カワセミ側溝から (旧続・中岳龍頭望)

時に散歩。時に引きこもり。好きな言葉は「のこのこ」。

運転中に解決できることは限られている   オン・ザ・ハイウェイ その夜86分

2017-03-05 | 映画

オン・ザ・ハイウェイ その夜86分/スティーブン・ナイト監督

 仕事を終えて帰ろうと車に乗り込む男。服装から土木作業員というのは分かる。しかし車はBMWで、まあ、そういう人は居ない訳では無いが、何となく違和感がある、という感じ。信号で止まって、青になって後ろのトラックからクラクション鳴らされてもなかなか発進しない。ウインカーを上げる方向を逆にして、帰る家とは逆のハイウェイに乗る。それからはずっと電話のしっぱなし。急いでいるはずだが、どんどん車を抜くでは無し、むしろ安全運転っぽいノロノロ感があった。電話したり書類見たりしながら運転だから仕方が無かったのかもしれないが。
 明日は会社や自分のキャリアの中でも最大級のデカい仕事が控えている。男はその仕事のコンクリ打ちの責任者である。これまでも実績もありそう。信頼も厚い。しかし彼は一年前の仕事での出張の折に一度だけ仕事関係で浮気した。仕事の終わりに浮かれていたのと、少し酔っていたらしい。関係はその一度きりだが、女は妊娠し、今夜予定日より早く破水したという。一人で子供を産ませるには心配で、また男の道義的な責任上、放っておくことが出来ないらしい。男の父親は自分ら子供たちに対しては、そのような責任感のかけらも無いような人間だったらしい。男はそのことに引っかかり、自分はそうではないという証明をしたいらしい。
 しかしながら問題は、男はしあわせな家庭をもっており、実は今夜だって家族一緒にサッカー観戦をする約束をしていた。息子二人は既に興奮しているし、妻だってユニフォームに着替えて、ビールを飲む食事もちゃんと用意している。でも自分は不倫相手の出産に立ち会うために高速道路にいるのである。そうしてそのことは、初めて電話で妻に伝えた。
 高速道路を走っている車の中で、あちこちに電話を掛けたり受けたりして話をするだけの映画である。驚くほど他には何にもない。実際そういうような設定の一人芝居というのは結構あるけど、やはりこれは舞台劇の影響だろう。内容的にもその会話だけでさまざまなドラマが展開されていくのが分かるし、十分にドラマチックであるとは思う。まあ、高速を運転している時に、こんなドラマを勝手にやられるというのはかなり迷惑そうな話だけれど(単純に危ないので止めてほしい)。
 映画としてどうなのかというと、はっきり言って成功しているが、だからと言って特に面白い訳でもない。目新しいということでもないし、もの凄く演技が光っているということでもない。さらに言わせてもらうと、やはり設定には無理があり、説明が不十分である。何より重大な仕事を控えている割に準備が不十分で、その夜にやるべき仕事とは思えないことばかりをやっている点で、その人の能力がかなり怪しく見える。責任感が強いはずがいい加減では話にならない。また一度きりの不倫相手をよく知らないだけでなく愛してもいないというのもかなり無理がある。いくら父親を憎んでいたからといって、はっきり言って自分の場合とはまったく関係がない。無理にバックミラーに父の亡霊を見たとしたら、単に病的であるだけのことで、もっと早く精神科に相談すべきだったろう。道義的に感じるものがあるとしても、だからそれは残念ながら優先順位の高い問題では無い。相手が生みたいと言っていた時点である程度の話し合いに会いに行くべきで、その折に何かもう少し具体的に自分の行動を決めるべきだったろう。さらに妊娠に立ち会うというときに電話で愛する妻にその旨を説明するタイミングに選んでいることに、まったく情けなさを通り越した愚かさを感じる。相手がどう思うのかということを考えず、自分の考えを分からせようとしていて傲慢ではないか。自分のやりたいようにふるまうということが自分なりの正義であったとしても、それは家庭を顧みなかったであろう自分の父親の性格と限りなく同じようなエゴではなかろうか。
 まったくひどい男もいたもんだ、という話ではないはずだが、日本人からすると、普通にそんな感じではなかろうか。まあ、あり得るシチュエーションかもしれないが、もう少し考えてものを言う人がほとんどだろう。やはりこの世ですべてが破綻したのだと、僕なんかは願いたいくらいだ(流れ上、たぶんそうならないと示唆されていたが)。付き合っている周りの人は、本当に不幸な夜だったろう。
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