ショートスプリントや跳躍種目で、風と記録にどんな関係があるのか。
がんばってみたら、かなり妥当と思われる式を導出できた。
100m走を題材にして考える。
まず、解析しやすいように走りをモデル化する。
体を加速する力、推進力 f[N] が常に一定に加わっているとする。
接地時のブレーキも平均化して考える。
速く走るほどこの接地抵抗は大きくなり、あるところで f と大きさが同じになるとそれ以上スピードが上がらなくなる。
ここで、接地抵抗の大きさは、速さ v の2乗に比例すると仮定する。
つまり速さが v[m/s] のとき、比例定数を a として
-av^2[N]
の力が加わる。
そして、空気抵抗。v が小さいとき空気抵抗の大きさは線形だけど、ここでは v は小さくないから空気抵抗は非線形で速さの2乗に比例する。比例定数を b として
-bv^2[N]
とする。
風が w[m/s] 吹いてるとすると空気抵抗は
-b(v-w)^2[m/s]
疾走時、等速度運動をしてるならこのとき力がつり合ってて
f=av^2+b(v-w)^2
が成り立つ。
この式を v について解くと
v=(wb+√{(wb)^2-(a+b)(bw^2-f)})/(a+b) [m/s]
100mを全部このスピードで走ったら、記録 T[s] は
T=100/v=100(wb-√{(wb)^2-(a+b)(bw^2-f)})/(bw^2-f) [s]
ここから、Tのパラメータ、a,b,fについて考える。
wは風速だから既知。
まず、推進力 f から。
f を求めるためには、空気抵抗や接地抵抗がほとんど加わらない低速時のデータを使い、抗力を無視して近似する。
陸マガに乗ってる記事で、100m走の時間に対する速度の大きさの立ち上がり曲線のグラフを見つけた。
このグラフだと、スタートから3秒ぐらいまで速度の増加はほとんど線形になってる。
これを使い、約3秒までは等加速度運動と近似する。
f は個人によって異なるパラメータなので、ここで30mSDの記録を使う。
v として、スタブロから飛び出して加速し、30mで到達できる速度を各自の加速走の記録で代用する。
L[m]の加速走でp[s]なら、v=L/p[m/s]とする。
100[m]の加速走で11.00[s]なら、v=100/11=9.1[m/s]。
30mSDの記録がt[s](約3秒)の場合、t[s]で v=L/p[m/s] まで等加速度で加速したことになり、このときの加速度は
v/t [m/ss]
運動方程式から、自分の体重を m[kg] とすれば推進力は
f=mv/t [kgm/ss]
次に b だけど、こればっかりは人の形をした物体を使って実験的に測定しないと求められない。
ところが、空想科学読本2(柳田理科雄 著)の37ページにこんな記述がある。
『一般人が100mを20秒で走るときに受ける空気抵抗は700[g]だ。…… ところが、100mを10秒で走る陸上選手にかかる空気抵抗は2.8[kg]。』
空想科学読本には、数値の出どころや計算式、根拠などが省略されてて結果しか書かれていない。この意味で信頼性は低いけどこれしかないからこのデータを使うことにする。
重力加速度を9.8[m/ss]として数値を代入すると、
2.8×9.8=b×(100/10)^2
0.7×9.8=b×(100/20)^2
この二つの式は同値で
b=0.2744[kg/m]となる。
最後にa。等速運動時のつり合いの式を使う。
f=av^2+b(v-w)^2
をaについて解くと
a=(f-b(v-w)^2)/v^2 [kg/m]
無風条件で
a=(f-bv^2)/v^2 [kg/m]
これで100m加速走の記録
T=100/v=100(wb-√{(wb)^2-(a+b)(bw^2-f)})/(bw^2-f) [s]
が近似理論値として計算できる。
自分の場合、
100m加速走ベストが10"8
30mSDが4"4
体重66[kg]
だから
v=100/10.8=9.3[m/s]
f=66×9.3÷4.4=138[N]
a=(f-bv^2)/v^2=1.32[kg/m]
また、b=0.2744[kg/m].
T=100(wb-√{(wb)^2-(a+b)(bw^2-f)})/(bw^2-f) [s]
このパラメータで、w=0[m/s](無風)とすると
関数電卓の力を借りて、
T=10.75[s]
であった。
これは、100m加速走の記録とほとんど一致。
さて、やっと本題。
100m加速走の記録 T[s] が 風w[m/s] に対してどう変化するか。
導出した式を使って関数電卓でテーブルを計算した。
風 w[m/s] 、H.K氏の100m加速走の記録 、無風のときとタイムとの差
-2.5 , 11"33 , +0"58
-2.4 , 11"30 , +0"55
-2.3 , 11"28 , +0"53
-2.2 , 11"25 , +0"50
-2.1 , 11"23 , +0"48
-2.0 , 11"20 , +0"45
-1.9 , 11"17 , +0"42
-1.8 , 11"15 . +0"40
-1.7 , 11"13 , +0"38
-1.6 , 11"10 . +0"35
-1.5 , 11"08 . +0"33
-1.4 , 11"05 . +0"30
-1.3 , 11"03 . +0"28
-1.2 , 11"01 . +0"26
-1.1 , 10"98 . +0"23
-1.0 , 10"96 . +0"21
-0.9 , 10"94 . +0"19
-0.8 , 10"92 . +0"17
-0.7 , 10"89 . +0"14
-0.6 , 10"87 . +0"12
-0.5 , 10"85 . +0"10
-0.4 , 10"83 . +0"08
-0.3 , 10"81 . +0"06
-0.2 , 10"79 . +0"04
-0.1 , 10"77 . +0"02
0.0 , 10"75 . 0
+0.1 , 10"73 , -0"02
+0.2 , 10"71 , -0"04
+0.3 , 10"69 , -0"06
+0.4 , 10"67 , -0"08
+0.5 , 10"65 , -0"10
+0.6 , 10"63 , -0"12
+0.7 , 10"62 , -0"13
+0.8 , 10"60 , -0"15
+0.9 , 10"58 , -0"17
+1.0 , 10"56 , -0"19
+1.1 , 10"54 , -0"21
+1.2 , 10"53 , -0"22
+1.3 , 10"51 , -0"24
+1.4 , 10"49 , -0"26
+1.5 , 10"48 , -0"27
+1.6 , 10"46 , -0"29
+1.7 , 10"45 , -0"30
+1.8 , 10"43 , -0"32
+1.9 , 10"41 , -0"34
+2.0 , 10"40 , -0"35
+2.1 , 10"38 , -0"37
+2.2 , 10"37 , -0"38
+2.3 , 10"35 , -0"40
+2.4 , 10"34 , -0"41
+2.5 , 10"32 , -0"43
以上
参考程度に。
自分でも式に代入してやってみてね。
次は幅跳びで解析してみようか。
がんばってみたら、かなり妥当と思われる式を導出できた。
100m走を題材にして考える。
まず、解析しやすいように走りをモデル化する。
体を加速する力、推進力 f[N] が常に一定に加わっているとする。
接地時のブレーキも平均化して考える。
速く走るほどこの接地抵抗は大きくなり、あるところで f と大きさが同じになるとそれ以上スピードが上がらなくなる。
ここで、接地抵抗の大きさは、速さ v の2乗に比例すると仮定する。
つまり速さが v[m/s] のとき、比例定数を a として
-av^2[N]
の力が加わる。
そして、空気抵抗。v が小さいとき空気抵抗の大きさは線形だけど、ここでは v は小さくないから空気抵抗は非線形で速さの2乗に比例する。比例定数を b として
-bv^2[N]
とする。
風が w[m/s] 吹いてるとすると空気抵抗は
-b(v-w)^2[m/s]
疾走時、等速度運動をしてるならこのとき力がつり合ってて
f=av^2+b(v-w)^2
が成り立つ。
この式を v について解くと
v=(wb+√{(wb)^2-(a+b)(bw^2-f)})/(a+b) [m/s]
100mを全部このスピードで走ったら、記録 T[s] は
T=100/v=100(wb-√{(wb)^2-(a+b)(bw^2-f)})/(bw^2-f) [s]
ここから、Tのパラメータ、a,b,fについて考える。
wは風速だから既知。
まず、推進力 f から。
f を求めるためには、空気抵抗や接地抵抗がほとんど加わらない低速時のデータを使い、抗力を無視して近似する。
陸マガに乗ってる記事で、100m走の時間に対する速度の大きさの立ち上がり曲線のグラフを見つけた。
このグラフだと、スタートから3秒ぐらいまで速度の増加はほとんど線形になってる。
これを使い、約3秒までは等加速度運動と近似する。
f は個人によって異なるパラメータなので、ここで30mSDの記録を使う。
v として、スタブロから飛び出して加速し、30mで到達できる速度を各自の加速走の記録で代用する。
L[m]の加速走でp[s]なら、v=L/p[m/s]とする。
100[m]の加速走で11.00[s]なら、v=100/11=9.1[m/s]。
30mSDの記録がt[s](約3秒)の場合、t[s]で v=L/p[m/s] まで等加速度で加速したことになり、このときの加速度は
v/t [m/ss]
運動方程式から、自分の体重を m[kg] とすれば推進力は
f=mv/t [kgm/ss]
次に b だけど、こればっかりは人の形をした物体を使って実験的に測定しないと求められない。
ところが、空想科学読本2(柳田理科雄 著)の37ページにこんな記述がある。
『一般人が100mを20秒で走るときに受ける空気抵抗は700[g]だ。…… ところが、100mを10秒で走る陸上選手にかかる空気抵抗は2.8[kg]。』
空想科学読本には、数値の出どころや計算式、根拠などが省略されてて結果しか書かれていない。この意味で信頼性は低いけどこれしかないからこのデータを使うことにする。
重力加速度を9.8[m/ss]として数値を代入すると、
2.8×9.8=b×(100/10)^2
0.7×9.8=b×(100/20)^2
この二つの式は同値で
b=0.2744[kg/m]となる。
最後にa。等速運動時のつり合いの式を使う。
f=av^2+b(v-w)^2
をaについて解くと
a=(f-b(v-w)^2)/v^2 [kg/m]
無風条件で
a=(f-bv^2)/v^2 [kg/m]
これで100m加速走の記録
T=100/v=100(wb-√{(wb)^2-(a+b)(bw^2-f)})/(bw^2-f) [s]
が近似理論値として計算できる。
自分の場合、
100m加速走ベストが10"8
30mSDが4"4
体重66[kg]
だから
v=100/10.8=9.3[m/s]
f=66×9.3÷4.4=138[N]
a=(f-bv^2)/v^2=1.32[kg/m]
また、b=0.2744[kg/m].
T=100(wb-√{(wb)^2-(a+b)(bw^2-f)})/(bw^2-f) [s]
このパラメータで、w=0[m/s](無風)とすると
関数電卓の力を借りて、
T=10.75[s]
であった。
これは、100m加速走の記録とほとんど一致。
さて、やっと本題。
100m加速走の記録 T[s] が 風w[m/s] に対してどう変化するか。
導出した式を使って関数電卓でテーブルを計算した。
風 w[m/s] 、H.K氏の100m加速走の記録 、無風のときとタイムとの差
-2.5 , 11"33 , +0"58
-2.4 , 11"30 , +0"55
-2.3 , 11"28 , +0"53
-2.2 , 11"25 , +0"50
-2.1 , 11"23 , +0"48
-2.0 , 11"20 , +0"45
-1.9 , 11"17 , +0"42
-1.8 , 11"15 . +0"40
-1.7 , 11"13 , +0"38
-1.6 , 11"10 . +0"35
-1.5 , 11"08 . +0"33
-1.4 , 11"05 . +0"30
-1.3 , 11"03 . +0"28
-1.2 , 11"01 . +0"26
-1.1 , 10"98 . +0"23
-1.0 , 10"96 . +0"21
-0.9 , 10"94 . +0"19
-0.8 , 10"92 . +0"17
-0.7 , 10"89 . +0"14
-0.6 , 10"87 . +0"12
-0.5 , 10"85 . +0"10
-0.4 , 10"83 . +0"08
-0.3 , 10"81 . +0"06
-0.2 , 10"79 . +0"04
-0.1 , 10"77 . +0"02
0.0 , 10"75 . 0
+0.1 , 10"73 , -0"02
+0.2 , 10"71 , -0"04
+0.3 , 10"69 , -0"06
+0.4 , 10"67 , -0"08
+0.5 , 10"65 , -0"10
+0.6 , 10"63 , -0"12
+0.7 , 10"62 , -0"13
+0.8 , 10"60 , -0"15
+0.9 , 10"58 , -0"17
+1.0 , 10"56 , -0"19
+1.1 , 10"54 , -0"21
+1.2 , 10"53 , -0"22
+1.3 , 10"51 , -0"24
+1.4 , 10"49 , -0"26
+1.5 , 10"48 , -0"27
+1.6 , 10"46 , -0"29
+1.7 , 10"45 , -0"30
+1.8 , 10"43 , -0"32
+1.9 , 10"41 , -0"34
+2.0 , 10"40 , -0"35
+2.1 , 10"38 , -0"37
+2.2 , 10"37 , -0"38
+2.3 , 10"35 , -0"40
+2.4 , 10"34 , -0"41
+2.5 , 10"32 , -0"43
以上
参考程度に。
自分でも式に代入してやってみてね。
次は幅跳びで解析してみようか。
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