九重自然史研究所便り

昆虫採集と観察のすすめ

初冬のアケビコノハの迅速ウォーミングアップ

2016-10-19 18:32:47 | 日記
初冬のアケビコノハの迅速ウォーミングアップ
ビークマークを解析した論文を書いた時、ムクゲコノハとアケビコノハの威嚇行動に言及し、後者が後翅の巴紋を露出し翅をふるわせている写真を示した。その観察は2003年11月21日、つまり初冬の朝、海抜高度830mの大分県九重町地蔵原の九重自然史研究所内で行ったもので、両種とも寒さのため飛び立つことができないようだった。
 その観察の後、もっと詳しく調べようと、両種が晩秋から初冬の夜、飛来するのを待った。私は、この両種は成虫越冬すると考えており、特にアケビコノハは初冬の暖かい日は稀に灯火に飛来する。しかし観察しようと待ち構えていると、なかなか来ない。そして4年近く待ったかいがあって2007年11月アケビコノハが早朝、白布に止まっているのを発見した。それはまるで羽化したばかりのような新鮮な個体で、頭部を下向きに向けて止まっていた(写真2)。これはこの種の正常な静止姿勢である。実験方法はきわめて簡単で、止まっている個体を指で突くことだ。夏の個体はつつかれると直ちに飛び去るが、寒い時期は白布に止まったまま翅を開くか(写真1)、翅を閉じたまま落下する。落下したガは動かず擬死しているのでさらに刺激した結果1、次のようなことが判明した。2007年11月7日午前7時、外気温は摂氏7度であった。この朝、白布に止まっていた3頭はいずれも静止姿勢のまま落下した。地表に落ちたガは擬死状態を保つが、指で突くと翅を開き地面を転げまわった(写真3-8)。つまり翅を開き前後翅を強く腹方に曲げて、転倒し仰向けになり、さらにそのまま激しく羽ばたきを続けるのでアケビコノハの体は地面上をジグザグに動くか、あるいは大きな半円または楕円を描いて動き回った。仰向けになったり、うつ伏せになる運動なので、この運動は純粋に羽ばたき運動だけで、脚は縮めたままだった。外気温が7°付近ではこの運動は非常に速いので被写体がすぐ画面から飛び出すので写真撮影が難しかった。
同年11月8日午前6時30分、外気温が摂氏3度になった時はアケビコノハの転がりまわる運動は前日より緩慢であった。それで仰向き姿勢の写真も撮れた。その個体は転げまわってもすぐ正常姿勢に戻り前後翅を小刻みに振動させる運動を長く続けようとした。
さらに11月10日午前7時外気温が氷点下3度になった朝は、湿気を含んだ白布はバリバリに凍っていた。その朝もアケビコノハ、ウスタビガ、ヒメヤママユ、ヤマダカレハ、オビガ、クワコの6種が白布に止まっていた。彼らは触ってもまったく動かなかったが、朝日がさし暖かくなると動き始めた。
アケビコノハの激しい転がり運動は翅の表面や裏面の模様と色を天敵に見せ驚かす作戦だが、同時に迅速ウォーミングアップをする時間を稼ぐ目的もある。転げまわっているアケビコノハを眺めていると、突然、飛び去る。
私はドミニカ共和国で海岸のリゾ-トホテルにたびたび泊まった。そして夜明け前に起きだし街灯めぐりをしてスズメガを多数採集した。熱帯や亜熱帯の海岸や高山では夜明け前後の冷え込みが激しく、朝スズメガのような大型のガを棒で突いても飛べずもがきながら落ちてくる。
文献 宮田 彬(2008)アケビコノハの威嚇行動、誘蛾燈No. 191,19-22.
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