映画が好きで、ブログなる便利なツールを使いはじめて以来、観た映画に感動してはせっせと駄文を書き散らしてきたわけだが、自分の文章はつくづく単なる感想の羅列だと感じている。勿論、感想文というスタイルが格下というわけではないのだが、時にはいっぱしに批評にも挑戦してみたら、と自分を励ましたくなる。もっとも、新聞・雑誌等で拝読するプロの批評家の文章もたいしてさえないが(定年退職された読売新聞の映画担当記者・土屋好生さんや川村二郎氏は好きだったが・・・。)、要するに感想と批評は、違う次元で映画を語らなければいけない。そして、多くの批評家がにぎわうこの業界で、数少ない批評だけでなく映画の評論ができるが、この蓮實重彦さんである。
蓮實さんといえば、何かと高尚な言葉で難解な論説をされる方、というイメージがある。確かにそのようなイケスカナイ・キャラの片鱗は窺がえるのだが、本書に関しては大丈夫、心配ご無用。映画の上映会やシンポジウムでの講演会をまとめた本書は、観客や受講生対象の語りかけの体裁をとっているためか、とてもわかりやすく、時々飛ばすジョークもちゃんと?笑える。それに、蓮實さんはご自分でも告白しているが、もともと貧乏性で優れた映画の客入りが悪いといてもたってもいられなくなり、いらっしゃ~いと呼び込み役ばかりしてきたおじさんなのである。
この蓮實さんが、最近の映画の危機的状況を訴えているのが、「モンゴメリー・クリフト問題」である。映画のハリウッドの助監督が、モンゴメリー・クリフトを知らなかった事実をどのように見るか。そして日本においては、「『サイコ』20%問題」なる、大学の映画の講義で『サイコ』の鑑賞歴のある学生が20%しかいなかったという調査結果である。少なくとも平均的な人よりも映画製作を仕事にしている人や、映画に興味をもって受講している学生ですらこれだ。高校に入学した時のクラスでの自己紹介で昨年は映画を100本観たと言った元同級生もいた。彼は、W大学法学部に進学して今では映画とは無縁な会社員。そういうある意味つわものがかってはいたのに、映画に関わる人ですらモンゴメリー・クリフトを知らないなんて、由々しき問題じゃん。これはもはや若者だけの問題ではなく、社会の教育の力が全体的に弱ってきている汎地球的問題との嘆きに、すっかり私も同調して自らも深く反省してしまった次第である。(蓮實センセイ、イタイところをついている。)
なんたって蓮實センセイの講義は、ジョン・フォード映画におけるただ”ものを投げる行為”や溝口映画に度々登場する舟、小津作品の女性の振り払う仕草や映画の中の帽子が果たす役割や意味付けを次々と解説していく。単なる映画のマニアックな知識をこえて、繰り返しすら意識できないおおかたの批評家にはとうてい到達できない論の域でこのおじさんはやすやすと知的に遊んでいる。こんな細部の記憶力は映画を愛するがゆえに手厳しく、現代のスピルバーグに代表されるアメリカの映画監督は、顔に影が落ちていることから女優を綺麗に撮ることを完全に忘れていると辛辣である。特にマイケル・ムーア監督の突撃インタビュー方式を下品きわまりないとその名前する口にすることすら不愉快と一刀両断のもと突き放している。女優の好みも含めてかなり好き嫌いがはっきりしているが、論理の刀は鋭くも正確で、そのご意見と感想に賛同できるかどうかは別として、やはり傾聴に値する。
テクストととして登場する映画は、1930年代から60年代といささか古く、殆どの映画が私にとっては未経験。それでも、最後まであきることなく鑑賞できた蓮實劇場の最新作。いささかそっけない看板を前に、私も一緒にこの劇場へのよびこみをいたしますか。「いらっしゃ~い」と。。。
蓮實さんといえば、何かと高尚な言葉で難解な論説をされる方、というイメージがある。確かにそのようなイケスカナイ・キャラの片鱗は窺がえるのだが、本書に関しては大丈夫、心配ご無用。映画の上映会やシンポジウムでの講演会をまとめた本書は、観客や受講生対象の語りかけの体裁をとっているためか、とてもわかりやすく、時々飛ばすジョークもちゃんと?笑える。それに、蓮實さんはご自分でも告白しているが、もともと貧乏性で優れた映画の客入りが悪いといてもたってもいられなくなり、いらっしゃ~いと呼び込み役ばかりしてきたおじさんなのである。
この蓮實さんが、最近の映画の危機的状況を訴えているのが、「モンゴメリー・クリフト問題」である。映画のハリウッドの助監督が、モンゴメリー・クリフトを知らなかった事実をどのように見るか。そして日本においては、「『サイコ』20%問題」なる、大学の映画の講義で『サイコ』の鑑賞歴のある学生が20%しかいなかったという調査結果である。少なくとも平均的な人よりも映画製作を仕事にしている人や、映画に興味をもって受講している学生ですらこれだ。高校に入学した時のクラスでの自己紹介で昨年は映画を100本観たと言った元同級生もいた。彼は、W大学法学部に進学して今では映画とは無縁な会社員。そういうある意味つわものがかってはいたのに、映画に関わる人ですらモンゴメリー・クリフトを知らないなんて、由々しき問題じゃん。これはもはや若者だけの問題ではなく、社会の教育の力が全体的に弱ってきている汎地球的問題との嘆きに、すっかり私も同調して自らも深く反省してしまった次第である。(蓮實センセイ、イタイところをついている。)
なんたって蓮實センセイの講義は、ジョン・フォード映画におけるただ”ものを投げる行為”や溝口映画に度々登場する舟、小津作品の女性の振り払う仕草や映画の中の帽子が果たす役割や意味付けを次々と解説していく。単なる映画のマニアックな知識をこえて、繰り返しすら意識できないおおかたの批評家にはとうてい到達できない論の域でこのおじさんはやすやすと知的に遊んでいる。こんな細部の記憶力は映画を愛するがゆえに手厳しく、現代のスピルバーグに代表されるアメリカの映画監督は、顔に影が落ちていることから女優を綺麗に撮ることを完全に忘れていると辛辣である。特にマイケル・ムーア監督の突撃インタビュー方式を下品きわまりないとその名前する口にすることすら不愉快と一刀両断のもと突き放している。女優の好みも含めてかなり好き嫌いがはっきりしているが、論理の刀は鋭くも正確で、そのご意見と感想に賛同できるかどうかは別として、やはり傾聴に値する。
テクストととして登場する映画は、1930年代から60年代といささか古く、殆どの映画が私にとっては未経験。それでも、最後まであきることなく鑑賞できた蓮實劇場の最新作。いささかそっけない看板を前に、私も一緒にこの劇場へのよびこみをいたしますか。「いらっしゃ~い」と。。。
おっしゃるとおりですが、映画の批評に関してはプロよりもブロガーの方が最近おもしろいと感じる今日この頃です。。。
TBさせていただきました。
>確かにそのようなイケスカナイ・キャラの片鱗は窺がえるのだが、
ここに受けましたww
そういうとこも含めてなんか憎めないオジさんなんですよね蓮實せんせい
コメントもありがとうございます。
>ゴダールにノンという会の事務局長をやっている話とか(笑)
私もここに受けました。(笑)
この本は、映画好きの方に革新的な刺激を与えてくれると思います。
おおいに宣伝しましょう!^^