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転校生 -さよならあなた-

2007-09-14 08:44:02 | 映画2007
 実相寺作品よりも大胆な斜め映像。これから鑑賞の方は分度器を持参で・・・

 25年前に作られた大林宣彦監督の『転校生』のセルフリメイク。と、最初は固定観念のもちつつ鑑賞しました。舞台は尾道から信州に変わり、斉藤一夫も斉藤一美もそれぞれ付き合ってる彼女・彼氏がいる。男女二組という大胆な設定変更によっても基本ストーリーは変わらないんじゃないか、最後にはほのぼのとした青春ファンタジーに戻って安心させてくれるんじゃないか・・・などと、余裕で構えていたのですが、ガツンと・・・きました。

 信州の人から50年後の子供たちにも見せる映画を作ってほしいと依頼された大林監督。しかし、50年後に日本はどう変わっているかわからない。戦争の世紀でもあった20世紀が繰り返されることはないなどと、誰が断言できようか・・・世が平和であり、命を大切にしなければ決して観ることもできない映画。そんなスタッフの願いもひしひしと感じられる内容でした。

 キルケゴールの哲学書『死に至る病』や「僕は君のためにこそ死ねる」というキーワードによって、小難しさをも感じてしまいましたが、少なからず後半部分への伏線となっていることも確か。なぜこんな言葉を引用するのかと、斜め映像とともに首を傾げていたのですが、終盤にはきっちりと解決します(窪塚俊介の言葉とともに)。心と体、男と女、そして生と死の入れ替わり。プロットそのものの面白さや脇役陣の面白さ。そして大林ファンを充分に楽しませてくれるカットなど、オリジナルとは違った魅力満載です。

 斜め映像・・・坂道の多い尾道作品を意識したものなのか?などとも考えてしまうし、観客に不快感を与えながら、入れ替わった主人公の不安感を映像化したものなのか?とも考えてしまいます。ところが、白いピアノを弾く斉藤一美(蓮佛美沙子)のシーン(ここ最高!)のアングルが絶妙に合ってくるんです。不安だらけだった斜め世界が優しさに満ち溢れる瞬間でもありました。大人への過渡期に、奇異な体験を通して人の愛と優しさに触れた少年の物語。単なるリメイクじゃないところが素晴らしかった。

★★★★★

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9 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (たましょく)
2007-09-14 20:25:49
 ども、たましょくです♪

 オリジナルをちゃんとチェックをしたことが
なかったので、ほぼ何の知識もないままだった
のですが、かなり泣かされた作品でした。

 笑いと切なさと清々しさが胸の中をスーと駆
け抜けてゆく感じがしました。
みたかったなぁ (祐。)
2007-09-15 09:50:51
上映一週間は短すぎました。

kossyさん ★5つとは・・・・ 気になります。
賛否両論 (kossy)
2007-09-16 16:30:49
>たましょく様
正直言って、オリジナルでは泣けません(笑)
受ける印象が全く違うリメイク作品となっていました。こんなのもありかな~などと、途中までは冷静に観ていたのですが、訴えてくるものがありましたよね。
ジュブナイルとひと言で片付けてしまうにはもったいない。内容の濃い作品でしたね~

>祐。様
実は賛否両論。
お涙頂戴の難病ものと片付けられてしまうことも多々アリ。でも、ちょと違うのです。
簡単に死を選んでしまうことの愚かしさ。子供たちの未来を願う監督の優しさがにじみ出ているような作品でしたよ~DVDでも充分なので、ぜひご覧あれ。
ターゲット (Aki)
2008-02-02 01:42:26
オリジナル当時は主人公世代、今は親(清水サン)世代です。

オリジナル同様、イレカワリにより、性の違い、相手を自分として思い遣ることに加え、絶望・死・生・希望も問い、世相を反映し、哲学も引用、深い!

しかし、50年後の子供達・主人公世代向けとしては、詰め込みスギ観があり、難解。

自分同様、相手も誰かの親・子・孫・家族・友人・恋人。

立場が変わると役割も代わり、よく知っている親ですら、知らない顔を見せる。

いつ、なぜ、死ぬのか、運命、寿命、わからない。

命は自分だけのモノではなく、責任・想い・愛の継承。

本質を見る。

希望の描き方に至っては、大人・・私には難しい(汗)

哲学 (kossy)
2008-02-02 08:40:50
>Aki様
あまりにも観ている人が少ないことに驚いておりました・・・オリジナルより暗いせいかな~
たしかにキルケゴールなどという難解な哲学者を引用したのは失敗なのか・・・俺は無視してましたけど。

結構深い物語となってましたけど、難病モノが嫌いな方には評価が低そう。それをプロットでどう生かすのかが上手いと思いましたけどね。
君のために生きる (祐。)
2008-03-23 20:04:54
「君のために生きる」と言うメッセージの割には、ピアノを弾く事を止めるのはよくわからない設定でした。思い出にすることが心の中で行き続けることなのだろうか。
信州の秋の気配と坂道の尾道の融合には、懐かしい気がしました。
尾道 (kossy)
2008-04-04 08:06:42
>祐。様
長野県に頼まれて作った映画。それに応えたのが「転校生」という題材だったわけです。
つじつまが合わない部分もあるんだろうけど、これもオリジナル『転校生』を知ってる人向けに作ったためかもしれませんね。
信州へ旅したら、やっぱり蕎麦!
尾道も行ってみたいけど、やっぱり車でも行ける長野あたりがいいなぁ・・・
Unknown (masa)
2008-08-03 02:42:02
私は昔の転校生を知ってみました。
あの当時は中学生だったせいか純粋な気持ちで見れた私がいます。
今回のリメイク作品を知ってその当時の自分の感動を思い描きながら見ましたが。。。。。。どうしても納得が逝かないのです。。。
なんで彼女を【死】で終わらせたのか。。。
【死】に対しての感情は、決していい終わらせ方ではなく、私の中ではリメイク作品ではなく盗作でしかなく思えてなりません。
監督はお涙頂戴作品を作りたかったのですか?
死に直面している人は沢山います。
この作品はどのような人に対して見てもらいたい作品なんですか?
どれを取っても解らない仕上がり方でがっかりです。
長野県 (kossy)
2008-08-05 11:29:50
>masa様
長野県からの依頼で作られた“ご当地映画”というのが作られたきっかけ・・・単なるセルフリメイクだと面白くないから、かなり変更したのだと思います。
死んでしまう結果になったのは、簡単に生き返ってしまう作品が多いために、逆に命の大切さを訴えたかったのだと思います。それとも幽霊とかファンタジー作品から監督自身が脱却したかったのか・・・ううむ。

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