『タカラヅカスペシャル２０１５ －Ｎｅｗ Ｃｅｎｔｕｒｙ，Ｎｅｘｔ Ｄｒｅａｍ－』

　梅田芸術劇場、２０１５年１２月１９日マチネ（初日）。

　監修・構成・演出／石田昌也、構成・演出／中村一徳、稲葉太地。専科、月組、雪組、星組、宙組の出演、コーラスは星組。全２幕。

　去年は中継すら観なかったのですが、今年は縁あって三階席てっぺんでしたが観てきました。なかなか楽しく観ましたが、例によっていろいろ思うところがありました。

　オープニングは出演者全員で主題歌から。イシちゃん＆トップコンビ４組の金のお衣装は新調かな？　娘役ちゃんたちが全員髪型が可愛くてウヒョヒョとなりました。スカートが膝丈なのもたまらん！
　他は男役がヒートンビーなどで観たことがある白ベースにいろんな色が振られているスーツ、娘役ちゃんも白にいろんな色のラインのワンピ。スターがたくさんいて目が足りないんだから組カラーで出てきてほしいよ…あっきーは緑でした。
　マイクの本数が足りないためかどんどんリレーしながら歌い継いでいくんだけど、あっきーがちゃぴにマイクを渡してニコッとし合ったときにはキュンキュンしました。てっぺんまで観てくれるのは嬉しいんだけど列からはみ出し気味になってましたよ！　ああカワイイ。
　次いでイシちゃん＆トップ４人のＭＣ。私は作り込まれたものが好きで、こういうどう転ぶか読めない場面はヒヤヒヤするし嫌いなのですが、いかにも緊張してるっぽいまぁ様と、同じくトップとしてはタカスペ初登場なはずなのに上着の裏に初心者マークなんかつけてきてちゃんと笑いを取るみっちゃんが印象的でした。先日のまさおの卒業発表もあって、同期のちぎちゃんが話を促すくだりがあり、なのにまさおは感傷的なムードにしたりすることなく、以前のタカスペでイシちゃんがしゃべる番なのに台詞を言い出さず妙な間が開いたときがあって、みんながまさおを見てまさおのミスのようにされた、という話を持ち出して理事を責め立てるのがさすがまさおでした（笑）。

　各組パロディコーナーのトップバッターは星組、演出はダーイシ、タイトルは「大海賊の博徒たち」。単に『大海賊』のキャラクターたちをギャンブラーにしただけではなく和物にしたのは『次郎吉』も踏まえてるのかもしれないし、確かにみっちゃんの着流しは本当にいなせでカッコよかったけれど、あれは花組の作品だったんだし、残念ながら脚本としてはあまりおもしろくありませんでしたね。
　和物つながりということにせよ『銀二貫』に言及し、れいこの名前まで出すのは、「他組の宣伝なんかしてるんじゃねえ！」というつっこみがあったにせよヘンでした。これが星から組替えした生徒の公演とかだったらまだわかるけれど。…まさか来年ナニかあるのか！？
　あと、来年の干支が申だからかなんだか知らないけれど、娘役に猿の物真似をさせるコンセプトが嫌。というか人間に猿をやらせる微妙さを考えようよダーイシ。ふうちゃんはなんでも上手いしノリノリで可愛いし楽しそうでいいんだけれど、よく考えようよダーイシ。私は何度でも言うよ？
　あと、まこっちゃんにオカマをやらせたのも私は笑えませんでした。男役の彼女にアデレイドを演じさせてベニーの恋人役を務めさせたのは劇団の都合じゃん。だからオカマだろって笑うのってどうなのよ。それにタカラジェンヌは全員女性で、男性同性愛者にはなれっこないんだからねじれています。さらにその同性愛を笑うようなのが、女性ファンが女性であるジェンヌを愛する文化を嘲笑されているようで私はむず痒く、不愉快でした。ダーイシにはそういうデリカシーがない、と私はもう思い込んでいるので、なおさらです。よくよく考えようよダーイシ！

　その次は「１０１年愛メドレー」ということで、「愛」と名のついた曲名を各組スターが歌い継ぎました。ＭＣで「全ツから帰ったばかりでお稽古期間があまりなく、いろいろ怪しい」と言っていたちぎちゃんの「蘇る愛」の歌詞がホントに怪しかったのがおかしかったです。カチャきんぐかいちゃんの８９期トリオが初舞台公演の『シニョドン』から「ドン・ファン～愛の放浪～」を歌ったのもよかったです。こういうコンセプトって大事だと思うけれど、あとはベニーとかくらいだったかな？　９１期や９３期あたりでもやればよかったのに、いい歌がなかったのかしらん？
　月雪メインで「エメ」を歌ったときには、おお、みんな『ロミジュリ』やったもんね、となかなか感慨深かったです。

　なのに学校ふうのチャイムが鳴って空気を壊し（笑）、始まった宙組パロディは「王家に捧ぐ校歌」。大運動会の応援合戦のときみたいなカッコいい学ランを期待していましたが、ちょっと違った…エジプト高校のラダメスはメガネくん。甲冑の上半分に学ランみたいな情けない格好で、アイーダとの待ち合わせ場所におどおどと現われました。カワイイ！（笑）
　同じくエジプト高校の愛ちゃんケペルとずんちゃんメレルカが現われて、「エチオピア高校のやつらとなんかつきあうんじゃねーよ！」とラダメスをいじめます（笑）。彼らはラクダの暴走族らしい、そしてエチオピア高校の生徒に日干し煉瓦を投げつけられたらしい（笑）。
　ゆりかウバルドは就職してピラミッド建設に勤しんでいるらしく、ＧＷまでに完成させたいとか言うので博多座公演のことね、とニヤリとしましたが、話としてはスルーされていました（笑）。作業着みたいなサロペット着てて、続く後輩たちはまだ学生で、あっきーカマンテは学ランにあのストールあのペンダントあのヘアスタイルでりくサウフェを引き連れていて、ケペルたちと喧嘩になったときに「ラクダは足音がうるせーんだよ！」「ナイル川に沈めてやる！」とか怒鳴ってて、おもしろすぎました。サウフェはスフィンクス像を彫るバイトをしているとかなんとか…貧乏なのねカワイイわ。
　カオスっぷりがおもしろすぎて続く展開をよく覚えていないのですが、みりおんアイーダのセーラー服のコスプレ感がハンパなくてまたおかしかったです。ラダメスが一生懸命書いてきたというラブレターを渡そうとするんだけど、それがデカい石版にヒエログリフで書かれたもので、受け取ったアイーダがよろめいてたりして、でも「まあ、達筆ですのね！」とか言うんでどこがやねん！？とまた脳内つっこみが忙しかったです。
　喧嘩を仲裁しようとしてまぁ様ラダメスが「♪戦いは新たな戦いを生むだけ」と歌い出したのにも爆笑しました。アンタの持ち歌やないやん！
　あげく金ぴかスケバンなゆうりアムネリスが出てきて大阪弁で「うちは欲しいものはなんでも手に入れられるんや！　ファラオの娘やからな！！」とかドヤってアイーダと関西弁キャットファイトを始め、スケバンそのもののせーこワーヘドもアイーダいじめに加わり、まぁ様ラダメスは突き飛ばされてメガネ飛ばしてメガネメガネ状態になるし。エジプト側の方が大怪我してるし（笑）。
　キレたアイーダが「うちはラダメスを好きだなんて言うてへん！　お父ちゃんも鳩と遊んで頭おかしくなるし、もうやってられへん！　帰るで！！」とか言うとウバルドが「ハイ」っておとなしく従っちゃうのもめっちゃおかしかった。ひとり残されたまぁ様が次回公演の宣伝をして総踊りになってシメ、だったかな？
　『王家』は作品の世界観がしっかりしているだけに、いじってギャグにするととてつもなくおもしろくなるんだな、と思いました。演出は中村Ｂ先生。パロディ作ってる暇があるなら宙にショーくださいマジで…

　続いてシャッフル・トップコンビによるスペシャル・デュエット。まずはみっちゃんとゆうみちゃんで『スカピン』の「あなたこそ我が家」。『メリーウィドウ』コンビですね、ゆうみちゃんの鬘がちゃんとマルグリットっぽいゴージャスなくるんくるん巻き毛で素敵でした。
　まぁ様とちゃぴが『エリザベート』から「私が踊る時」。まぁ様、一足早いトートでしたね。せっかくのこのふたりなのでもっと踊りまくってほしかった気もしますが、意外にがっちり芝居している感じの一曲に仕上がっていて、素晴らしかったです。ちゃぴ、残ってほしいけれど、外部でエリザをやるならそれはそれで観たい気もしてきましたよ…！
　ちぎちゃんとふうちゃんは『ネバセイ』から「全ては君の為に」。すみません私は知らない曲でした…てかこのラインナップの中で唯一再演されていないこんなマイナーな作品を持ってきちゃあかんだろう。でもちぎちゃんが宙組にしたころの歌だから、ファンには嬉しかったのかもしれません。
　まさおとみりおんは『ファントム』より「Ｈｏｍｅ」。歌うま同士でこれまた素晴らしかったです。
　続いて今年亡くなった入江薫先生を偲ぶコーナーがあって、最後はイシちゃんの「愛遥かに」。バックダンサーとして白いお衣装のあっきーが出てきたときに本当に吸い寄せられるように自然に見つけられて、幸せでした…美しかった！

　第Ⅱ部は各組二番手スターを中心に、男役がブルーのスーツにとりどりのネクタイで腕まくりしてズラリと並んで始まって、壮観でした。ネクタイの色でグループに分かれて二番手スターが歌い各組スターが踊る、それがまた組シャッフルになっていて楽しかったです。もっと尺が欲しい！
　そして雪組パロディ、「いちご白書の三日月藩」。演出はダーイシ、悔しいけれど宙と並んでこれが一番おもしろかったです。それもこれも『星逢』の確固たる世界観があったればこそで、あの名場面がこんな珍場面に！？　あの名台詞がこんな珍台詞に！？　って落差がサイコーにおもしろいんですけれどね。
　陸奥への永蟄居から３００年、今は何故か青森県警の警部になっているちぎちゃん天野晴男が、裃にスーツでザッツ公務員な腕カバーして湯呑みすすって黄昏てるところから始まるんですよ、もうそれだけでおもしろいよね。で、せしる不二子が現われて、学生たちがデモで立てこもってる…というのでこれはＳＥＡＬＤｓとかかな？と思ったのですが、ダーイシだしタイトルからして昔の安保闘争をイメージしてるんだろうな…アナクロすぎるぞ！
　するとアル・カポネなだいもんがドードーみたいなゆうみちゃんに足を盥で洗ってもらっていて「ごちそうさん」とか言うんですよやめてー！（笑）で、一揆ならぬ一気呑みでビールジョッキ掲げて対決になるんですよ、でも禁酒法時代の人だからカポネさんお酒弱くて倒れちゃうんですよ。でも再び立ち上がってネクタイ外してそれでハリセンを手に巻きつけて再度決闘しようとするんですよ、だけど何故か五郎丸ポーズしてからなんですよなんだそりゃ！
　さらに突然呑み会コールが始まって、それも「晴ちゃんの、ちょっといいとこ見てみたい！　ソレ蟄居、蟄居、蟄居、蟄居！！」ってヒドくないですか！？（笑）それで再びちぎちゃんがすべての責任を取って、今度は北海道に飛ばされて終わるんですよ…もうめちゃくちゃにカオスでおもしろすぎました。

　次いで１０１年夢メドレー、なのですがタイトルに夢が付く曲ばかりでないという体たらく、許せん。コンセプトをしっかりさせんかい！
　ゆりちゃんみっきーあっきーは『野風の笛』より「風に舞い、夢に翔べ」。私は知らない歌でした、ごめん…意外に熱く強い歌だったのはなかなか新鮮でした。でも全体にどの歌も短すぎ目まぐるしすぎたと思います。後述。
　珠城さんに『パラプリ』を歌わせたのは何故…？　ニンが違うし、タニこそ月でさっさとトップにすべきだったのに抜擢や組替えの仕方を間違えたスターだったと思っているので、劇団ホントちゃんと考えて！と言いたいです。
　けっこう大人数でやる「カリビアン・ナイト」も、もっとラテンの中詰めとしてきちんと尺を取ってたっぷりやればいいのになー、と思いました。

　続いて月組パロディ、「２０１５－竜宮城の恋人たち－」。プログラムの役名が一番おもしろかったです（笑）。演出は稲葉くん。
　『ドラゲナイ』の亀のまさおがハンス・ウラシマ・フォン・タロウありちゃんに助けられ、竜宮城に連れて行くと、彼はマリー・オトヒメットちゃぴと恋に落ちてしまい、仲間だった魚たちを塩焼きで食べたいと言い出す始末。「鯖は味噌煮で！」の注文に怯えるサバーランのカチャとか（笑）。ロベス・ピエイルカ珠城さんが「いつかイルカの私まで食べられてしまう…！？」と嘘くさく怯えて小さくなるのも笑えました。
　負傷していた亀はオラワカメわかばとワカメンプくらげちゃんの押す車椅子に乗ってよろよろ再登場し、革命を起こさねば…となるのですが、もうひとりの亀としてダンボール甲羅を装着したアルトワみやちゃんが現われてさらにカオスに…「♪私は亀と同じだ、アポロンだ」っておかしいやろ！
　「権利を行使する！」となってボディパーカッションするも、水中だから音が鳴らない！？（笑）で、だったらタンバリンで、となって最後は『ゴルジャズ』と東京公演のアピールでした。

　さらに休みなく専科コーナーに突入し、「琵琶法師のオイディプス王」。演出はダーイシ。やや寒かったかな―。
　３分しか場面の尺がないのでイシちゃん琵琶法師が『オイディプス王』の話を５０秒で語っちゃうんだけど、そのあとのコマの台詞がまずよくない。これは短いからおもしろいんじゃなくて単に早口でかつ聞き取れなくてつまらない。そのあとのマギーの台詞は正しいんですよ、早口でかつシンプルに『風共』のあらすじを語り、かつそのまとめ方が身も蓋もなくておもしろい…というギャグなんだから。でももういっちょ、となったときのまとめ方がつまらなくて笑えませんでした。
　てかみつるの爺さん芸が素晴らしすぎて心配になるレベルでした（＾＾；）。

　そのあとが客席参加コーナー。生徒が客席降りから二階席、三階席まで行ってサビの振り付けを教えてくれるというもの。私の席の近くはれいこにゆうりちゃんときどきまこっちゃんというスポットで、れいこの美人っぷりに本当に驚愕しました…！
　チギちゃんが一階から会場全体を見ていて、「揃ってますよー！　一体化してますよー！！」とか褒めてくれるのが楽しかったです。
　さらにトップ娘役四人の「Ｄｒｅａｍｇｉｒｌｓ」かっわ！！！
　そしてみっちゃんが『オーシャンズ１１』から「ＪＵＭＰ！」を、まぁ様が「世界に求む」を、ちぎちゃんが「ルパン三世のテーマ」を、まさおが『モーツァルト！』より「僕こそミュージック」をそれぞれ熱唱。ちぎちゃんのルパンジャンプが素晴らしかったし、まさおは本当に上手いわしみるわで泣きました。
　シメはイシちゃんの「愛の讃歌」。
　そしてパレード、再び主題歌と「ＴＡＫＡＲＡＺＵＫＡ　ＦＯＲＥＶＥＲ」そして「すみれの花咲く頃」。
　ごくスタンダードな黒燕尾になったあっきーがまたたいそう素敵でしたわん。

　しかし１００周年のときの１００曲メドレーも各曲が短すぎ慌ただしすぎてつらかったのですが、今回もやはりもっと曲数を減らして、各場面をもっとたっぷり見せた方がいいと思いました。もちろんその方がお稽古が大変なのかもしれないけれど…
　観ている側としては、３人くらいずつちまちま出して見つけたと思ったら二小節ほど歌っただけでもう引っ込まれるよりは、６人口、８人口のバックダンサーでいいから一曲たっぷり踊ってもらって、ゆっくり追わせてほしいです。
　たとえばプロローグとパレードの全員の主題歌、トップスターのＭＣと抽選会（今年はなかったな！）、トップコンビシャッフルデュエット、トップスターがその年の公演のこれぞという一曲を歌うソロ、トップ娘役たちだけの一曲…は定番として、各組の歌うまさん（たとえば今回ならとしちゃん、がおり、まこっちゃん、ずんちゃん）のソロで各組トップコンビが踊る場面とか、トップ娘役が組違いの二番手スターと組んで踊る場面とか、三番手スターと新進スター１０人とか１５人とかがズラリ揃って黒燕尾を一曲踊るとか、組違いで同期生を揃えて一曲歌うとか…ファンはそういう組み合わせの妙が観たいのだと思うし、それで十分なんじゃないのかなあ。
　私はタカラヅカ礼賛系の歌もけっこう好きですが、サビだけでなくちゃんと一曲歌って聞かせていかないと新しいファンに継承されていかないと思いますし、二番も三番もあるんだからもっとしっかり聞かせてほしいです。
　来年はもう少しおちついた、そしてより凝ったイベントになるといいなと願っています。新世紀を築くために常に反省と進歩を、たゆまぬ努力を、期待しています。ファンとして来年も熱く見守ります！