定年退職からの楽しき日々♪♪

六十歳で定年退職し、テニス・ピアノ・料理などの趣味にいそしんでいます。折にふれてエッセイを書いています。

老年のツール

2017-05-05 23:25:08 | 日記
 1月中旬、93歳の母が直腸脱になり、3月初旬に手術をした。術前の主治医の説明の通りで、術後3週間で再発し、症状は改善されていない。このことがいつも頭の片隅に意識されている。

 アメリカではトランプ大統領誕生で次々と大統領本位の命令が出され、大混乱が起こっていることが報道され、他国のことながら気が重い。更には北朝鮮のミサイル発射、核開発をめぐって米国と北朝鮮の対立が急速に高まっており、戦端が開かれると核爆弾が日本に落とされる恐れもあるという。

 こうしたことが重なり、これまで比較的充実した楽しい日々を送っていたのと反対に、書斎にいても楽しい気分になれず、うつ的な状態になりがちとなっている。このようなストレスがあると胃の調子がおかしくなり、食欲も落ちてくる。
「村上さん、なんだか元気がありませんね」
3か月ごとに受診している歯のクリーニングとチェックアップの時、歯科医師から言われてしまった。

 これではいけない。何か打つ手はないものだろうか。しばらく考えて、どうも家の中にいると、このような気分を増進しこそすれ、何ら改善してくれない、と思い至った。答えは「家の外」にあるのではないか。

 1年間苦しんできたテニス肘がようやく緩和してきたので、努めてテニスクラブに行くことにした。クラブに行ってみると、不思議なことに気分がすうっと軽く明るくなる。クラブの友人たちがみんな楽し気なので、その陽気さが私に伝染するようだ。クラブの豊かな植栽、花、樹木、青い空、太陽の光も脳内の抗うつ物質を分泌させてくれるようだ。朝方、テニスクラブで爽やかな気分になると、帰宅後も愉快な気分が続く。

 更に分かったことは、家にいてもピアノを練習していると、憂鬱な気分が消えるということである。このところベートーヴェンの交響曲「運命」、「田園」、ヴィヴァルディの「四季」に取り組んでいる。とてつもなく難しい指遣い、ペダル操作に全神経を傾けていると、気分がしゃきっとし、曲の迫力が気持ちを充実させてくれる。

 テニスとピアノが気持ちを明るく愉快にしてくれることを痛感して、
(身の回りに生活を楽しくしてくれるものには他にどんなものがあるだろうか)
と思い至った。

 長年の習慣で、エクセルファイルを作って整理してみることにした。先ずは音楽関係のハードウェアが役に立ちそうだ。2年前に株・リート投資益で購入したドイツ、ブリュートナー社製のピアノ。さらに、会社を退職した時に頂いた餞別で7年前に購入したカワイの電子ピアノ。2年前に買って毎日愛用しているソニーのラジオレコーダーはピアノより有用だ。5年前、東京の友人が貸与してくれた超高級オーディオも強力にサポートしてくれるはずだ。この4つをエクセルに入力してみると、大変な資産を手にしている気がする。

持っているCDと録音ファイルも整理した。80曲余りあるハイドンの交響曲をすべてきいて、第40番、第85番「王妃」など11曲をリストアップした。ヴィヴァルディのシンフォニア(序曲)などの2枚のDVDもリストに加えた。これらの音楽は何度きいても気分がよくなる。NHKで放送されたプロフェッショナル「居酒屋主人」などのドキュメンタリーが5本。真摯に生きている人のドキュメンタリーは本当に感動する。

 人生の楽しみといえば食べることだ。うまい酒を飲んでおいしい料理を食べれば最高の気分になる。レシピを集めた2冊のクリアファイルは貴重なものだ。このレシピで旨い料理を作ろう。お気に入りの飲食店もリストアップしていくことにした。まず最初に「自然食レストラン、はーべすと」。ここは安いが、料理も酒も非常にうまい。特に新横浜店は駅ビル9階にあり、雰囲気がいい。

 楽しみと言えば、やはり読書にとどめを刺す。本棚をあさってお気に入りの本を一か所に集め始めている。B・ラッセルの『哲学入門』は何度読んでも知的刺激を受け、気分がよくなる。10年前から師事している大鐘稔彦先生の『私が出会った外科医たち』は大鐘さんの最高傑作である。サミュエルソンの『経済学』は40数年前、熟読玩味した著作である。今、本は日に焼けている。折に触れてこれらの著作を再読したい。

 生活を楽しくしてくれるモノを整理してきて、モノ以外にも大切なことがあることが分かった。施設とか生活習慣である。テニスクラブ、フェリス女学院大学図書館は最高に充実したサービスを提供してくれており、まさに僥倖である。自宅のすぐ近くにある四季の径という3キロの遊歩道もすばらしい。厳しいけれども温かい丹生谷佳惠(にゅうのやかえ)先生のピアノレッスンは私の音楽大学である。もう10年になる。リストの最後に、「昼寝」を加えた。多くの人が働いている時に眠るとは申し訳ないことであるが、昼寝は本当に気持ちよく、幸福な気分になる。そして昼寝の後は気力が充実し、溌溂と行動できる。

 気分が乗らない時、楽しくないときはこのリストを眺めることにしている。そして、DVDを見たり、本を読んだり、散歩に出たりする。すると、間違いなく元気になるのである。不思議なことだ。こうして、A4一枚に、気持ちを愉快に楽しくするものを整理して眺めてみると、それらは、老年を楽しむためのツールだなと思えてきた。

 今私は、このエクセルファイルをプリントアウトして手元に置いている。母のこともアメリカのことも、私の力ではどうしようもないことなのだ。楽しく暮らせる仕掛けを作り、過行く日々を慈しむことが一番いいことだなと思う。(2017年5月)

 
 
 
 
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