宇宙の歴史は、銀河の衝突による銀河自体の形の変化を見せてくれています。宇宙の始まりは、渦巻銀河が主流で、楕円銀河は少なかったそうです。ところが、年代が古い宇宙の銀河は、楕円銀河が数を増やし、渦巻銀河が少なくなっているのです。というのは、銀河同士の衝突が原因だそうです。
私たちの住む天の川銀河は、渦巻銀河なので、あと何年か、何百年か、何億年か分かりませんけれど、いくつかの銀河の衝突によって楕円銀河に生まれ変わるかもしれないのです。
このとき太陽系にどんな衝撃が訪れるか分かりませんが、地球が残っていられることは少ない確率であると思うのが、もっともな事です。地球最後の時は、すぐなのか、限りなく遠い未来なのか、誰も分かりません。
私は、最後が何時でもそれは仕方の無いことだと思います。宇宙の全体が刻々と変化し続けているのですから、これを変えることなどありえないのだと考えます。
「銀河の夢」
いんとうまさみ
垣根の向こうに潜む影
隠れていないで出て来てごらん
僕と友達になってね
凶暴な狼が現れて
俺に友達なんかいねえ
お前を食ってしまうだけだ・・・と言う
そんなこと言わないで
仲良くしようよ
遊ぼうよ
可愛さ一杯詰め込んで
よちよち歩きのあかちゃんたちよ
僕の周りに寄っといで
銀河の赤ちゃんは十億歳
同い年の銀河達
あるとき手を繋ぐ夢を見る
生まれ変わるよ
成長するよ
お父さんもお母さんも分からない
とんでもない大きさの
銀河の兄弟が出来ちゃうよ
元の姿はなくなって
重くなったら止まらない
銀河の真ん中に
ブラックホールも作っちゃうよ
何でもかんでも飲み込んで
君だって消しちゃうよ
仲良くなれるのは今だけだからね
心 恋 虫
雲 乃 平八郎
十
(夜もだいぶ更けてきたが、翁の話はまだ続いた。)
この村には戦国時代の合戦に駆り出されていった若者が大勢いた。戦いが終わり、村の若者も一人また一人と帰ってきた。若者が恩賞の銭をもらって帰った家では、盛大にお祝いの宴が開かれた。近隣の者が招かれ、呑んで唄い踊りのにぎやかな音と大きな声が遠くまで聞こえてきた。しかし、まだ戻らぬ家では、ひっそりと息子の安否に心を痛めている母がいた。
やがて庄屋からの知らせでほとんどの家では消息が知れた。そのまま仕官した者もいれば、戦死した者もいた。傷ついても帰って来た者の家はまだ良いが、戦死した者、行方知れずの者の家では深い悲しみが覆っていた。
そんな中ある若者の母は、どうしても息子に会いたいと翁を訪ねてきた。
「いくら待っても息子が帰ってこねえ。行くえ知れずの息子がどうしているのかなんとしても知りてえだ」
母親の切なる願いに、翁は同情して家に迎え入れた。
「お母さん。息子さんのことは火焔池の心恋虫が教えてくれるから。夢の中で会えますよ」
「ありがとうごぜえます」
母は、何度も何度も平伏してお礼を言った。
「ただし、どんな結果になっていたとしても、息子さんについて行っては駄目だよ。夢の中の事は全て本当の事だ。だから息子さんがお別れを言って、池の中へ戻っていっても決して後を追わないように。もし後を追って池に一歩でも入ったら、お母さんももうこの世には戻れねえからな」
「分かっただ。決してついて行かねえ」
母親の心は今この世にあるとは思えなかった。何を聞いても上の空でただ息子の安否ばかり考えていた。
夜が来て皆が寝静まる時刻になると、池の水面に泡がいくつも立ってきた。その泡の一つ一つに心恋虫が入っていて、泡が割れると一匹ずつ次から次へと現れて、池の上は眩いばかりの光に包まれた。
「ヒャッホー。一年ぶりだ。また来たよ」
「そうね。楽しいわ」
心来虫たちは、池から出るなり嬉しそうに叫んでいた。
池の上を心恋虫がゆらりゆらりと炎のように揺れている様は、真に幻想的で、この世のものとは思われないものであった。池の周りで村人たちが目を奪われている事などお構いなく、虫たちが楽しそうに心恋虫のダンスを始めていた。
「心虫が来たよ
僕の名前はラフィオだぞ
心の願いを言ってみな
何でも叶うよ
きっとだよ
悪い心のない人の
願いと希望に応えるよ
恋の虫が来たよ
私の名前はラフィアよ
心の秘密を言ってみて
誰でも逢えるよ
きっとだよ
悪い心のない人の
願いと希望に応えるよ
心恋虫がやって来た
心恋虫唄歌い
火炎ダンスを踊ってる
見てる人も輪になって
池の周りで踊ろうよ」
とびっきりの唄とダンスを心恋虫が披露してくれているのを見ていると、自然と身体が動いてしまう。池の周りで村人たちが一緒に踊っていた。
「おっかあ。おらだ。帰ってきたぞ」
夢の中に息子が池の中から虫に囲まれて母の元にやってきた。息子が池から上がるのが待ちきれないとばかりに母は、手を差し出して息子の袖口をつかむと、力いっぱい手繰り寄せた。
「ああ、太吉。よく戻った。良かった。良かった。生きて帰っただな。もう戦なんぞ行くじゃねえ。おれは心配で心配で、もう何日も飯を食うとらん」
「おっかあ。ごめん。心配かけたな。けど、戦は終わった。勝ったぞ。わしらの殿様が勝ったんだ。俺たちの働きのおかげだって言っていたぞ」
母は太吉を抱き寄せて背中を何度も叩いていた。母の目からは涙が、大粒の涙が流れていた。
「そうか、良かったな。もうどこにも行くんじゃないぞ」
太吉と母は、暫く何も言わず抱き合っていた。しかし、太吉は困ったような顔をして、泣いている母にしんみりと言った。
「おっかあ。ほんとのこと言おう。俺、もう村にいられねえんだ」
「何言ってんだ。おるでねえか。ちゃんとそこにおるでねえか」
母は、太吉の着物の袖をつかみながら、絶対離すものかと、力いっぱい引っ張っていた。
またどこか行ってしまわないようにと、一生懸命引っ張っていた。
「早く家さ戻ろう。な・な・早よせいよ」
母の気持ちが、太吉には痛いほど分かる。だが、死んだ自分は、この世には戻れない。今は心恋虫のおかげで、一緒にいられるが、夜明けがくる前に別れなければならない。
「おっかあ。俺も、どこにも行きたくねえ。この村でおっかあたちと、一緒に土耕してえ。稲や芋こさえて、嫁も貰って暮らしてえ」
「それがいい。そうすんだ」
「だけんども、駄目なんだ」
「駄目じゃねえ。何が駄目なんじゃ」
母はとっくに気が付いていた。息子は死んだんだと。だけどそれを肯定したくなかった。受け入れられなかった。待って待って待ち続けた自分が、なんとも惨めになってしまうから、どうしても信じたくなかった。
やがて、東の空がうっすらと明るくなってきた。
「おっかあ。俺。行かなくちゃ」
「行くって、どこへだ?」
「あの世だ。もう戻ってこねえ」
「駄目だ。駄目だ。絶対離さねえ」
しっかりとつかんでいたはずの袖が静かに離れていった。握り締めているのにするっと離れていった。母は抱きつこうと追いかけた。母は夢の中布団を出て太吉を追って裸足のまま外へ出て行った。
「おっかあ。来ちゃ駄目だ」
「どこへ行くんだ。行っちゃなんねえ」
「ついてくんなよ。おとうも、妹のお美津も居るんだからな。おっかあが俺と来たら、二人はどうすんだ」
「分かった。分かった。分かったから行くな」
「さよなら」
太吉は、そのまま池の中へ虫たちに囲まれて行ってしまった。
母は、涙ながらにじっと見ていた。暫く佇んでいたが。何を思ったか、いきなり池に向かって走り出した。
明るくなってきたので翁も外へ出て来た。そこで母の姿を見て懸命に声を掛けた。
「駄目じゃ。行くな」
その声も聞こえないらしく、母は、池の中へ足を踏み入れた。その時もう虫の姿はなかったのに、池の中から光の玉が母を包んだ。光の玉は、虫の群れであった。そのまま母を池の中へ連れて行ってしまった。母は、翁のほうを振り返り心からの笑みを送りながら頭を下げた。
その日から何年もたって、翁は久子から太吉と母が戻ってくると知らされた。
この村を守り、外界からの侵略を防ぐために、太吉にその役目を申し付け、母共々にこの世に帰すことにしたと言うのである。それからずっと、この村の秘密は守られてきた。そのため村に通じる道を閉ざしたのは太吉だった。太吉はよそ者の侵入を防ぐために、山に暮らすようになった。太吉の息子が、今も山を守っている。
私たちの住む天の川銀河は、渦巻銀河なので、あと何年か、何百年か、何億年か分かりませんけれど、いくつかの銀河の衝突によって楕円銀河に生まれ変わるかもしれないのです。
このとき太陽系にどんな衝撃が訪れるか分かりませんが、地球が残っていられることは少ない確率であると思うのが、もっともな事です。地球最後の時は、すぐなのか、限りなく遠い未来なのか、誰も分かりません。
私は、最後が何時でもそれは仕方の無いことだと思います。宇宙の全体が刻々と変化し続けているのですから、これを変えることなどありえないのだと考えます。
「銀河の夢」
いんとうまさみ
垣根の向こうに潜む影
隠れていないで出て来てごらん
僕と友達になってね
凶暴な狼が現れて
俺に友達なんかいねえ
お前を食ってしまうだけだ・・・と言う
そんなこと言わないで
仲良くしようよ
遊ぼうよ
可愛さ一杯詰め込んで
よちよち歩きのあかちゃんたちよ
僕の周りに寄っといで
銀河の赤ちゃんは十億歳
同い年の銀河達
あるとき手を繋ぐ夢を見る
生まれ変わるよ
成長するよ
お父さんもお母さんも分からない
とんでもない大きさの
銀河の兄弟が出来ちゃうよ
元の姿はなくなって
重くなったら止まらない
銀河の真ん中に
ブラックホールも作っちゃうよ
何でもかんでも飲み込んで
君だって消しちゃうよ
仲良くなれるのは今だけだからね
心 恋 虫
雲 乃 平八郎
十
(夜もだいぶ更けてきたが、翁の話はまだ続いた。)
この村には戦国時代の合戦に駆り出されていった若者が大勢いた。戦いが終わり、村の若者も一人また一人と帰ってきた。若者が恩賞の銭をもらって帰った家では、盛大にお祝いの宴が開かれた。近隣の者が招かれ、呑んで唄い踊りのにぎやかな音と大きな声が遠くまで聞こえてきた。しかし、まだ戻らぬ家では、ひっそりと息子の安否に心を痛めている母がいた。
やがて庄屋からの知らせでほとんどの家では消息が知れた。そのまま仕官した者もいれば、戦死した者もいた。傷ついても帰って来た者の家はまだ良いが、戦死した者、行方知れずの者の家では深い悲しみが覆っていた。
そんな中ある若者の母は、どうしても息子に会いたいと翁を訪ねてきた。
「いくら待っても息子が帰ってこねえ。行くえ知れずの息子がどうしているのかなんとしても知りてえだ」
母親の切なる願いに、翁は同情して家に迎え入れた。
「お母さん。息子さんのことは火焔池の心恋虫が教えてくれるから。夢の中で会えますよ」
「ありがとうごぜえます」
母は、何度も何度も平伏してお礼を言った。
「ただし、どんな結果になっていたとしても、息子さんについて行っては駄目だよ。夢の中の事は全て本当の事だ。だから息子さんがお別れを言って、池の中へ戻っていっても決して後を追わないように。もし後を追って池に一歩でも入ったら、お母さんももうこの世には戻れねえからな」
「分かっただ。決してついて行かねえ」
母親の心は今この世にあるとは思えなかった。何を聞いても上の空でただ息子の安否ばかり考えていた。
夜が来て皆が寝静まる時刻になると、池の水面に泡がいくつも立ってきた。その泡の一つ一つに心恋虫が入っていて、泡が割れると一匹ずつ次から次へと現れて、池の上は眩いばかりの光に包まれた。
「ヒャッホー。一年ぶりだ。また来たよ」
「そうね。楽しいわ」
心来虫たちは、池から出るなり嬉しそうに叫んでいた。
池の上を心恋虫がゆらりゆらりと炎のように揺れている様は、真に幻想的で、この世のものとは思われないものであった。池の周りで村人たちが目を奪われている事などお構いなく、虫たちが楽しそうに心恋虫のダンスを始めていた。
「心虫が来たよ
僕の名前はラフィオだぞ
心の願いを言ってみな
何でも叶うよ
きっとだよ
悪い心のない人の
願いと希望に応えるよ
恋の虫が来たよ
私の名前はラフィアよ
心の秘密を言ってみて
誰でも逢えるよ
きっとだよ
悪い心のない人の
願いと希望に応えるよ
心恋虫がやって来た
心恋虫唄歌い
火炎ダンスを踊ってる
見てる人も輪になって
池の周りで踊ろうよ」
とびっきりの唄とダンスを心恋虫が披露してくれているのを見ていると、自然と身体が動いてしまう。池の周りで村人たちが一緒に踊っていた。
「おっかあ。おらだ。帰ってきたぞ」
夢の中に息子が池の中から虫に囲まれて母の元にやってきた。息子が池から上がるのが待ちきれないとばかりに母は、手を差し出して息子の袖口をつかむと、力いっぱい手繰り寄せた。
「ああ、太吉。よく戻った。良かった。良かった。生きて帰っただな。もう戦なんぞ行くじゃねえ。おれは心配で心配で、もう何日も飯を食うとらん」
「おっかあ。ごめん。心配かけたな。けど、戦は終わった。勝ったぞ。わしらの殿様が勝ったんだ。俺たちの働きのおかげだって言っていたぞ」
母は太吉を抱き寄せて背中を何度も叩いていた。母の目からは涙が、大粒の涙が流れていた。
「そうか、良かったな。もうどこにも行くんじゃないぞ」
太吉と母は、暫く何も言わず抱き合っていた。しかし、太吉は困ったような顔をして、泣いている母にしんみりと言った。
「おっかあ。ほんとのこと言おう。俺、もう村にいられねえんだ」
「何言ってんだ。おるでねえか。ちゃんとそこにおるでねえか」
母は、太吉の着物の袖をつかみながら、絶対離すものかと、力いっぱい引っ張っていた。
またどこか行ってしまわないようにと、一生懸命引っ張っていた。
「早く家さ戻ろう。な・な・早よせいよ」
母の気持ちが、太吉には痛いほど分かる。だが、死んだ自分は、この世には戻れない。今は心恋虫のおかげで、一緒にいられるが、夜明けがくる前に別れなければならない。
「おっかあ。俺も、どこにも行きたくねえ。この村でおっかあたちと、一緒に土耕してえ。稲や芋こさえて、嫁も貰って暮らしてえ」
「それがいい。そうすんだ」
「だけんども、駄目なんだ」
「駄目じゃねえ。何が駄目なんじゃ」
母はとっくに気が付いていた。息子は死んだんだと。だけどそれを肯定したくなかった。受け入れられなかった。待って待って待ち続けた自分が、なんとも惨めになってしまうから、どうしても信じたくなかった。
やがて、東の空がうっすらと明るくなってきた。
「おっかあ。俺。行かなくちゃ」
「行くって、どこへだ?」
「あの世だ。もう戻ってこねえ」
「駄目だ。駄目だ。絶対離さねえ」
しっかりとつかんでいたはずの袖が静かに離れていった。握り締めているのにするっと離れていった。母は抱きつこうと追いかけた。母は夢の中布団を出て太吉を追って裸足のまま外へ出て行った。
「おっかあ。来ちゃ駄目だ」
「どこへ行くんだ。行っちゃなんねえ」
「ついてくんなよ。おとうも、妹のお美津も居るんだからな。おっかあが俺と来たら、二人はどうすんだ」
「分かった。分かった。分かったから行くな」
「さよなら」
太吉は、そのまま池の中へ虫たちに囲まれて行ってしまった。
母は、涙ながらにじっと見ていた。暫く佇んでいたが。何を思ったか、いきなり池に向かって走り出した。
明るくなってきたので翁も外へ出て来た。そこで母の姿を見て懸命に声を掛けた。
「駄目じゃ。行くな」
その声も聞こえないらしく、母は、池の中へ足を踏み入れた。その時もう虫の姿はなかったのに、池の中から光の玉が母を包んだ。光の玉は、虫の群れであった。そのまま母を池の中へ連れて行ってしまった。母は、翁のほうを振り返り心からの笑みを送りながら頭を下げた。
その日から何年もたって、翁は久子から太吉と母が戻ってくると知らされた。
この村を守り、外界からの侵略を防ぐために、太吉にその役目を申し付け、母共々にこの世に帰すことにしたと言うのである。それからずっと、この村の秘密は守られてきた。そのため村に通じる道を閉ざしたのは太吉だった。太吉はよそ者の侵入を防ぐために、山に暮らすようになった。太吉の息子が、今も山を守っている。









