東大生の国語教室 授業報告

「東大生の国語教室」での授業内容を、ブログを通じて毎回ご報告します。

2004センター漢文&2004東大

2006-04-23 02:09:47 | Weblog
今回の授業では、2004年度センター
試験第4問(漢文)と、2004年度
東京大学の過去問第四問(現代文)を
やりました。

漢文の本文は、難しい語句の意味が
<注>で説明されており、じっくりと
読めばそれほど難なく読解できたと
思います。

古文や漢文の問題での<注>は出題者
からのヒントです。存分に活用して読解に
役立てなければなりません。


今回の本文中で、特に注意すべき基本表現は次の二つです。知らなかった人は必ず覚えるようにしましょう。
 
 ① 「安クンゾ~ンヤ」(いずクンゾ~ンヤ)=「どうして~であろうか、いや~でない」 ←反語

 ② 「使AB」(AヲシテBセシム)=「AにBさせる」 ←使役

使役の表現としては、「使」の字の他に「令」や「教」や「遣」が使われることもありますが、いずれも読み方は同じです。ついでに覚えておきましょう。


次に東大2004年第四問ですが、この問題は、本文の趣旨をつかむことができたかどうかが肝心です。

センター試験をはじめ、現代文では傍線部の前後を読むだけで解けてしまう問題(つまり、傍線部の前後に解答のヒントが隠れている問題)が多くあります。

しかし、皆さんに気をつけていただきたいのは、傍線部付近を読むだけでは解けない問題もあるのだということです。
今回の過去問の場合、問二がその典型でした。

では、そういう厄介な問題を解く鍵は何か?

それは、本文全体における筆者の立場と主張を正確に捉えることです。

この文章で筆者は、写真には
「世界の不気味さをとりだす能力がある」
と主張しています。こうした立場の筆者が
批判しているのは、自分の内面や思想を
表現するものとして写真を理解する立場です。
世界とは、人間の意識を越えた未知のものであり、写真に写し出されたものと写真家の思惑の間にはずれが生じる。そこに写真の面白さがある、というのが、筆者の考えです。

ここのところをよく理解した上で
問題文に取り掛からなければ、
正解は覚束ないでしょう。

問題文と授業で配布した解答例とを
もう一度読んでみてください。
問二~問四で訊かれていることは、
結局全て、上記の内容に関わっている
ことに気づきましたか?
出題者は、複数のアプローチを試みながら、受験生が本文の趣旨を正確に捉えているかどうかを試しているのです。

現代文の問題では、瑣末なテクニックだけで解けてしまうものを多くあります。
しかし、高度な問題は本文の正確な
理解なくしては決して解けませんし、
逆に正しく文章を読む力さえあれば、
妙な技術論を身につけていなくとも
どんな問題にも対応できます。

ただ、記述問題においては、
読む力と共にどうしても高度な書く力が
必要となります。
決められた時間内で、ポイントをしっかり
押さえた答えを簡潔にわかりやすく書く
のはものすごく難しいことです。
我々教師は、受験生に与えられる
時間よりもはるかに多くの時間を
費やして解答例を作っています。
記述問題はそれだけ難しいものですので、皆さんが苦手意識を持つのは当然のことです。

それでも、面倒臭がらずに自分なりの答案を作り、過ちを直し、より良い解答を書くにはどうすれば良かったのかを学んでいく経験を積み重ねることで、記述が確実に得意になっていくはずです。

得意になれば、選択問題よりも記述問題の方が楽しくなってくることでしょう。
記述問題が得意になったときにはじめて、自信をもって国語が得意科目だと言えるようになります。

今後の授業を通じて、記述問題への苦手意識を克服し、国語を皆さんの確かな自信科目にしてください。