九重自然史研究所便り

昆虫採集と観察のすすめ

独居性と集合性―知られていなかった昆虫の幼虫が作る社会2

2015-02-23 10:17:09 | 日記
 キバラヘリカメムシは巣を作らないので、集団をつくっていても、集団か、それとも集団でないか境目がはっきりしません。けれども集団をつくる虫は集団を維持するために糸を吐いて巣をつくる種が多いので、よく見られる集団の巣を紹介しましょう。これは大蛾類のカレハガ科に属するオビカレハの幼虫が作る巣です。九重昆虫記第3巻40ページに卵、幼虫、成虫を紹介しました。大分県地蔵原高原では主にノイバラに発生し、上の図版のような糸で綴られた巣の中に幼虫が入っています。卵は小枝を環状に巻くように産卵されます。裁縫に使う指ぬきのような形です。1雌が産んだ卵が孵化し、兄弟姉妹が共同で製作したのがこの巣です。二枚目の写真はもう少し大きくなった時期の幼虫が入っています。しっかりと糸を張っているので内部の様子はわかりません。餌を食べに行く時は行列してでかけ、その際、糸を張っているので元の巣に戻ってきます。しかし、4齢か5齢になると巣をでて独居するようになります。このような血縁集団の造巣性は地蔵原のような寒冷な地域では、芽吹いてからもいつ寒波が襲い氷雨に打たれて死ぬかわからないので、防寒用の巣を作るのだと思います。無数の幼虫が団塊になっていれば巣内の温度も高くなり若齢期の死亡率を下げることができるでしょう。



最新の画像もっと見る

コメントを投稿