駒子の備忘録

観劇記と乱読日記、愛蔵コミック・コラムなどなど

『カントリー』

2017年07月14日 | 観劇記/タイトルか行
 DDD青山クロスセンター、2017年7月13日19時。

 真夜中に夫(伊達暁)は眠る女(南沢奈央)を腕に抱えて帰ってきた、妻(大空ゆうひ)と子の待つ美しい家に。夫が出かけた家で女は目を覚まし、妻に尋ねる。それぞれの会話に縁どられ、浮かび上がる真実とは…
 作/マーティン・クリップ、翻訳/高田曜子、演出/マーク・ローゼンブラット。2000年ロンドン初演、全1幕。

 初日を観た方の感想の多くが「難解で…」というものだったようでしたが、私は特にそうは思いませんでした。
 以前にもこういうタイプの翻訳劇を観たことがあって、つまりそれも会話劇で、「あんたたちもうちょっとおちついてゆっくりきちんとしゃべればその話5分で終わるよ」と口出ししたくなる話でした。
 もちろん、人は嘘もつけばごまかしもするし、素直に応えなかったり皮肉っぽく言っちゃったり言い間違えたり誤解したり揚げ足取ったりわざと話を逸らしたりしながらしゃべるもので、だから話が進まないのであり、その進まなさやそういう会話をすることでのキャラクター同士の緊張感みたいなものに眼目を置いている芝居なのでしょうから、そんなことを言うのは野暮なのです。それはわかっています。
 辛抱強く会話を聴いていれば、順に状況は見えてきます。細かいところはあいまいでも、だいたいのところがわかればだいたいのことがわかるからそれでいいのです。私はもっと『藪の中』みたいな物語なのかと思っていたんですけれど、別にそんなギミックはありませんでした。夫と妻、妻と女、女と夫という、常にふたりずつの会話が展開される中で、ちょっとした嘘やごまかしがあっても三人のだいたいの事情は窺えます。
 そして舞台は再び夫と妻の場面に戻り、二か月たっているようなので状況もいろいろ違うようなんだけれど会話の流れは最初の場面を踏襲するかのようで、もちろんそれはわざとそう戯曲が書かれているのであり、つまりこのふたりはどんな状況であれ結局のところ常にこういう会話をし続けるふたりなんだな、ということが示されます。
 けれどこの場面にはもうレベッカの陰はありません。代わりに別の女がいるのかもしれない。逆にコリンの側に誰かがいるのかもしれない。だからかつてのコリンの台詞のお株を奪うようなリチャードの台詞で話が終わるのかもしれない。あ、これは、と引っかかったところで動きが止まり暗転し、話が終わったのはいかにも鮮やかでした。
 ふたりの立場は逆転したのかもしれない。そもそもこのふたりはそうした共依存みたいな関係をずっと紡いできたのかもしれない。でもそうでないのかもしれない。タイトルは田舎という意味のカントリーであり都会と対比されているようでもあり、舞台を観ている限りでは私にははっきりとはわかりませんでしたが夫妻はイギリス人でレベッカはアメリカ人の設定だそうだから出身国という意味もあるのかもしれませんが、そういう対比の究極の形として男と女というものがあるのかもしれません。そして彼女はついにこのカントリーになじんだということなのかもしれない
 でもそうでないのかもしれない。わからない。作品が終わったのはわかったんだけど、「で、オチは?」と言いたくなりました、私はね。
 こんなことを示すためにこんな胡乱な台詞劇を仕立てないといけないのかなあ?とかついつい思っちゃいましたし、こんな胡乱な台詞劇を仕立ててまで言うべきほどのことかなあソレ?と思ってしまったのでした。
 なんというか…大山鳴動して、というのとはちょっと違うのかもしれませんが…うーん。
 役者は三人ともとても素晴らしかったです。台詞が明晰で、ちゃんとその役柄に見えて、自己肯定感の弱さにイラつかされたりふてぶてしさにムカつかされたり感じの悪さにカチンとこさせられました。こちらの心にざらりと触れ、こちらの心を揺さぶる演技をしてくれました。
 でもなあ…だからこそ、「で?」としか私は思えなかったので…残念でした。でもいかにも大空さんが選びそうな作品だなとは思いました。演技の方向性としてはこういう芝居に向いているんだとも思います。
 何度も観ればまた違った感想も出てくるのかもしれませんが、改名のときに記事にしたように、私は大空さんの出演作を出演するからという理由では、あるいは宝塚歌劇以外の公演は、そうそうリピートはしない、と決めたので、私のこの作品の観劇はこれで終わりなのでした、すみません。イヤ別に誰に謝ることでもないんでしょうけれど…一度の観劇での浅薄な感想としては、こんなところなのでした。




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