千の天使がバスケットボールする

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モーツァルト :オペラ『魔笛』

2008-09-28 23:02:26 | Classic
モーツァルトって、、、やっぱりアインシュタイン以上に天才だ。
モーツァルトの音楽を聴くといつもそう感じるのだが、この感想の中には、純粋に音楽のみを楽しむだけでなく、ちょいと生意気にも批評家の目線が入っている。しかし、このオペラは誰が作曲したのか関係ない、作品の解釈も不要だ!、ただただオペラの『魔笛』が、それだけが素晴らしいのであり、その音楽の調べにどっぷりとひたればよいのだ。聖徳学園創立75周年記念演奏会の『オペラ』を聴き、私は泣いた。。。

これまで、何度も聴いてきて、何度も観てきた『魔笛』。ようやく、私はその魅力に覚醒しつつあると言えよう。
演奏途中で、2年前に観た1975年製作イングマル・ベルイマンの映画『魔笛』の幕開けを思い出していた。ベルイマンは、序曲の音符にあわせるかのように、次々と、老人、若い顔、こども、娘、男性、白人、黒人、東洋人、日本人、インド人、アフリカ人・・・と様々な年齢、多くの人種の顔を映していた。ここにベルイマン監督の意図と『魔笛』の素晴らしさがこめられていたのだった。そうだったのか。そして、昨年のケネス・ブラナー監督による映画化も、何故、彼が『魔笛』を選択したのか、本当に意味で実感したのだった。

『魔笛』で歌われているのは、裏切りあり、策略あり、憎しみがあり、争いがあり、それでも神話から紛争が至る現実の今の世界においても、最も大切なのは普遍的でシンプルな人々の愛である。大げさに言ってしまえば、人種、国籍、年齢をこえた人類愛なのだ。タミーノはパミーナの愛情を支えに試練を乗り越え、パパゲーノとパパゲーナは出会って恋に落ち、これからたくさんこどもを産もうと抱き合って歌い上げる。時代がどんなに移り変わろうとも、単純なところに普遍性があり、モーツァルトの音楽が永遠に人々に愛される由縁である。

会場がサントリーホールだったので、私も初めてのホールオペラ形式。通常のオペラに比較して、軽めで堪能できないのではないかという懸念は、全くの不要だった。会場内はいつもより照明を落とし、フロアに設置されている危険防止の足元のランプのほのかな明かりがワインヤード式の客席内に点在し、幻想的な印象すら与えてくれる。平素はパイプオルガンが見える所にスクリーンが置かれ、場面にあわせてパウル・クレーの絵画が暗闇の中に次々と浮かび上がる。鮮やかな色彩の絵画に、シンプルなデッサン画。特に『忘れっぽい天使』は、大学を卒業する時にサークルの後輩たちがプレゼントしてくれた思い出の絵である。舞台セットは豪華にはできず、演技や演出もむしろ控えめにならざるをえないホール形式だが、クレーの絵画と『魔笛』の音楽が驚くくらい雰囲気があって、美術好きな私には格別な演奏会になった。

パミーナ役の島崎智子さんの声が清楚で美しく、またパパゲーノ役の青戸知さんは、さすがにベテランで軽妙な役柄を好演。重要なフルート奏者は高木綾子さんと、オーケストラはプロの演奏家の名前が多いようだったが、演奏もうまかった。降り出した小雨の中、急ぎ足で会場を後にしても、余韻の残る愛の調べは、”魔法”をかけられたかのようにいつまでも心の中で響いていた。

------- 2008/9/28 サントリーホール -----------------------------

指  揮:高橋大海
■演  出:十川 稔
■公演監督:高 丈二
■出  演:
黒木  純(ザラストロ)
島崎 智子(パミーナ)
志田 雄啓(タミーノ)
加賀ひとみ(パパゲーナ)
青戸  知(パパゲーノ)
宮部 小牧(夜の女王)
米谷 毅彦(モノスタトス)


・聖徳大学音楽学部記念オペラ合唱団
・聖徳大学川並記念オーケストラ

■アーカイブ
・イングマル・ベルイマン監督:映画『魔笛』
・ケネス・ブラナー監督:映画『魔笛』
・カナダ・ロイヤル・ウィニペグバレエ団『魔笛』


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