競馬マニアの1人ケイバ談義

がんばれ、ドレッドノータス!

女神「女神の一番長い日」3改定版

2017年06月26日 | 女神
 ここは小さな会議室のようです。複数の折り畳みの長テーブルが長方形に並べられており、お誕生日席に当たる部分のパイプいすは逆向きに置かれています。そこにさきほどの宇宙人が座らせられています。その両手は後ろ手になってます。よーく見ると、その両手には手錠がかかってます。正確には、腕のサポーターのようなものを鎖でつないだ手錠です。その間にはテーブルの脚があります。つまり、身動きが取れない状態になってるのです。
 宇宙人は先ほどテレストリアルガードの隊員が被っていたフルフェイスのヘルメットを被ってます。ただ、ガラスの部分は強い偏光グラスになっていて、中の顔を見ることはできません。首から下はテレストリアルガードの隊員服です。
 宇宙人の目の前の天井には、ドーム型の監視カメラがあります。宇宙人はそれを見ているようです。
 この宇宙人の姿がモニターに映し出されてます。ここはサブオペレーションルームです。テレストリアルガードの4人の隊長と隊員がそれを見ています。まずは隊長がぽつりと発言しました。
「ふっ、うちも取調室が必要だったとはね」
 ストーク号に乗ってた隊員が、
「あの・・・ これじゃ巨大化して逃げ出すような気がするんですが?」
 それを聞いて、今度はヘロン号に乗ってた隊員が、
「平気平気。この状況で巨大化したら、両手が手錠で引きちぎられてしまうだろ」
 ここで隊長の発言。
「さーて、行くか」
「はい」
 再び会議室です。ドアが開き、テレストリアルガードの隊員4人が入ってきました。宇宙人はそれに少し反応しましたが、あえて振り向かないようにしてます。まずは隊長が発言しました。
「手荒いことしてしまってすまなかった」
 一つ眼の宇宙人は何も言いません。すると隊長は右手を宇宙人に向かって真っ直ぐ伸ばしました。その手にはリモコンが握られてます。隊長がそのリモコンを押すと、宇宙人の手錠がパカッとはずれました。それを見て3人の隊員がびっくり。1人はさっとレーザーガンを構えました。
「た、隊長、何をするんですか?」
 宇宙人は手錠が痛かったのか、右手首に左手を当ててます。隊長はそれを横眼で見ながら、隊員たちに話かけました。
「オレたちは警察じゃないんだ。逮捕状も取ってないし、手錠をかけておく法的理由がないだろ」
「し、しかし・・・」
 隊長は再び宇宙人を見ました。宇宙人はフルフェイスのヘルメットをはずそうとしてます。
「あ、ヘルメットは取らないでくれ。この星にはいろいろと病原菌があるし、あなたがもってる病原菌も、われわれにとっては猛毒になる可能性があるからな。それにそのヘルメットには自動翻訳機が備わってる。被ってた方が会話しやすいだろ」
 宇宙人はヘルメットにかけた手を離しました。
「すまないことをした。あの船には数千もの君の同胞が乗ってたとは、夢にも思わなかった。許せては言わないが、今は怒りを収めて欲しいんだ」
「ふ、ふざけんな! なんで攻撃した! いくらなんでも攻撃する前に警告するだろ! この星じゃ、警告もなしに撃ってくるわけ?」
 ついに宇宙人が口をききました。溜まり溜まったものを一気に吐き出したようです。それを聞いて危険を感じたのか、さらにもう1人の隊員がレーザーガンを構えました。が、隊長は両手を広げ、レーザーガンを構えた2人を押さえました。
「おい、やめろ!」
 隊長は呼吸を整え、
「8年前と5年前、この星はユミル星人と呼ばれる宇宙人に猛攻撃を喰らったことがあった。それでたくさんの人が死んだ。ここにいる4人は、そのとき1人ぼっちになったものから選抜されたんだ。だから宇宙人に対しては、あまりいい印象がないんだ。
 この星の住民は、みんな宇宙からの侵略者を怖がってるんだ。そんなときに君が乗った船が来た。だから無警告に攻撃してしまったんだと思う」
 それを聞いて、一つ眼の宇宙人は黙り込んでしまいました。ここで突然隊長の左手首についてるバンテージのような装置が鳴りました。
「隊長! 警察庁の人が来ました!」
 それは通信員の女性隊員の声です。どうやら手首の装置は無線機のようです。隊長はその無線機に話しかけました。
「なんだ? えっ、宇宙人の身柄をよこせってか? ち・・・ おい、そいつら、絶対ここに入れるなよ!」
「それが・・・ もうそっちに向かってます」
「何?」
 と、突然ドアが開き、3人のスーツ姿の男が現れました。
「お邪魔しますよ」
「おいおい、こっちはまだ取り調べ中だぞ。だいたい宇宙人が襲撃してきたら、第一に防衛する組織は、我々テレストリアルガードじゃないのか?」
 3人の男の中でも、真ん中の特に偉そうな男が話しかけました。
「おやおや、何を言うかと思えば・・・ 確かに宇宙人の侵略行為があった場合は、まずはあなたたちテレストリアルガードの出番だが、身柄を拘束した宇宙人をどの組織がどのように扱えばいいのか、特に規定は設けてないはずだが?」
「てことは、テレストリアルガードが宇宙人を取り調べしても、別に問題ないってことだな」
「ふふ、ご冗談を。こんな会議室で何を取り調べるんですか?」
 男は両側にいた2人の男にあごで合図を出しました。
「おい」
 2人の男は宇宙人を挟むように、宇宙人の両腕を掴みました。
「おい、ちょっと待てよ」
「まだ何か言いたいことがあるんですか?」
「実はその宇宙人は、テレストリアルガードの隊員なんだ」
 そのセリフを聞いて警察の人ばかりか、テレストリアルガードの隊員たちも驚いてしまいました。
「た、隊長?」
「実は30分前に総理大臣に申請書を出していてなあ」
「あはは、こいつはお笑いだ。テレストリアルガードが宇宙人を雇うだと? そんな規定があるわけないだろ」
「アメリカじゃ投降したエイリアンを中心に作られた部隊があってな。それに倣って、あえてテレストリアルガードの隊員は地球人に限るという文言は入れてないんだ。
 テレストリアルガードの隊員はいろいろと身分が保証されていてなあ、今引っ張っていくと、あとあと面倒なことになるんじゃないのか?」
「ふふ、ああ言えばこういうだな。
 テレストリアルガードは総理大臣直属の機関。新規隊員を入れる場合は総理大臣の許可を得ないといけないが、承認は最低1週間はかるんじゃないのか?」
「さあねぇ、承認はもう下りてるんじゃないのかな? まあ、もうちょっと待てや」
「小賢しい。そんな言い訳は聞きたくはないわ!」
 警察の偉い人は、2人の部下を見て命令しました。
「いくぞ」
「はい」
 いよいよ3人は宇宙人を連行するようです。が、ここで携帯の着信音が。それは警察の偉い人の携帯でした。警察の人はスーツの内ポケットから携帯を取り出し、電話に出ました。
「はい、もしもし・・・ ええ、警察庁総監?・・・」
 この一言で部屋の空気が変わりました。
「わ、わかりました」
 警察の人は携帯を切りました。
「ふっ、こんなにも早く承認が下りるとはな」
 警察の人は2人の部下に声をかけました。
「おい」
 2人は宇宙人の腕にかけた手を離しました。そして3人は出て行ってしまいました。
 ドアが閉まると、今度は隊員の1人、先ほど最初に宇宙人に拳銃を向けた者が隊長に喰ってかかりました。
「隊長! ほんとうにこいつをうちに入れるんですか?」
「ああ、そのつもりだ」
「こいつはエイリアンですよ!」
「なんだ、嫌か?」
「ああ、嫌です! だいたい隊長はこいつに甘過ぎです! オレたちはみんな家族をエイリアンに殺されてるんですよ!」
「お前が見た宇宙人は一つ眼だったのか?」
 隊員はなんら応えに窮することなく、さらに語気を荒げて反論します。
「宇宙人には変わりないでしょ!」
「なんだよ、そりゃ? そんなにオレの云うことが聞けないのなら、お前、テレストリアルガード辞めろ! はっきり言って、お前は不快だ!」
 その一言に残りの2人の隊員も反応してしまいました。
「た、隊長?」
「オレは総理大臣からテレストリアルガードの隊長を任せられてるんだ。オレの命令は絶対なんだよ。オレの命令を聞けないっていうのなら、とっとと辞めちまえ!」
「ああ、辞めますよ! 辞めりゃいいんだろ!」
 隊員はついにブチ切れてしまいました。そしてドアに向かいました。本当に出て行くつもりです。それを見て、別の隊員の1人が慌てました。
「は、橋本さん、辞めないでくれ!」
 当の隊員はドアを開けると、振り返らずに、吐き出しました。
「やってられるか、こんなところ!」
 ドアが激しく閉まりました。思いっきり力を込めてバーンと閉めたのです。今度はたった今「橋本さん」と言ってた隊員が、隊長に喰ってかかりました。
「隊長、いったい何を考えてるんですか? 橋本さんはうちのエースですよ! 射撃は百発百中だし、ヘロン号のコントロールはすごいし! 今こんな人はほかにいませんよ!」
 そして宇宙人を横目で見て、
「隊長はこのエイリアンと橋本さんとどっちが大切なんですか?」
「両方とも大事だ。ま、去る者は追わずだ。今はそこにいる宇宙人の方が大事だな」
 隊員はテーブルを思いっきりバーンと叩きました。
「ふざけんなよーっ!」
 ちょっとの静寂。それを切り裂くように、隊長は静かにしゃべりました。
「お前も辞めるか?」
 再び一瞬の静寂。と、今度はさっき語気を荒げた隊員がぽつりと発言しました。
「・・・いいえ」
「そっか」
 隊長は左手首の無線機に話しかけました。
「おい、ちょっと来てくれ」
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小説
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