ケン・ローチの「やさしくキスをして」をみた時にドキリとした。イギリスで暮らすムスリムが主人公の映画。高校生である彼の妹が学校で声高に訴える。「いつも少数者(=弱者)は単純化される。マジョリティの側は、いつも自分達だけが複雑だと思っている。」(若干ウロ覚え気味)
マイノリティじゃなくたって、私たちは他者を単純化しがちだ。女はコウだ。男はアアだ。ツヅキさんはマジメだ(ん?)。だけど、誰だって複雑なのだ。私だって、マジメだったり、フマジメだったりする。そして、一つの組織や、地域や、国に属する人たちは、やっぱりそれぞれに多様だ。そんなことは分かっているはずなのに、いつも私たちは知ったかぶりをして、○○は××だ、なんて語ってしまう。そんなに簡単に分かってたまるか、だ。
キューバの映画にハマってしまった理由の一つは、ステレオタイプを覆されたから。多くの作品が、複雑さを、複雑なままの姿で伝えようとしていると感じる。「キューバはラテンで明るい」「革命は、ゲバラは、すごい」「社会主義だから自由がないかも」「医療や教育が充実しているかも」etc。様々なイメージがある。相反するものもある。どれも本当かもしれない。だけど、どれか一つだけを本当だと考えたら、ウソになるかもしれない。キューバの映画は複雑さこそ真実かもしれないと感じさせてくれるのが魅力なのだ。
なんだか前置きばかりが長くなってしまったけれど、今回で2回目となる「キューバ映画祭inサッポロ2010」の上映作品のうち、オススメの一つがシュガー・カーテン。幼い頃、両親とともにチリ政府から逃れてキューバから渡ってきた30歳代後半の女性が、同世代の男女数名をインタビューして撮ったドキュメンタリーだ。彼(女)らがまだ小学生くらいの幼い頃、革命はまさに黄金期。キューバは物質的にも不自由はなく、公正で平等な社会を実現している――子ども達はその夢を受け入れた。しかし、経済的に大きく依存していたソ連が崩壊して以降、キューバの経済はいちぢるしく逼迫し、食料は不足し、さまざまなモノを生産するためのエネルギーもない。政治的にも、経済的にも自由がない。そんな中、一部の人は国から逃れ、成功を手に入れた。他の者は、不満を感じながらも逃れるすべもない。またある者は、現状の問題点は見据えつつも、キューバが追い求めてきた理想はウソではなかったと信じ、キューバで生き抜こうとする。とても悩ましいけれど、キューバの現状と、人々の不満や願いを映し撮った見ごたえのある作品だ。
この作品も含め、今回される上映される多くの映画には、人と時代、あるいは人と社会のあり方との関係が深く描かれている。だけどそんな重たげなテーマを扱った作品にも、音楽とユーモアが溢れている。上映12作品12様。「遊」からも近いし、ぜひ足をお運び下さい。
さっぽろ自由学校「遊」のニューズレターに寄せた原稿です。
キューバ映画祭inサッポロ2010のブログにもUP済み。
マイノリティじゃなくたって、私たちは他者を単純化しがちだ。女はコウだ。男はアアだ。ツヅキさんはマジメだ(ん?)。だけど、誰だって複雑なのだ。私だって、マジメだったり、フマジメだったりする。そして、一つの組織や、地域や、国に属する人たちは、やっぱりそれぞれに多様だ。そんなことは分かっているはずなのに、いつも私たちは知ったかぶりをして、○○は××だ、なんて語ってしまう。そんなに簡単に分かってたまるか、だ。
キューバの映画にハマってしまった理由の一つは、ステレオタイプを覆されたから。多くの作品が、複雑さを、複雑なままの姿で伝えようとしていると感じる。「キューバはラテンで明るい」「革命は、ゲバラは、すごい」「社会主義だから自由がないかも」「医療や教育が充実しているかも」etc。様々なイメージがある。相反するものもある。どれも本当かもしれない。だけど、どれか一つだけを本当だと考えたら、ウソになるかもしれない。キューバの映画は複雑さこそ真実かもしれないと感じさせてくれるのが魅力なのだ。
なんだか前置きばかりが長くなってしまったけれど、今回で2回目となる「キューバ映画祭inサッポロ2010」の上映作品のうち、オススメの一つがシュガー・カーテン。幼い頃、両親とともにチリ政府から逃れてキューバから渡ってきた30歳代後半の女性が、同世代の男女数名をインタビューして撮ったドキュメンタリーだ。彼(女)らがまだ小学生くらいの幼い頃、革命はまさに黄金期。キューバは物質的にも不自由はなく、公正で平等な社会を実現している――子ども達はその夢を受け入れた。しかし、経済的に大きく依存していたソ連が崩壊して以降、キューバの経済はいちぢるしく逼迫し、食料は不足し、さまざまなモノを生産するためのエネルギーもない。政治的にも、経済的にも自由がない。そんな中、一部の人は国から逃れ、成功を手に入れた。他の者は、不満を感じながらも逃れるすべもない。またある者は、現状の問題点は見据えつつも、キューバが追い求めてきた理想はウソではなかったと信じ、キューバで生き抜こうとする。とても悩ましいけれど、キューバの現状と、人々の不満や願いを映し撮った見ごたえのある作品だ。
この作品も含め、今回される上映される多くの映画には、人と時代、あるいは人と社会のあり方との関係が深く描かれている。だけどそんな重たげなテーマを扱った作品にも、音楽とユーモアが溢れている。上映12作品12様。「遊」からも近いし、ぜひ足をお運び下さい。
さっぽろ自由学校「遊」のニューズレターに寄せた原稿です。
キューバ映画祭inサッポロ2010のブログにもUP済み。