ズートピア/バイロン・ハワード リッチ・ムーア監督
ディズニー・アニメ。草食動物と肉食動物が共に暮らす世界。そんな中初めてのウサギの警察官が誕生する。最初は駐車違反の取り締まりしかやらせてもらえないが、連続行方不明事件が発生し、2日で解決しなければクビになるという奇妙な条件で捜査に挑むのだが…。
アニメでそういう設定なんで仕方がないが、要するに動物の元の素性があって、体力などに力の差があるわけだ。そこで自ずと職業が限定されるらしい。これは人間社会のメタファーでもあるが、しかしよく考えてみると、肉食系は結局何の肉を食っているか不明だし、少し偏見が強いような気もする。ウサギと一緒にいるキツネも重要な役柄だが、これなんかは野生の特性というより、西洋社会の偏見による動物への決めつけでしかない。だから了解が早いというのは分からないではないのだけれど、僕には少し底が浅いようにも思われた。
しかしながらそうはいっても、物語自体はそれなりに練られてはいる。肉食動物は暴力の象徴だが、その凶暴性のために、大衆である草食動物の不審もかってしまう。しかしこれは実は陰謀であって、大衆を操作する指導者が仕組んだ罠でもあった。筋書はやはり人間社会のメタファーに見事にハマってはいる訳で、これに感心する人もいるに違いない。子供向けというだけにとどまらない作品に仕上がっているという訳だ。
日本のキャラクターとは微妙に違うデザインを楽しむ、というのはあるかもしれない。日本のアニメは、もともとディズニーなどの絵を手塚治虫らが真似をしてこしらえてきた歴史があるのだが、段々とその姿を変えていって、今では全く違う世界を形成しているように見える。だから日本のアニメの初期は、むしろディズニー作品などになんとなく似ている訳だが、結局原点から発展した形となると、やはりそれは米国に生き残っているのではないかとも感じた。それは文化的な土台の違いだろうけれど、改めてこのような絵をみていると、本当に違うものだな、と思う訳だ。考えてみると、物語の在り方も、ずいぶん以前から繰り返し語られるアメリカン・サクセスの原点に忠実である。自由の枠のようなものが、ひょっとすると彼らを制約するものとして存在するのかもしれない。