12angels story~EXOの架空のお話とお喋り

EXOの架空のお話と、EXOについてのお喋り。

※使用しているお写真はお借りしております。

この森は永遠へ繋がっている・1(白い狼の森・番外編)

2017-04-05 | 白い狼の森・続編
初めて訪れる雨上がりの森は、どこか懐かしい匂いがした。

柔らかい木洩れ日がルゥハンの髪を金色に染め上げ、暖かな風がそれを揺らす。


「なんでオレなんだよ、」

と独りごちながら森の奥へ歩き進む。

(…まぁ、ジャンケンで負けたんだけど)

ルゥハンは、ある使命を持ってこの森の奥にひっそりと暮らすセフンを訪ねるのだが、誰が行くかなかなか話し合いでは決まらず最終的にそんな方法で決着をつけたのだった。
普段ならいつも隣にいてくれるはずのミンソクは店を休めなかった。

(俺が来たところで現状が変わるわけないっつーの)
(スホが百回言ってきかなかったことを、俺が言ってどうなるってんだ)

心の中で悪態をつきながら歩いていると、ようやく、こじんまりとしたロッジ風の小屋が見えてきた。

門のように、左右に常緑樹が聳え立っている。

その時は、それが何の樹かルゥハンは気にも止めなかった。

ただ真っ直ぐに歩き、その樹木を通りすぎ、小屋の扉を叩いた。



反応は無い。

(…くっそ、)

今日訪れることは知らせてある。

わざわざこんな遠い森の奥へまで足を運んだのに会えないで帰るわけにはいかない。

「おい、いるんだろ!俺だ、ルゥハンだ!」

それでも反応は無い。
だんだん腹が立ってきて、ドアまで蹴った。
もちろん、ここがもし街中ならばそんなことはしないが、人里離れた森の中だということを言い訳に。
けれど、そんな音も周囲の静寂に吸い込まれてしまう。



「相変わらず口も足癖も悪いな」


背後からする声に振り向くと、少女を抱き抱えたセフンが立っていた。


「…んだよ、居留守じゃなかったのかよ…」

ルゥハンは決まり悪そうに薄手のコートのポケットに両手を突っ込み、明後日の方角を見やった。


「散歩に行ってたんだ」

そう言ってセフンはドアを開けると、どうぞ中へ、と促した。

セフンが片腕で抱き抱えている少女と目が合うと、反射的にルゥハンは微笑んだ。

少女は表情を変えず、じっとルゥハンを見ている。

驚いているわけでもなく、
怯えているわけでもなく、
ただ、突然の訪問者を凝視している。

( …俺が微笑みかけて無反応なやつ、初めて見た…)

ルゥハンと『目が合う』だけで、百人が百人、何らかの反応をするのが常だった。ましてや『微笑みかけられる』と老若男女問わず、たいてい顔を赤くして目を逸らしたりするも のなのだ、人間は。

それは、人と関わるのが苦手な彼の苦痛でしかない時間を一瞬で変えてくれた『発見』だった。
ほんの少し微笑むだけで。
事は片付く。
その瞬間、自分は相手より優位に立つことができ、これ以上関わってもいい相手かどうか冷静に見極めるのだ。


…でも、どうやら今回は勝手が違うらしい…

(…まぁ、セフンの『娘』だからね…)

銀色の髪を背中まで垂らした少女をちらりと見やる。
ピンク色の細いリボンが両サイドに結わえてある。
自分で結わえたのか、セフンがやってあげたのか…少し気になったが、聞くことも出来ず、ルゥハンは「お邪魔します」と、と小さな声で言いながら部屋の中へ入っていった。


入るとすぐに、居間が広がっていて、掃除の行き届いた空間はとても居心地が良かった。


「今コーヒーでも淹れるから、適当に座ってて」

セフンにそう言われて、それなら、と椅子でなく、ソファに腰を下ろした。


正直、こんな森の奥の小屋なんて小汚なくて埃にまみれているに決まっているとルゥハンは思っていたし、その思い込みが潔癖性の彼の足取りを重くもしていた一因だったから、少し、気分が軽くなった。

もちろん、置かれているのは高価な調度品というわけではないが、革張りのソファは柔らかく、棚やテーブルはよく磨かれてツヤ光りしているし、ランプの傘にも埃は見られない。

ルゥハンが周囲を観察しているその間も、少女はセフンの首に腕を巻き付け離れようとしなかった。
セフンも片手で少女を抱きかかえながら、片方の空いた手で器用にコーヒーを淹れる準備をしている。

ルゥハンは思わず「手伝おうか?」と声を掛けた。

「いや、お気遣いなく。大丈夫、座ってて」

セフンの柔らかい声が意外だった。


(ちゃんと子育てしてるじゃん)
(…まぁ、子どもは人見知りすぎて難有りだけどな)

ぎゅっ、と、少女の視線がルゥハンに強く向けられるのがわかった。

ひぇ…

と、ルゥハンは首をすくめた。

自分も含め、感覚が『人間』より鋭いのだろう、彼女も。

(心まで覗いてくんなよ)

すると少女は、プイ、と、顔を背けセフンの肩に顔を埋めてしまった。

(覗きたくなくても、わかってしまう、が正解かな…)

そんなことを思っていると、コーヒーのいい香りが漂ってきた。

「ミンソク兄さんの淹れるコーヒーには及ばないだろうけど」

そう言って差し出されたカップに見覚えがあった。

(あ、そっか…)

このカップは、セフンの結婚祝いに俺とミンソクが贈ったんだっけ。

ルゥハンの考えを見透かすように、

「覚えてる?」

とセフンが聞いてきた。

「ああ、覚えてる」

と答えると、

「ソファはクリス、テーブルはタオがくれたものだよ」

そうだったな、とルゥハンは記憶を辿った。



セフンは、カイの娘と恋に落ちた。

それはもう、宿命とでもいうように。

防ぎようのない、避けることのできない、何かのように。

やがて二人は結婚し、とても幸せそうだった。


あの時。


セフンが、人間の娘、ましてやカイの娘と結婚するという時、皆とても喜んだ。
スホだけが慎重な態度だったが、結局は二人の意思を尊重すると言った。

(祝福はしない、尊重する、と言ったんだ。)

あの時のスホが何故手放しで喜べないかを、ルゥハンだけは理解していた。

苦しいことの方が多いぞ、と言うスホに、『二人で背負えば幸せだよ』と誰かが言い、皆それに同調した。

スホは黙っていた。

その時の沈黙の理由が、今になって重くのしかかる。

この世界で生きることの意味を、生きることの苦しさを、いつも持て余していた自分たち。

それを分かち合う相手が見つかったセフンを祝福する気持ちは本物だったが、今となっては、やはり苦しみは、一人で背負うべきものだという思いの方が強くなった。

大切な相手や周囲までを巻き込んでしまうことは、結局は自分の苦しみとなって返ってくるから。



手の中のコーヒーカップを見つめながら、ルゥハンは言葉を探していた。

(俺は上手くこいつを説得できるだろうか?今まで誰も説得できなかったのに…)

セフンはそんなルゥハンを気遣うように、

「とりあえず、コーヒーを飲んで…ゆっくりしていってください」

と穏やかな口調で言葉をかけた。

ルゥハンはコーヒーを一口味わうと、美味しい、と微笑んだ。

コーヒーも旨かったが、セフンの気持ちが呼んだ自然な笑顔だった。

なるべくなら、このままコーヒーだけご馳走になって帰りたいと思った。

穏やかにひっそりと暮らしているこの父娘の空間を壊したくなかった。


しかし、そうもいかない。伝えるべきことは伝えないと。

(俺たちも何度も話し合い、結論を出したんだ…)


「セフン、…カイが、会いたがっているんだ…その娘に。」

単刀直入に話を切り出す。

セフンは、そのことはカイからの手紙で承知してるし、少し前にもスホ兄さんが来て話していった、と答えた。

ルゥハンは、心の中で悪態をつく。

(ほら、な。スホが言ってダメだったことが、俺でうまくいくはずないじゃないか)


「じゃあ、なんでいつまでもぐずぐずしてんだよ」

「…怖いんです」

と、セフンは言った。


「カイに会わせたら…もう僕の所には戻ってこないのじゃないか、って…」

セフンの膝の上に座っている少女はぴくりとも動かない。

ただ、セフンの言葉を黙ってきいている。

「その子がお前から離れるなんてとても思えないよ、そうだろ?何を心配してるの?それともカイが隠してしまうとでも?」

セフンは弱々しく笑った。

「だって、あれから、一度も会ってないんだ…わからないよ」


『あれから』とは、その娘の母親の葬儀の時以来ということだから、軽く10年は経つ。


結婚当初二人は、とても幸せそうだった。

それは端から見ていても伝わってきた。

だからこそ、子どもは作るな、と、その時ルゥハンはセフンに忠告した。

『俺の母さんは人間だったから。俺を産んですぐに死んでしまった。たぶん、狼の血が、人間には強すぎるんだ』


…それから二人の間にどんな話し合いがあったかは知らない。

カイの娘が亡くなったと聞き、駆けつけると、セフンの腕の中に小さな赤ん坊がいた。


カイは棺にすがって気が狂ったように泣き崩れていた。


…その後のことはよく知らない。

ただ、その後セフンは娘を連れて森の奥で隠れるように暮らしている、とだけ伝え聞いていた。


「俺たちが会うのも10年ぶりくらいだな、赤ん坊だったのに、こんな大きくなった」

そう言ってルゥハンが少女の頭を撫でようと手を伸ばすと、ぴしゃりとはね返された。

「13年、だよ。でも、まだ10歳にも見えないだろ?やはり狼の血筋なんだね。見た目の成長がゆっくりなんだ」

愛しそうに少女の髪を撫でながら、セフンが笑って答えた。

いやいや、笑ってないでなんとかしろよ、
叩かれた手を擦りながらルゥハンが目で訴えてもセフンには通じないようだ。


色々考え、ルゥハンは今日はこれで帰ると言った。

セフンは、泊まっていくか、せめて夕飯でも一緒に、と申し出たが、「今度改めて泊まる準備をして来るよ」と、笑って立ち上がった。

扉のところで見送られ、ルゥハンは外に向かって歩き出した。

夕暮れが迫っていた。

ふと、振り返り、

「名前!名前はなんて?」

と少女に向かってきいた。

「…ミナ」

と、小さな声が返ってきた。


「ミナ!いい名前だね!またな!」

ルゥハンは笑顔を残し、夕暮れの森へ駆け出して行った。


その後ろ姿を見送りながら、少女は黙って、セフンの首に腕を巻き付けた。







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2 コメント

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お久しぶりです (のんtop)
2017-04-05 22:00:00
KOKOさま
ご無沙汰しております。
お久しぶりです。
ずっと、ずっとこちらは拝見させて頂いてたのですが…コメントも残さず読み逃げしてました…すみません。

素敵なお話しがまた読めるんですね。嬉しい…

そして…そう来ちゃうんですね…そりゃぁ…お父さんのカイさんに忠告されても金色の瞳に落ちますよね…私も金色の瞳に心持っていかれてますもん…(笑)

また会いに行ったのがるぅーさんって…もうワクワクが止まりません…

先のお話し、楽しみにしております。
のんtopさま (KOKO)
2017-04-05 23:16:37
のんtopさん〜(о´∀`о)
わぁ…♪お久しぶりです…でもずっと読んでいてくださっていたなんて…、ありがとうございます(´;ω;`)

そうなんです、ついに始めてしまいました…
長くなるか、わりと短く終わるか自分でもまだわからないのですが、楽しみながら書いていきたいと思っていますので、どうぞ最後までお付き合いください(*´∀`)

それにしても最近のセフンちゃん、やばいくらいかっこよく成長してて(;_;)親戚のおばちゃんの感覚で「あらあらまぁまぁ…❤」って毎日呟いちゃってます笑

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