千の天使がバスケットボールする

クラシック音楽、映画、本、たわいないこと、そしてGackt・・・日々感じることの事件?と記録  TB&コメントにも☆

広告

※このエリアは、60日間投稿が無い場合に表示されます。記事を投稿すると、表示されなくなります。

「ベン・バーナンキ 世界経済の新皇帝」田中秀臣著

2006-02-23 23:31:58 | Book
【ワシントン=久留信一】米連邦準備制度理事会(FRB)は二十二日、ファーガソン副議長(54)が四月二十八日付で辞任すると発表した。バーナンキ議長の下で初めて開かれる三月二十七、二十八日の連邦公開市場委員会(FOMC)には出席しない。(中略)
同副議長はグリーンスパン前議長の側近として知られる。バーナンキ議長が持論とする「インフレ目標論」には慎重な立場で、突然の辞任は路線の違いが背景にあるとみられる。(2月23日東京新聞より)
--------------------------------------------------------------------------- 

新聞の片隅にひっそりと掲載されたFRB副議長の辞任の報道であるが、グリーンスパン前議長が辞任表明した時は、ロジャー・ファーガソンが後任の本命だった。しかし、今ではすっかり忘れ去られた感もある。それと対照的にベン・バーナンキの名前が新聞に載らない日はない。それくらい、FRB議長というポストが果たす役割、影響は世界的に大きいのである。なにしろ「世界経済の新皇帝」というタイトルである。また本書の奥付には、
「21世紀の世界を支配する男、バーナンキ。日本の大失敗の要因を熟知する彼は、われわれをどこに連れて行くのか-。」と記されている。”どこへ”というのは今後のお楽しみとして、新皇帝とはいかなる人物か、市場と対話を続けて柔軟なマエストロとして活躍をしたグリーン・スパンとは異なる、インフレターゲット政策とはいかなるものか、多少なりとも知っておくべきだろう。

バーナンキ新議長の舌鋒は、容赦がない。日銀の稚拙な経済政策を評して、「日銀はデフレを退治するため、ケチャップを買え。(政策審議委員を)1人を除いてみんなジャンク。」と日銀派を凍りつかせる爆弾発言をする人物である。しかし凍り付いているのは、ここ15年ほどの失われた日本経済そのものではないか。GDPデフレーター(名目GDP/実質GDP)の下落こそ、バーナンキが最も恐れるデフレの正体である、大停滞の元凶である。

デフレが何故悪いのか。安いていいものが買えるからそれでも良いのではないか。ところが、借金やローンの実質的な返済額が増加し、人件費のコストも高止まりと、”実質的”に企業や家計の負担は増加しているのである。だから、日本経済停滞を「金融政策の過度の引き締め」、後半は「金融政策の対応の遅れ」と2000年にバーナンキは言い切っている。彼には、長期停滞の原因を日本の構造改革に転換する日銀の言い訳は、通用しない。景気回復のために行われる通貨膨張政策であるリフレーションを提唱する岩田規久男氏や著者らリフレ派は、ゆるやかなインフレで経済を運営すべきだと考えている。さらにバーナンキが大停滞の処方箋として提唱するのが、インフレターゲットの導入プラス物価水準目標というあわせ技である。

著者の田中秀臣氏が大学院に進学して最初に読んだ論文が、バーナンキの「大恐慌の伝播における金融危機の非貨幣的要因」(1983年)だったという。その後15年に渡ってバーナンキ経済に魅了され、彼を”皇帝”という称号を与えながらも、日本経済の”教師”としての活躍を願っている著者による本書は、バーナンキ経済のエッセンスと、ケインズ経済学、新古典派経済学との比較による経済学入門のテキストという格好の良書でもある。オーソドックスで教科書的な日銀の政策をすりこまれてきた私にとって、このインフレターゲットという名目でなく実質的な提案は、なかなか説得力がある。エコノミストには様々な論客があり、また確かにバーナンキが言うように、金融政策は自動車の運転とは違う至難の技が求められる。そして実際今回辞任するFRB副議長のように、異なる路線もある。ただ日本という国において、米国のFRB議長の走る路線と全く違う路線を走れるという時代ではない。

日本銀行が政治から独立して、「円高によるデフレ緩和」というグリーンスパンとバーナンキからの贈物を、夢と消えないようリフレ政策を実行すべきなのだろうか。
『本』 ジャンルのランキング
コメント (2)   この記事についてブログを書く
この記事をはてなブックマークに追加
« 「FACTA」まもなく創刊 | トップ | 「マネー 思惑の激突」NH... »
最近の画像もっと見る

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
御礼 (econ-econome)
2006-02-25 13:03:00
TB頂きどうもありがとうございます。

本書は分かりやすくて良い本ですよね。日銀にとっては耳が痛い話でしょうが、政府と日銀が協力(アコード)しつつ、適切な政策を行って欲しいものですね。
コメントありがとうございます (樹衣子)
2006-02-25 13:26:48
”新皇帝”と最上級の称号を与えた田中秀臣氏は、このFRB議長というポストへの力なのか、ベン・バーナンキ氏へのエコノミストとしての業績への賛美なのか、興味をもって読みました。

一般的な教養書として広く読まれるべき本だと思ったのですが、ブログを検索すると書評を書かれているのはプロの方ばかりで残念です。

都留重人さんの訃報に接し、まだご存命だったと驚きましたが、確かにエコノミストは長生きですね。^^

コメントを投稿

Book」カテゴリの最新記事

トラックバック

この記事のトラックバック  Ping-URL
ブログ作成者から承認されるまでトラックバックは反映されません。