駒子の備忘録

観劇記と乱読日記、愛蔵コミック・コラムなどなど

宝塚歌劇雪組『銀二貫』

2015年11月28日 | 観劇記/タイトルか行
 宝塚バウホール、2015年11月24日マチネ。

 大坂天満の寒天問屋「井川屋」の主人・和助(華形ひかる)は、大火で焼失した天満宮再建のために寄進する銀二貫を懐に入れ、雪に覆われた伏見街道を大坂に帰る途中だった。そこに子供を連れた男が雪を蹴散らしながら現れる。そこへひとりの若侍が父の仇だと立ちはだかった。和助はその仇討ちを銀二貫で買わせてほしいと申し出るが…
 原作/高田都、脚本・演出/谷正純、作曲・編曲/吉崎憲治、植田浩徳、振付/山村友五郎。進撃の95期のひとり、月城かなとの初バウ主演作、全二幕。

 原作小説は読みました。ドラマは未見。好評だったので楽しみに出かけました。が…残念ながらあまり感心しませんでした。
 意外にも台詞に芸がないというか小説のまんまで、舞台で聞くと冗長だったり意味が取りづらかったりしましたし、小説を読んでいないとわかりづらかったり話についていきづらかったりするのではないだろうか、とヒヤヒヤしました。もっと丁寧に繊細に構成してほしかったです。
 それから、原作も実で淡々とした話なんだけれど小説は文体で読ませるわけですが、舞台ではもう一工夫欲しかったです。曽根崎心中を挿入するのは舞台らしくておもしろい趣向だったと思うのだけれど(お初の桃花ひなちゃんが素晴らしい!)、銀二貫というお金の価値を知らしめようという意図はわかるけれどやはりこれはお金の話というより色恋と生き死にの話の気がして、ちょっとねじれて感じました。そしてこの部分以外、舞台らしい翻案やアイディアというものが感じられなかった気がします。
 去年のラスト遠征だった『アルカサル』が漫画まんまで舞台としてNO工夫だったため怒り狂った私でしたが、今回もちょっとそれに近いものを感じてしまいました…
 一幕ラストも、火事で呆然とする主人公のところに幕が下りても気持ちよく拍手しづらいので、火事のあとヒロインが行方知れずになって彼女のことを歌ったところで幕、とかでもよかったのではないでしょうか。
 あと、歌詞と音楽が仰々しすぎる、大味で芸がなさすぎる。せっかく間に緊密なお芝居が構築されても、歌になると途端に涙が引っ込みました。
 せっかくのれいこちゃんの初バウ主演作、もっといい仕事をしてもらいたかったですよ谷先生…

 しかし生徒は素晴らしかったです。
 れいこは役にぴったり! 清々しくて素敵だったし、優しくて丁寧なお芝居をしますよね。
 くらっちも私は好きです。上手いし可愛いと思いました。ヒロインタイプに収まりきらないきらいは感じなくもないけれど、ヒロインができないとかアクが強すぎる、キツすぎるとかは私はまったく思わないのです。あの長く難しい台詞をきちんとこなす力量はさすがだと思いました。
 泣かされたのはあすくん。太夫の歌も良かったけれど梅吉としてもソロがあるとは思っていなくて…これがまた本当に真情がこもっていて熱い歌声で美声で、ダダ泣きでした。いい役者さんだよねえ、いいスターさんだよねえ。
 そしてなんといってもじゅんこさんが本当に素晴らしい。みつるもよかった。
 亀吉の真條まからくんが聞いてはいたけど本当に上手くて、真地くんもよくって彩みちるちゃんもよくって、そしておおおおって登場のがおりがまた素晴らしくよくって。桃ひなちゃんはお広もよかった。
 おおきに、ありがとうございます、という大坂言葉の美しさが染みました。フィナーレのダンスみたいなものはなくて、ラストシーンがそのままラインナップになるような綺麗な祝言場面には感動しました。
 こういう部分はよかっただけに、もったいない…とじれじれ観ましたが、みんなが晴れやかな表情をしていて、きびきびと楽しそうに演じていたので、よかったです。雪組も安泰ですねえ、次の本公演も楽しみです。だからチケットの神様、よろしくです…
コメント (2)    この記事についてブログを書く
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 『ヘッズ・アップ!』 | トップ | マリインスキー・バレエ『愛... »
最新の画像もっと見る

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
組子を誇りに (とおやま)
2015-12-12 00:48:24
少しご無沙汰です。
何と言っても桃花ひなちゃんのこの世のものとは思えない美しさに、深く感動した公演でした。
本当に人なのか、人形なのか、舞台を観ているのか、夢なのか。
あの姿を観たいがために、迷っていた2回目の遠征を決行しました。

あすくんは、組配属後の初舞台「マリポーサの花」の時から、気になる生徒でした。
組ファンの間では実力派として知れ渡っているのに、
小劇場公演で主要キャストに入ったのは初めてのことです。
そして、思った以上の素晴らしい演技と歌を披露しました。
良かったなあ、本当に。
もっともっと活躍する姿を観たいので、頑張ってほしいと思っています。

実は初見で「あと1回観れば十分かも」という風にも思ったんです。
駒子さんと同じように、作劇はイマイチと思ったので。
まあ、でも2回目を観て、生徒の姿に改めて感銘を受けて、結局4回観劇しました。

そうそう、私、愛すみれちゃんは95期で最も達者な娘役と思っているのですが、今回も常に安心して観ていられました。

全ツ組にも、びっくりするほど下手な生徒は一人もいなくて、組ファンとして本当に頼もしく思います。
ご無沙汰です! (とおやまさんへ)
2015-12-15 13:57:02
あすくんは新公でももっと使われてほしい生徒さんでしたよね…
これからさらに活躍の場が与えられることを祈っています。
このチケ難公演を4回もご観劇とはうらやましい。
今年は『アル・カポネ』、『銀二貫』そして全ツと、
雪組さんのチケットが取りづらくてヒヤヒヤさせられました。
今年も去年に引き続きなんとか全演目観られたのでよかったです…

全ツ感想をまとめたら、またいらしてくださいませ~

●駒子●

コメントを投稿

観劇記/タイトルか行」カテゴリの最新記事