徒然刀剣日記

刀剣修復工房の作品・修復実績と刀剣文化活動のご紹介

研ぎ出し鮫鞘の拵え

2010-11-27 14:32:22 | 拵工作
ついに完成しました!
鮫皮の研ぎ出し鞘の拵えです。



この拵えは、今年製作した拵えの中で1~2を競う労力と時間をかけて作成しました。1月にご依頼をいただいてから、完成までに11ヶ月の期間を要した訳ですが、何とか納得のいくカタチに仕上がりました。
ご依頼時にオーナー様が、わざわざ遠方から上京いただいたこともあり、出来るだけご要望にお応えしたいという気持ちをこめて工作しました。



ご依頼時は時代のある白鞘に入っていました。常寸のお刀で、寛文体配の好ましい一振りです。
ハバキは接着面が剥離し機能をなしておらず、当初ハバキを新規作成される旨のお考えでしたが、時間も費用もかかるので修復することをご提案しました。
刀身は・・・というと、反りの浅い細身ながらしっかりとしたお刀です。早速上の出来を拝見すると刃中の働きが面白く、直刃を基調に打ちのけやら二重刃くい違いやらと実に好ましい働きが見えます。まず古刀と感じながら下を見てみると、時代偽名はともかく、やはり大刷り上げのお刀でした。本来は腰反りの長大な太刀であったことが想像されます。三原と見るも、もう少し時代が上がるかも知れません。



刀装具は、私が気に入った品のいい物をチョイスしました。



今回、オーナー様の意向を最大限考慮し、鮫の研ぎ出しを行いました。鮫皮の加工は想像以上に根気と時間がかかります。新作の鞘で鮫の研ぎ出しをほとんど見かけないのは、江戸時代と違って職人の工賃が価格に反映してしまう事情が背景に考えられます。
実際に、何度も手の皮がボロボロになり血がにじむ有様で、治療代だけでご依頼代金を相殺してしまうのではないか?とすら思いました。

柄なりの整形時には、拵え全体のバランスを見ながら微調整を加え、出来るだけ存在感を強調できるような比率に仕立てます。もちろん、実用性を考えなければなりませんので、強度と使用感の良さを損なわないために度重なる調整作業を繰り返します。

そして、完成!
後は納品を待つばかりです!

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