでね」


……なんて言ったんだってェ………。


これってチョー恐くなァーい?




臨場感を出す為、敢えて現代女子高生口調で語らせて貰った。
余談だが最近現役女子高生と話す機会が有り、「チョー簡単!」と実際に口にしてるのを聞いた時は、チョー感動したものだ。
最近はTV位でしか聞いた事が無く、「リアルに口にしてる女子高生なんて、もう居ないのでは?」と考えていたものでね。

閑話休題、話を怪談に戻すとしよう。

青森の怪談らしく、湖が効果的に使われている。
やはり県のシンボルである、あの湖だろうか?

それは兎も角、聞いての通り、筋は大体同じだ。
時代は変っても、国民の魂は変ってないという事だろう。

悪い事をすれば報いが来る。
悪い事を言えば事実となる。

今も昔も日本人は因果応報話が好きなのだ。


そう結論着けた所で、今夜の話は、これでお終い。
さあ、蝋燭を1本、吹消して貰おうか。

……有難う。

それじゃあ気を付けて帰ってくれたまえ。

――いいかい?

夜道の途中、背後は絶対に振返らないように。
夜中に鏡を覗かないように。
そして、風呂に入ってる時には、足下を見ないように…。

では御機嫌よう。
次の夜も、楽しみに待っているよ…。



参考、『女子高生が語る不思議な話(久保孝夫、著 青森県文芸協会出版部、刊)』。

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