九重自然史研究所便り

昆虫採集と観察のすすめ

コブハサミムシは巣を作る―その1

2015-02-17 12:27:35 | 日記
(2013年12月日本昆虫学会近畿支部大会で発表)
ハサミムシの専門家西川勝博士によると、全世界を見渡しても造巣性を持つハサミムシの記録は無いそうです。今日は九重山系で一番西に聳える涌蓋山(わいたさん)の中腹830mの地蔵原高原で、道路沿いのツリフネソウ群落から発見したコブハサミムシの巣についてお話しします。
12~13年間学会に出ていないので私を知らない人が多いと思うので初めに自己紹介します(図版2)。私は彦根東高校出身、1959年奈良学芸大学に入学しました。卒業直後、日浦勇さんから昆虫の新卒は特別講演することになっていると騙されてこの博物館(大阪市立自然史博物館)で「Orthosia属の話」という処女講演をしました。それから2年間奈良の私立東大寺学園の先生を務めた後、長崎大学熱帯医学研究所の助手募集に応募し、長崎に移りました。そこではマラリアなど寄生性原生動物を研究しましたが、長崎県生物学会の男女群島調査などに加わり、同学会から1976年に出版された「対馬の生物」の編集を担当しました。その時は、日浦さんからこの博物館所蔵の対馬産昆虫のカラー写真を多数提供して頂き、またその本の編集について数々の助言を受けました。
1979年に大分医科大学に転勤後は主に昆虫を研究し、2000年に定年に備えて九重自然史研究所を作り、2003年から九重山系で昆虫の生態観察に専念し、その成果を「九重昆虫記」で発表しています。大分県には昆虫標本を保存可能な博物館がありません。そこで私の本の読者が多い本州の真ん中、つまり日本の臍にあたる琵琶湖博物館に寄贈すれば、私がその本に書いた昆虫の同定に疑問を持った人が日本のどこからでも見に来やすい、交通の利便性を考えて同館に寄贈しました。九重山系で出会ったすべての目の昆虫を市販の図鑑で同定し、観察記録を残したので、同定間違いが起こることは避けられません。その虫の名前はどうであれ、私が観察した事実は決して揺らぎませんが、観察対象の標本を残すのは学問する者の良心です。
幸い元気なうちに75歳を迎えたので、今年(2013年)4月その標本類の整理・同定のため草津市に移りました。標本はすべての目を合わせると九重山系産だけでも3000種~4000種に達すると思います。みなさんに協力して頂いて「対馬の生物」以上の立派な地蔵原産昆虫目録を完成させたいと思います。滋賀県に住むのは半世紀ぶりで、今も浦島太郎のような気分です。


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