
2007年4月12日放送のスーパーJチャンネルのネットカフェ難民についての報道で、「春の乱SP」の取材映像が再利用された。
「春の乱SP」の正式な番組名は、「報道特捜!桜吹雪!列島春の乱SP・希望なき若者の姿」というらしいが、テレビのラテ欄や出演者のHPなどでは、「報道特捜!春の乱SP」だとか「列島激震!春の乱SP」だとかになっている。放送されたのは、2007年3月31日の午後11時30分から2007年4月1日の午前0時30分までであるが、勿論、後半がエイプリルフールだったわけではない。番組表では、ニュース、報道、報道特番といったカテゴリーになっている。「バラエティーショー」でもなければ、「情報番組」でもなかった様だ。
「春の乱SP」の構成を簡単におさらいしておく。
1:花見に浮かれる若者たち
2:「若者たちの心の闇」と題して、万引き犯、盗撮犯、盗聴電波受信マニア
3:家庭に仕掛けられた盗聴器の探索サービスへの密着
4:「桜満開の春、しかし自らの意思で冬の中に留まる若者たちが増えている」とのナレーション
5:東京・池袋のネットカフェ難民
6:大阪・日本橋のオタクホームレス
7:名古屋の高収入な若年ホームレス(大谷昭宏が「お山の大将」と説教)
8:大谷昭宏のまとめ「若者たちは散る事を怖れて咲かない桜のつぼみ」
9:「まるで造花の様だ」とのナレーションと共に、家の中のスーツを映して終了
スーパーJチャンネルに流用されたのは5の部分であるが、その直前のナレーションは最悪である。
5のパートの冒頭は、北野誠によるマンガ喫茶そのものの紹介であるが、どう聞いてもこのナレーションが一般のマンガ喫茶の利用者を指したものとは思えない。
明らかに、「進学・就職の春に、『自らの意思で』冬の中に留まる若者たちが増えている」というニュアンスで、ネットカフェ難民を非難してしまっている。
また、難民の一人として紹介された、親の虐待から逃れてきた19歳の少女については、「春の乱SP」でのみ「19歳の夢が色あせていく」と、あたかも自分の勝手で家出をして、現実の辛さに打ちのめされているかの様なナレーションが入っている。
なお、難民の一人である28歳の男性についても、「このままではマンガ喫茶に居場所を求める事ができなくなる」というナレーションで結んでおり、直後に大谷昭宏による日本橋の取材と29歳のオタクホームレスの話へと移っている。
おそらく、「春の乱SP」に対しては、下記の様な抗議が殺到しただろう。
・ネットカフェ難民や若年ホームレスを、若年犯罪や盗聴と関連付けるのは弱者叩きである。
・「希望なき若者」を「散る事を怖れて咲く事ができない桜」に例えて、自己責任扱いしている。
さて、スーパーJチャンネルであるが、「ネットカフェ難民」について、2007年3月15日に国会で取り上げられ、厚生労働省が実態調査へと動いた事を受けての、「春の乱SP」の取材映像の再々利用となったわけだ。
マンガ喫茶そのものについての取材は、「春の乱SP」ではタレントの北野誠が行っていたが、「Jチャン」では増澤孝志ディレクターがやり直している。北野誠は同局の「やじうま+」でもコメンテーターを務めており、レポーターとしての人選には問題がない筈だが、これは「大人の事情」という事だろうか? ただ、北野のバージョンでは、マンガ喫茶の利用者から「周りと関わらずに一人でいるから気に入っている」というコメントが入っており、この部分を聞けば、あたかもマンガ喫茶の利用者が「引きこもり」であるかの様な印象になる。これを修正したかったのかもしれない。増澤ディレクターのバージョンでは、シャワーの存在が加わり、簡潔な施設の説明となっている。
また、寝泊りに利用している40代の労働者が顔を出して証言している部分も付け加えられている。
法政大学教授の萩谷順は、「彼らは働く気があるのに、定収入に繋がらない。厚生労働省の対応は遅すぎる。」とコメントした。ここでようやく、若者たちが自らの意思でこうなった訳ではない事を、テレビ朝日が認めた事になる。
この様に、「若者叩き」的な要素はかなり薄められた。抗議を少しは聞いたらしい。「若者叩き」はかなりトーンダウンし、論調も彼らを被害者とするものへと180度変わったのである。
確かに、ネットカフェ難民の事を、この様な社会問題として取り上げた「Jチャン」の内容は評価できる。
ただし、厚生労働大臣の答弁は「春の乱SP」が放送される2週間以上も前の事であり、既に国が社会問題として把握していた事を指摘しておきたい。テレ朝や大谷が、「若者の自己責任」とは言えないくらいに厳しい実情を知らなかった筈がない。
「春の乱SP」でのレポートが「Jチャン」でこの様な内容に直された事は良い。しかし、だからと言って、「春の乱SP」において、ネットカフェ難民や若年ホームレスの問題を「自らの意思で」等と、「若者の自己責任論」的に報道した事についての説明責任を、テレビ朝日も、番組のホストである大谷昭宏も、全く果たしてはいないのである。
「春の乱SP」は、深夜番組として放送された。テレビ朝日は、この様に人権を軽視した「報道娯楽番組」を、高度なメディアリテラシーが要求される深夜の「アダルトコンテンツ」として放送したとでも言うのだろうか?
私はいう、この人は義とされて家に帰ったが、さきの人はそうではなかった。高ぶる人は下げられ、へりくだる人は上げられるのである。(ルカ18:14)
「さきの人」とは社会的地位のあるファリサイ人で、他の人がなし得ないものとして、自分の善行を列挙して神に祈った。「この人」とは人々から嫌われている収税人で、自分の罪を謙虚に悔いて祈った。キリストは収税人の方を義としたのである。社会問題を弱者の視点から報道する事もまた、他の人にはなし得ない善行だろう。しかし自分の罪を棚に上げてしまっては台無しなのである。
追記:言及リンク一覧
http://kiaidenorikiru.seesaa.net/article/37713158.html?reload=2007-04-14T00:23:32
http://blog.goo.ne.jp/xemem/e/63ad4654607aec3c1f75d75e67cd8aa4
ネット喫茶難民を初の実態調査へ 厚労省(共同通信) - goo ニュース
ネットカフェ難民報道(スーパーJチャンネル)
アキバblog
かな◆KANAtaylfcのBlog
かな◆KANAtaylfcのBlog
かな◆KANAtaylfcのBlog
言ノ葉工房
「春の乱SP」の正式な番組名は、「報道特捜!桜吹雪!列島春の乱SP・希望なき若者の姿」というらしいが、テレビのラテ欄や出演者のHPなどでは、「報道特捜!春の乱SP」だとか「列島激震!春の乱SP」だとかになっている。放送されたのは、2007年3月31日の午後11時30分から2007年4月1日の午前0時30分までであるが、勿論、後半がエイプリルフールだったわけではない。番組表では、ニュース、報道、報道特番といったカテゴリーになっている。「バラエティーショー」でもなければ、「情報番組」でもなかった様だ。
「春の乱SP」の構成を簡単におさらいしておく。
1:花見に浮かれる若者たち
2:「若者たちの心の闇」と題して、万引き犯、盗撮犯、盗聴電波受信マニア
3:家庭に仕掛けられた盗聴器の探索サービスへの密着
4:「桜満開の春、しかし自らの意思で冬の中に留まる若者たちが増えている」とのナレーション
5:東京・池袋のネットカフェ難民
6:大阪・日本橋のオタクホームレス
7:名古屋の高収入な若年ホームレス(大谷昭宏が「お山の大将」と説教)
8:大谷昭宏のまとめ「若者たちは散る事を怖れて咲かない桜のつぼみ」
9:「まるで造花の様だ」とのナレーションと共に、家の中のスーツを映して終了
スーパーJチャンネルに流用されたのは5の部分であるが、その直前のナレーションは最悪である。
5のパートの冒頭は、北野誠によるマンガ喫茶そのものの紹介であるが、どう聞いてもこのナレーションが一般のマンガ喫茶の利用者を指したものとは思えない。
明らかに、「進学・就職の春に、『自らの意思で』冬の中に留まる若者たちが増えている」というニュアンスで、ネットカフェ難民を非難してしまっている。
また、難民の一人として紹介された、親の虐待から逃れてきた19歳の少女については、「春の乱SP」でのみ「19歳の夢が色あせていく」と、あたかも自分の勝手で家出をして、現実の辛さに打ちのめされているかの様なナレーションが入っている。
なお、難民の一人である28歳の男性についても、「このままではマンガ喫茶に居場所を求める事ができなくなる」というナレーションで結んでおり、直後に大谷昭宏による日本橋の取材と29歳のオタクホームレスの話へと移っている。
おそらく、「春の乱SP」に対しては、下記の様な抗議が殺到しただろう。
・ネットカフェ難民や若年ホームレスを、若年犯罪や盗聴と関連付けるのは弱者叩きである。
・「希望なき若者」を「散る事を怖れて咲く事ができない桜」に例えて、自己責任扱いしている。
さて、スーパーJチャンネルであるが、「ネットカフェ難民」について、2007年3月15日に国会で取り上げられ、厚生労働省が実態調査へと動いた事を受けての、「春の乱SP」の取材映像の再々利用となったわけだ。
マンガ喫茶そのものについての取材は、「春の乱SP」ではタレントの北野誠が行っていたが、「Jチャン」では増澤孝志ディレクターがやり直している。北野誠は同局の「やじうま+」でもコメンテーターを務めており、レポーターとしての人選には問題がない筈だが、これは「大人の事情」という事だろうか? ただ、北野のバージョンでは、マンガ喫茶の利用者から「周りと関わらずに一人でいるから気に入っている」というコメントが入っており、この部分を聞けば、あたかもマンガ喫茶の利用者が「引きこもり」であるかの様な印象になる。これを修正したかったのかもしれない。増澤ディレクターのバージョンでは、シャワーの存在が加わり、簡潔な施設の説明となっている。
また、寝泊りに利用している40代の労働者が顔を出して証言している部分も付け加えられている。
法政大学教授の萩谷順は、「彼らは働く気があるのに、定収入に繋がらない。厚生労働省の対応は遅すぎる。」とコメントした。ここでようやく、若者たちが自らの意思でこうなった訳ではない事を、テレビ朝日が認めた事になる。
この様に、「若者叩き」的な要素はかなり薄められた。抗議を少しは聞いたらしい。「若者叩き」はかなりトーンダウンし、論調も彼らを被害者とするものへと180度変わったのである。
確かに、ネットカフェ難民の事を、この様な社会問題として取り上げた「Jチャン」の内容は評価できる。
ただし、厚生労働大臣の答弁は「春の乱SP」が放送される2週間以上も前の事であり、既に国が社会問題として把握していた事を指摘しておきたい。テレ朝や大谷が、「若者の自己責任」とは言えないくらいに厳しい実情を知らなかった筈がない。
「春の乱SP」でのレポートが「Jチャン」でこの様な内容に直された事は良い。しかし、だからと言って、「春の乱SP」において、ネットカフェ難民や若年ホームレスの問題を「自らの意思で」等と、「若者の自己責任論」的に報道した事についての説明責任を、テレビ朝日も、番組のホストである大谷昭宏も、全く果たしてはいないのである。
「春の乱SP」は、深夜番組として放送された。テレビ朝日は、この様に人権を軽視した「報道娯楽番組」を、高度なメディアリテラシーが要求される深夜の「アダルトコンテンツ」として放送したとでも言うのだろうか?
私はいう、この人は義とされて家に帰ったが、さきの人はそうではなかった。高ぶる人は下げられ、へりくだる人は上げられるのである。(ルカ18:14)
「さきの人」とは社会的地位のあるファリサイ人で、他の人がなし得ないものとして、自分の善行を列挙して神に祈った。「この人」とは人々から嫌われている収税人で、自分の罪を謙虚に悔いて祈った。キリストは収税人の方を義としたのである。社会問題を弱者の視点から報道する事もまた、他の人にはなし得ない善行だろう。しかし自分の罪を棚に上げてしまっては台無しなのである。
追記:言及リンク一覧
http://kiaidenorikiru.seesaa.net/article/37713158.html?reload=2007-04-14T00:23:32
http://blog.goo.ne.jp/xemem/e/63ad4654607aec3c1f75d75e67cd8aa4
ネット喫茶難民を初の実態調査へ 厚労省(共同通信) - goo ニュース
ネットカフェ難民報道(スーパーJチャンネル)
アキバblog
かな◆KANAtaylfcのBlog
かな◆KANAtaylfcのBlog
かな◆KANAtaylfcのBlog
言ノ葉工房











恐れ入りますがTB返しをお願いします。
報道倫理に関していろいろいわれている時期に
わざわざこのような倫理に欠けたことをする意図がわかりません。
非常に挑戦的な態度で、危険な意志を感じます。
ていうか、テレ朝と大谷はサイテーですよ。
また、唐突に4エントリーもTBいたしまして、失礼致しました。ネットカフェ難民や若年ホームレスの問題についてのテレ朝の報道に、特に大谷昭宏氏の報道に問題を感じましたので、エントリーを書かせていただいた次第です。