切れたメビウスの輪(25)

2016-12-20 21:05:40 | 怪奇小説
その時、家全体がビビビビと振動した後で薄いモヤに包まれた。
そして、入口のドアが大きく歪んで、部屋の中から稲妻のような閃光が断続的に漏れてきている。
しかし、雷鳴は聞こえず、静かに光っているだけである。

横顔生夫と縦顔死郎は二人して
「ああっ、私の家が。」
「家が、家が。」
と、釘付けとなって見ていた。

しばらくして、稲妻のような閃光は治まり、家の振動も無くなったので、二人は恐る恐る、家に近づいていった。
「あっ、私の入口が無くなっている。」と縦顔死郎。
入口が消え去っていて、何も無い壁になっていた。
「やっぱり入口が消えましたね。」と、縦顔死郎。
「わたしの入口は有りますよ。」と横顔生夫。
「あっ、本当だ。」
「入ってみますか?」と横顔生夫。
「気持ちが悪いですね。」
「すぐ出られるように入口付近だけにしておきましょう。」

二人はそっとドアを開けたが何ら変わった所は無かったが、ヒンヤリとしていた。
「なんか寒いですね。」
「そうですね。このヒンヤリ感は何処から来るのですかね?」
「あっ、少し中へ進むと、ヒンヤリしなくなりましたよ。」
「ああ、本当だ。入口だけがヒンヤリしているんですね。」
「あなたの世界と、私の世界との接合点だった所だけですね。」
「もしかすると、ここはメビウスの輪の接合点だったのではないですかね?」
「なるほど、それで私とあなたとが知り合えたのですね?」
「そうですね、表側を歩いていたのに、いつの間にか裏側を歩いていたのですね?」
「そして、何かの原因でメビウスの輪の接合点が切断されたのではないでしょうか?」
「先程の振動が切断された瞬間なのですかね?」
「おそらくそうだと思いますよ。」
「それが本当なら、縦顔死郎さんは、もう自分の世界に帰れなくなってしまいましたね。」
「そのようですね。」
「それなら、ここで一緒に住みますか? 私もあなたもこの家の住人ですからね。」
「それもそうですね。」
「それでは、二人とも生きている事にして、それを誰かに認めさせる必要があるので、二人が知り合った病院に行ってみましょう。」
「そうですね、生きている事を病院に認めさせるのが良いですね。そうしましょう。」

こうして、二人は病院に戻り、薄暗くて寒い部屋で
『交通事故 横顔生夫』の名札の付いた台車には横顔生夫が、『転落事故 縦顔死郎』の名札の付いた台車には縦顔死郎が背広のままで寝たのである。
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