九重自然史研究所便り

昆虫採集と観察のすすめ

クワノメイガGlyphodes pyloalisの幼虫について追記1

2015-10-18 18:38:30 | 日記

クワノメイガGlyphodes pyloalisの幼虫について追記1
 東海大学出版会から2011年に出た「日本の鱗翅類」はメイガなど小ガ類から大ガまで約1000種のガの幼虫を美しいカラー写真で図示した本である。私もその著者の一人だが現役時代から定年後にかけておそらく出版に15年以上かかり、私は大ガ類を中心に約300種以上のカラー写真からなる図版とその説明を書いた。スズメガ、シャチホコガなど一つの科を一人で執筆した分と、シャクガ科やメイガ科など他の人が担当した部分で抜けている種を私が追加した分があり、しかもその説明の原稿も同一種だが現役のころ書いたものと、その後改めて書き直した新バージョンがあり、どちらも編集者が持っていたから校正段階ではなぜか一部古いバージョンが印刷されたこともあった。その上、校正段階ではちょうど白内障の手術直前で校正が大変苦痛であった。幸い、共著者のみなさんが担当外の部分の校正も徹底的に目を通してくれたので、私の担当した部分もそれほど校正ミスが出なかった。
 少し脱線したがメイガ科は吉安裕博士が担当し、私もいくつか追加した。その図鑑の1054ページの下の英文説明ではクワノメイガGlyphodes pyloalisとチビスカシノメイガG. duplicalisの幼虫が出ている。
 私の図版は九重昆虫記第8巻85ページに九重町地蔵原産クワノメイガGlyphodes pyloalisとして示したもので、写真1は摂食用の巣でその中に写真2~4の幼虫が入っていた。頭部は黄色がかった橙色、各体節の亜背部に黒斑があり、黒斑の間を背線が通っている。青みを帯びた濃色の幼虫であるが、写真3と4を比べると4の方が幾分淡色の幼虫である。食痕のない食樹の葉を巣と同じように折り曲げた繭を作り、その中で蛹化した。写真5は前蛹、6~7は蛹、8は羽化したクワノメイガである。琵琶湖博物館のカジノキでも同様の繭から同様な成虫が羽化したことは前に書いた。ところでこのガは吉安博士の図版486ではチビスカシノメイガとなっている。つまり吉安博士もこの前書いた和名の混乱事件の影響を受けて混乱し、英文説明ではGlyphodes pyloalisをクワノメイガとしたのに図版ではチビスカシノメイガを当てている。しかし私の幼虫は博士の図版486クワノメイガの幼虫よりも486のチビスカシノメイガに似ている。もしかすると成虫写真が入れ替わったらしい。私はもう一つクワノメイガの幼虫写真を持っているので次回に示そう。


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