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「情熱大陸」大野和士・指揮者

2008-11-04 23:13:59 | Classic
指揮者、大野和士。今、マエストロ・小澤征爾についで欧米で最も注目されている日本人指揮者である。
日曜日の人気番組、「情熱大陸」に待望の登板であるが、彼ほど身をけずるように仕事、即ち指揮活動と音楽に情熱を傾けている方はそうそういないのではないだろうか。
大野氏は、ベルギー王立歌劇場(モネ劇場)の音楽監督を5年間務め、今年9月からはフランス国立リヨン歌劇場に5年間の契約で首席指揮者に日本人で初めて就任した。現在、48歳。

番組は、最初にモネ劇場での最後の演奏会になるヴェルディの「運命の力」のリハーサルに集中する大野氏を追う。彼専用の楽屋で、今でもずっとお母様の手作りと言う(←ちょっと驚き)素材は上質のコットンだろうか、アイロンが不要で着替えやすく動きやすいおなじみの白いシャツに着替える。着替えの時に指揮者特有の肩凝りに悩まされている左肩がちょっとつらそうだが、番組中「指揮者にならなかったらどんな職業に」という質問に、「マッサージ師」と答えたあたりが、ちょっとどころかかなりつらい慢性的な肩こりのようだ。誰か、よいマッサージ師がいたら紹介してやってください!・・・と思わず、お願いしたくなる。

次々と楽屋を訪問する人々やスタッフに、英語・イタリア語・フランス語・ドイツ語で相手に応じて語源を使い分け会話や指示を与えたりと、彼のようなポジションには頭脳の回転や切り替えの速さも必要と想像される。モネ劇場での最後の演奏会に向けて、リハーサルに余念がないが、瞬時に楽団員に次々とアドバイスをするうちに、汗がびっしょりとなる。音楽への厳しさを感じさせられる仕事の現場ではあるが、食事も劇場の食堂で楽団員と一緒とったりと気さくであかるい大野氏は、「彼はバランス感覚にたけ、細部にも繊細である。25年間ここで演奏してきたが、彼ほどみんなに愛された指揮者はいない」という楽団員の言葉どおりに、音楽性への信頼もあつく親しみのある指揮者である。観客が会場一杯につめかけた最後の演奏会。最後の音が鳴り止むと、観客はいっせいにスタンディングオベーションで、彼へのこれまでの感謝の気持ちとリヨン歌劇場での活躍を励ましているかのようだった。
しかし、郊外の自宅に帰宅しても、くつろぐまもなく彼は次の演奏会の準備に向けて忙しい。通常だったらスタッフに依頼するような英国での「ヘンデルとグレーテル」に向けての英訳を、自分で分厚い辞書をひきながら鉛筆で歌詞を書いていく。こうした緻密さと丁寧さ、見えない努力の積重ねが今日の地位まで彼を押し上げたのだろう。
しかもそれだけではなく、超多忙な中、しかも就任直前に大事な演奏会を控えて、日本に数日だけ帰国したのだが、その目的はこどもたちが入院する病院やお年よりの方たちの施設を訪問して、自らピアノを弾いて音楽を共有することだった。ここで思い出したのが、ちょうど3年前に週刊「AERA」で語っていた戦火のクロアチアでの演奏会でのことだった。

「音楽や音楽会は、本当にそれを必要としている人たちからは遠い」
彼のこの言葉を聞くまでもなく、私自身もずっとおりにふれ感じていたことだ。音楽を本当に必要としている人には、音楽は遠い。とんでもなく彼は多忙を極めている方だ。が、そういう方にも関わらず、こうした活動を熱心にされるのも音楽家に多い。

番組を観ていて感じたのが、大野和士さんは天衣無縫でひたむきに情熱をかけて音楽にまっしぐらな方だ。
指揮者には、アンドレ・プレヴィンやクラウディオ・アバドのように世界的な音楽家を私生活でもパートナーにする方もいらっしゃれば、小澤征爾さんのように100%美貌の女性を妻に娶る方もいらっしゃる。大野氏の奥様は、その点地味で平凡な女性で、むしろ日本的な”内助の功”を発揮される方のように見受けられる。ただ、今後益々その活動が期待される夫は、妻に対し女性としての関心が殆どなさそうなくらい忙しく頭の中は音楽で一杯のようである。

5年間指揮をするのフランス国立リヨン歌劇場では、メトロポリタン歌劇場、スカラ座、ベルリン・ドイチェオパーなど、国際的な舞台での活躍が今後も予定されている大野氏のために、音楽面だけに集中できる首席指揮者というポストを特別に新設したそうだ。指揮者は長生きしなければ双六の「あがり」までたどり着かない職業である。

■アーカイブ
・喝采か罵倒か 指揮者・大野和士「プロフェッショナル 仕事の流儀」
・指揮者・大野和士が語る音楽の本質


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