まちおもい帖2

日ごろ感じていることを書き記します。

地域資源を活かすローカルベンチャーたち

2016-10-04 22:13:22 | 日記

地方創生スタートアップセミナーの続きです。

第2部では、先進事例として4つのローカルベンチャーが短い発表をしてくれました。

私は、この頃、一般社団法人エリア・イノベーション・アライアンス代表理事の木下 斉さんの本『稼ぐまちが地方を変える』や『まちで闘う方法論』などを拝見していて、田無スマイル大学も、稼ぐ仕組みにしないといけないかなぁなんて分不相応なことを考えていました。でも、まちを見回しても、新しく増えているのは、高齢者向けデイサービスや薬局やマッサージくらいで、地元のリビンやアスタなどの商業施設も空きが目立ち始め、一体何をやったら「稼げる」のか、検討もつかず、途方に暮れていました。

ところが、このセミナーで発表した方々は、とても見事に地域の資源(それまでは不要と思われていたもの)を使って「稼いで」いました。あっぱれ!としか言いようがありません。

以下にセミナーのHPに書かれていたプロフィールのコピペとメモを記します。

 

●山田 拓氏 ㈱美ら地球(ちゅらぼし)代表取締役(岐阜県飛騨市)

【プロフィール】
横浜国立大学大学院工学研究科修了。プライスウォーターハウスにて多数の企業変革支援に従事した後、退職。2年、29カ国にわたる世界放浪の旅に出発し、ウェブサイト「美ら地球回遊記」を通じて、小学校との交流、雑誌記事執筆、現地からのニュースリポートなどを行う。帰国後、地方の原風景に受け継がれる日本文化の価値を再認識し、飛騨古川(岐阜)に移住。2007年、「クールな田舎をプロデュースする」株式会社美ら地球を同地に設立。自らの経験をいかし、里山や民家など地域資源を活用したツーリズムを推進する。国内外のSATOYAMAに魅了される人々のワンストップ・ソリューション「SATOYAMA EXPERIENCE」をプロデュース。農村集落ガイドツアー「飛騨里山サイクリング」、古民家をオフィス転用する「里山オフィスプロジェクト」など、中山間地で複数の新ビジネスを推進する。13年、地域づくり総務大臣表彰個人表彰。総務省 地域力創造アドバイザー/(財)都市農山漁村交流活性化機構 国際グリーンツーリズムアドバイザー/NPO法人 日本エコツーリズム協会 正会員/NPO法人 日本民家再生協会 友の会会員

彼の場合は、日本の3.11ではなく、世界貿易センターの爆破事件(2001年9月11日)がそれまでの人生に区切りをつけるきっかけだったといいます。その後世界を放浪するなかで、アフリカや南米に沢山の国から大勢の人が観光に来ているのを知り、一方、日本には、日本の原風景を紹介するワンストップ・ソリューションの窓口がないことに気づき、戻ったら、田舎に移り住もうと思ったとのこと。ところが憧れの田舎に住んでみると、空家が増えていたり、あっと言う間に古い建物が取り壊されたりしているのを目の当たりにし、なんとかしたいと思うようになった。旅人も、地元の人も、若者もHAPPYにしたいと思っている。現在、若者を13人雇用している。最近できた飛騨駅に、美ら地球の窓口を設置した。

事業を開始したころから、政府が観光立国を打ち出したことも幸いしているという。B to Cのほかに、企業の研修などのB to Bも扱う。

 

●新里カオリ氏 立花テキスタイル研究所所長(広島県尾道市)

【プロフィール】
埼玉県生まれ。武蔵野美術大学大学院造形研究科テキスタイルコース修了。大学院時代に旅行で訪れた尾道で、現在創業81年の帆布工場を見学する。その後、時代とともに少しづつ姿を変えながら地場に息づく産業に魅了され、10年ほど東京と尾道を行き来することになる。2009年よりNPO法人「工房おのみち帆布」を母体とした「立花テキスタイル研究所」をスタート。鉄鋼所で出る鉄屑や、農家が剪定、処分する果樹の枝などを有効利用して染料にする研究を始める。11年に株式会社化。現在、耕作放棄地を利用して帆布の原料となる綿花や、染色に使う藍を栽培し、商品に反映させている。世界経済の変動に影響されない環境循環型の産業の在り方を探求し、地域の資源を活かしたテキスタイル関連商品の研究から開発・販売、技術伝承などを行う。

尾道市といってもしまなみ海道で渡れる向島というところに立地している。当初は旅行で訪れたのだが、たまたま見学した帆布工場に衝撃を受ける。当時は、テキスタイルを学んでおり、その頃には、ファッショナブルな布を作ることのみイメージしていたが、真っ白の平織の布を織る工場が80年も続いていると知ったからだという。この布に惹かれたものの、移住を決めるには、8年ほどかかったという。東京と向島を何回も往復した。

現在は、これでバックを作っているのだが、帆布は、工業製品であるため、傷や汚れをあまり気にしていないこともあり、バッグをつくる上で問題があり、話し合いをしていった。

会社の名前に、「尾道」をつけると知られているブランドなので良いと言われたが、もっと地域に密着したいと、会社のある地区の名前である立花をつけることにした。土から最終製品までを作りたいと耕作放棄地を借りて、綿花も栽培している。昔は、栽培していたというので、それならやれるのではないかと思った。

この島の子供たちは、全員糸紡ぎが出来るようにしたいと、幼稚園から小・中学校までをかたっぱしから回り、子供たちに糸紡ぎを教えた。

梅の木などを切って捨てていたのをもらって、染色の材料にした。牡蠣の殻を捨てていたのをもらって、1000度で焼くと強アルカリの水が出来、これも染色に使う。鉄工所で排出する鉄粉は、これまで廃棄されていたのをもらってこれも染色に使っている。周りからは、「ゴミ姉ちゃん」と呼ばれた。そのうち、いろいろなところから、これも捨てるのでいらないかと送ってくるようになった。宮島の鹿の角た廃タイヤなどなど。今は、要らないのだが、これはチャンスを与えられているのかもしれないと思い、今後、何か使えるものになるかもしれないと思っている。

 

●丹埜 倫氏 ㈱R.project代表取締役(千葉県鋸南町)

【プロフィール】
慶應義塾大学法学部卒業後、ドイツ証券東京支店、リーマンブラザーズ証券東京支店に勤務。日本株トレーダーとして勤務する傍ら、スカッシュの日本代表として世界選手権に出場。2006年に金融業界を離れ、株式会社R.projectを設立。自身が中学校時代に通った千葉県鋸南町の保田臨海学校を千代田区から譲り受け、リノベーションの末に「サンセットブリーズ」という人気合宿施設として再生。その千葉県や山梨県で事業を拡大し、6つの市町村で合宿事業を展開。15年からは訪日観光客向けのバジェットトラベル事業も開始。歴史ある問屋街、日本橋横山町の旧問屋ビルをリノベーションしホステルとして運営している。今後は、自身が高校を中退した経験をもとに、既存のカリキュラムにとらわれないインターナショナルスクール事業を構想中。

この会社のロゴマークは、「灯台もと暗し」の意味。使われていない公共施設などをリノベーションして、合宿施設として再生している。株のトレーダーは、価値があるのに株価の低い株を見つけ出して売り、儲けるのと、今の仕事は似ているという。地元では、価値がないので、壊すしかないと思われている施設等をリノベして価値を高めているからだ。

現在社員は、40人、繁忙期の夏休みなどは、これに200人のバイトを雇っている。日本は、首都圏から2時間も行けば、田舎が広がっている。合宿というのは、それなりにマーケットが見えるし、結構市場規模が大きい。そこに眠る公共施設等相対的に良い施設をうまく使えば、それまでの合宿場所を変えてもらえる。白浜では、音楽ホールを使って、音楽の練習ができる合宿施設を作った。本栖湖では、もともとのスポーツセンターで、壊すといわれていたものを活用した。

自分たちは、良くある行政の指定管理者ではない。行政に賃料を支払っている。

合宿のほかに訪日観光客向けのバジェットトラベル事業をするにあたって、やはり東京が最初の起点になるだろうと思い、そこから地方に観光客を向かわせるため、馬喰町にリノベーションによって、バックパッカー向けの宿を作った。その2号店は、JRの協力を得て、寝台車「北斗星」のバーツを内装部に活かしたリノベーションとなっているという。

丹埜さんは、日本の高校になじめず、中退し、大検で慶応に入学したという。合宿施設を使って、インターナショナルスクールをやりたいと考えている。日本の教育とは違う教育をする場所を作りたい。それは、事業を進めるうえで人材不足ということもあり、上手くいけば、そこから自分の会社に必要な人材を得たいと思っているという。これからは、人を集められる人を社員にしていこうと考えている。

 

●立花 貴氏 公益社団法人MORIUMIUS代表理事(宮城県石巻市)

【プロフィール】
東北大学法学部卒業後、伊藤忠商事株式会社入社。6年で同社を退社し起業へ。2000年、食流通関連の株式会社エバービジョン設立。10年、日本の食文化・伝統工芸の情報を発信する株式会社四縁を設立し、奈良・薬師寺門前のイタリアンレストラン「AMRIT」を運営。東日本大震災後は文化人や民間企業、首都圏のボランティアとともに石巻・雄勝地区を中心に支援活動にあたる。その復興支援の活動が注目され、テレビ「サキどり!」(NHK)、「NEWS23」(TBS)をはじめ、日経ビジネスなど多くの雑誌、メディアで紹介される。15年夏、石巻市雄勝町内に複合体験施設「モリウミアス~森と海と明日へ~」をオープン。一般社団法人東の食の会理事。一般社団法人3.11震災孤児遺児文化スポーツ支援機構理事。株式会社四縁代表取締役。

東北大震災の折、ボランティアで石巻の雄勝地域に何度も足を運ぶうちに、災害によるひどい状況や地域の疲弊というものを「見てしまった!」。そこで何かしなければという衝動に駆られ、2002年を最後に閉校となっていた旧桑浜小学校をリニューアルし、団体名である「森、海、明日の私たち」の意味を込め、持続可能な暮らしを考える子供の体験宿泊施設にした。自分たちで露天風呂も作った。豚や鶏も飼っているし、米や野菜も作る。理事の一人は、キッザニアを立ち上げた油井さん。

来客のうち、7割が首都圏、2割が地元、1割が海外とのこと。子どもだけでなく、企業の大人向け研修にも使ってもらっている。この施設を作るにあたっては、隈研吾さんや海外の大学と一緒にデザインを作ったという。現在10人雇用しており、うち4人が地元。企業から出向している人もいる。 

2019年に石巻で世界的なラグビーの大会が開催されるので、これを一つのビジネスチャンスとして活かしたいと考えている。

地元の漁業の繁忙期には、社員が手伝いに行っている。住民票も移した。5年間も通うと、中学生だった子が大学生になり、インターンで来てくれたり、出向で来た社員の子供がインターンで来てくれたり、と子どもの成長とつながりが出てきている。

 

日南市油津商店街

第1部のなかで話題になっていたが、知らなかった。ここは、行政や商工会などがやる気になって、商店街のリノベーションを独自にやっているらしい。

 

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前ブログでも、書いたが、「地域の課題を解決する」というところから始まるのではない。何かやりたい人がやりたいことをやる。地域には、やれる余地があり、活躍の舞台になりうる。やりたいことをやらせてくれる自治体に、そういうベンチャースピリットを持つ人が集まってくる。なんだか自由にやれそうだという空気感が醸成されれば人は集まってくる。その結果、地域の課題(雇用、高齢化など)が自然に解決される。・・・というのが、今回のセミナーのまとめといえよう。

アートとデザインの違いで、アートはその人が描かずにいれれないもの、デザインは、仕様があって描くものという話があるが、「起業」も「田舎暮らし」も、アートに似ているのだろう。

そういう人が自分のやりたいことが「その田舎」ならやれるということに気づくようにすることがポイントかもしれない。

そういう意味で、実績を積んできた(余所からやってきた起業家を支援し、寛容性を培ってきた)今回の8つの自治体は、何かやりたい人にとって入りやすい自治体と言えるのだろう。

現在は、地方で、人材の奪い合いが起きているという。しかし、誰でも良いというわけにはいかない。今回、8つの自治体が協力してセミナーを始めるのは、地域を持続可能にしていく挑戦者を増やし、それを支援していきたいと考えてのことだ。8つの自治体がこれまで実績を積んできたことを活かしたいという。

今回ローカルベンチャーの先進事例を垣間見て、なんだか日本は大丈夫な気がしてきた。国は、無理やり経済成長をめざし、それも大企業の牽引をイメージしているように思えるが、そうではなく、持続可能な社会、もっとのびのびした日本らしい社会、若者が生き易い社会にちゃんと方向転換できているじゃないの、と思えた。

 

 

 

 


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