北朝鮮の別の顔

北朝鮮ほど、表舞台と楽屋に格差のある国はないだろう。もっともその滑稽で哀れな表舞台も、とっくに幕がぼろぼろであるのは隠しようもないのだが。
帚木逢命さんの著書「受命」では、その楽屋の中でも外国人が訪問できる場所や国威を示したい建物、それにひきかえあまりのも悲惨な庶民の生活が、まるで主人公の津村が著者自身の体験記のように描写されていた。北朝鮮の首都、平壌を流れる大同江の両岸に主体思想塔などの施設が並び、川の中州に建つ洋角島ホテルは、北朝鮮の印象を裏切る豪華できらびやかなありさまに、私だけでなくおおかたの読者は驚くだろう。地下にはカジノさえある。

雑誌「選択」の今月号では、意外な北朝鮮のふたつの顔が紹介されていた。
ひとつは、「受命」でも登場していた羊角島ホテルのように、中国人ビジネスマン対象の中国人の女の子まで人民元で購入できる享楽地や、パリより大きいと誇る凱旋門の外貨ショップや地域市場。３階建ての外貨ショップでは、なんと我家にもない日本製の薄型テレビやデジカメ、自動車用品、ブランド品などあらゆる商品が並んでいるという。この地域は日本からの帰国者が、親類からの円の仕送りで日本と変わらない消費生活をおくれるようになっている。また集団農場の自留地が発展して農作物以外にも扱う商品がふえて地域広場と呼ばれるようになった市場では、安い中国製品が大量に溢れている。３ヶ月ごとに免許の更新があり、売上不振のテナントは撤退させられるという厳しさは、まさに開放された自由市場経済ではないか。けれど一般市民が極貧生活をおくっていることに疑問をはさむ余地がないことから、これは国民の中の経済的格差のひろがりを示している。ビスケット1キロが2300ウォン。市民の月の賃金が2000～5000ウォンにも関わらず、買物客はとまったかのような国営デパートとことなり、盛況だという。買物客が、「受命」に登場した軍人ばかりということもなかろう。どこかで副収入があるはずだ。

そしてもうひとつの驚くべき顔が、開城工業団地の「シンウォン」の工場内でミシンを踏む北朝鮮の女工たちの延々と続く列がうつった写真だ。いったいどこまで続いているのだろう。この開城（ケソン）工業団地は、韓国の投資により、板門店の軍事境界線から車で10分ほどの位置に、東京ドーム70個分の広さの第一期造成工事がすすみ、一部完成した試験区での写真である。「シンウォン」は5つのブランドをもつ女性服メーカーで、国内販売の17％の商品がこの北朝鮮の女工達がふんだミシンから店頭に並んでいく。エアコンも整備され、先進国並の労働環境でつくられた製品はあくまでも「韓国製」というレッテルを貼られて市場にでまわる。平均賃金は、韓国人の半分の70ドル。北当局が30％を社会保険費として徴集し、残りが労働者に分配される。韓国の現代峨山と土地公社が資本の提供、北朝鮮が労働力を拠出して一昨年スタートした団地の目的は、南北の共栄。現在7000人が働いている。そんな兄弟の”美談”を米国は韓国製と認めないと圧力をかけ、賃金も労働者には一部しか支払われていないと非難する。それもそのはず、100万人都市をめざし、外貨獲得の有力な手段になっている団地は、北朝鮮の蛮勇に対する経済制裁の効果の威力減退のもとになるだろう。

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８日の日中首脳会談は、北朝鮮の核実験を阻止するため日中両国が連携することで一致した。

安倍首相は、核実験について「重大な脅威で、絶対に容認できない」と強調した。胡錦濤主席は「懸念を表明する。北朝鮮が核実験を抑制するよう働きかけをしたい」と応じた。
また、安倍首相は８日夜（日本時間同）、北京市内で同行記者団と懇談し、北朝鮮が核実験を行った場合、北朝鮮船舶の入港禁止措置の拡大など追加制裁に踏み切る考えを表明した。首相は「北朝鮮が核実験を強行すれば、国連安全保障理事会で国連憲章７章に言及する決議について議論が行われる」と指摘。日本政府は「厳しい対応を国際社会と連携して取る」と語った。北朝鮮が核実験に踏み切る可能性については、「排除できない。各国と連携して情報収集するよう指示している」と述べた。（2006年10月9日読売新聞）

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この後、安倍首相は、韓国へ飛び、盧武鉉(ノ・ムヒョン)大統領との会談に臨む予定となっているそうだが、中国と韓国には北朝鮮を都合よく利用してきた国としての責任を果たす役割がある。