続・中岳龍頭望

脱力系から熱血系へ。ま、志はということで…

本に魅せられた(時に呪われた)人々   書物愛(日本編)

2016-10-31 | 読書

書物愛(日本編)/紀田順一郎編著(創元ライブラリ)

 本にまつわる小説を集めたアンソロジー。主に古書店で起こる事件というか、その周辺の人々を描いた作品が多い。短編が9編組んであるが、主に古い本に執着する人々の、その理由を謎解きするものが多かった。何故か持っているはずの同じ本ばかり買いあさる老人のその理由を追った話だとか、詩の本を集めてその類の研究をするかたわら、詐欺も同然に本を買い集める手口とは何だとか、高価な古書を万引きしておきながら、徐々に盗んだ本を返してくれる女の話など、それぞれに興味深く面白かった。
 個人的には本は日常的に買うが、それが古書だから買うということは無い。結果的に古本を買う割合は多いけれど、それは単に安価だからに他ならない。値段を気にせず新刊を買いつづけられるだけの財力に自信が無いのもあるし、買った本を全部読むわけではない。資料として買わざるを得ないこともあるし、事実上送料だけで手に入るものを新刊で買う必要性も特に感じない。作家にとっては喜ばしくないことであっても(収入減の原因だろうし)、事実として流通が成り立っているので、これを論じても仕方のないことだろう。文字は読めたら事が足りるので、こうなってしまった。しかし古本が溜まること自体は〈収納には困るが)、ささやかな喜びであると思っている。
 ところでしかし、そのようなことで、本というのは商売にもなるし、中には高価なものも存在する。噂では聞くような稀覯本というのもあるし、神保町などに行くと、初版本専門店が軒を連ねて壮観である。ほとんどその価値が分からないにせよ、そういう趣味があることは、なんとなく理解できる。コレクターというのはそういうものだし、何しろ書籍の多様を見るにつけ、そのような宇宙があってしかるべきである。基本的には読んでみなければ面白さは分からないとはいえ、持っているだけでしあわせになるような(個人的にだが)本というのはあるようだ。僕はコレクターではないが、人と話をしていて話題になっているその本をお互いに持っている場合など、なんとなく嬉しくなることはある。本当の性格など分からないけれど、いいやつかもしれないな、と思う。少なくとも同じ本を手にした仲である。仲間として得難いではないか。
 本を買うような経験のあるような人には、このような世界があるということも含めて、楽しめる作品集だろう。
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