カワセミ側溝から(旧続・中岳龍頭望)

好きな言葉は「のこのこ」。好きなラジオ中継「相撲」。ちょっと苦手「煮た南瓜」。影響受けやすいけど、すぐ忘れます。

孤独な少年の奮闘   狩人の夜

2017-01-24 | 映画

狩人の夜/チャールズ・ロートン監督

 銀行強盗殺人を犯した父親が盗んだお金を、子供たちだけに誰にも言わないように、と託して逮捕される。同じ刑務所の部屋で、未亡人ばかり連続して殺して金を奪う殺人鬼の男がちょうど盗難車の刑で入っている。強盗殺人の父はそのまま絞首刑になるが、連続殺人犯は釈放され子供がありかを知っているだろうお金を目当てに未亡人宅に近づく。結局まわりの勧めもあって、子連れ未亡人はこの男と結婚する。子供たちは死んだ父親の誓いを守ってお金にありかをなかなか言わないが、母親は殺されてしまい、自分らも絶体絶命の立場になり、ボートに乗って逃げるのだが…。
 とにかく殺人鬼で偽伝道師役のロバート・ミッチャムがいやらしく恐ろしい。こんなに嫌な人間が世の中にいるのか、という嫌悪感が終始漂う。しかし多くの人は表面の神に仕える伝道師の姿にころりと騙されていく。もちろんこの善悪の人間のギャップが大きく、観ているものの心がかき乱されるという展開である。最終的には民衆も大変に怖い訳だが、出てくる者たちが普通のようでありながら皆異常であるような展開が、スリラーとして評価の高い映画となった理由かもしれない。子供の立場で追い込まれ逃げまどう場面は本当に怖かった。まあ、後の部分はなんとなく滑稽なところもあるんだけれど…。
 強盗殺人の父親は、死刑になるほど悪い人間だったが、善良な子供たちにとっては良い父だったのかもしれない。母親も最初は未亡人として子供を一人で育てようとしていたのだが、まわりの勧めや、魅力的な伝道師の姿の男にだまされるということになる。子供たちの妹の方は、やさしい新しいパパに気を許している。さらに途中で逃げ込んだ孤児を預かる女性の家にいた年頃の娘は、伝道師に心を奪われてぞっこんである。そういう環境の中にあって、少年だけは、終始正気を保っている訳だが、本当に理解者などはいないのだ。
 恐怖というものの図式として、これは後に影響が大きかったというのは分かった。キリスト教的な背景は、残念ながら僕にはよく分からなかったが、恐らくそういうことも含めて、西洋人はおののいた映画なのではないだろうか。残念なのは興業的は大失敗だったらしく、監督はその後映画を撮らなかった。確かに妙な映画だが、カルト作品として残るのかもしれない。
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