12angels story~EXOの架空のお話とお喋り

EXOの架空のお話と、EXOについてのお喋り。

※使用しているお写真はお借りしております。

この森は永遠へ繋がっている・2(白い狼の森・続編)

2017-04-20 | 白い狼の森・続編


森に、少しずつ太陽が居座る時間が長くなり、風が駆け抜けるたび、木々に小さな緑が芽吹く。

初夏の青々とした緑でなく、春は霞がかかったような淡い黄緑色に森が染まる。

一年ぶりの再会に、はにかむように春はやってくる。



今年は、そんな春の訪れをゆっくり楽しむ余裕がセフンにはなった。



『おまえに会いに行くよ』


白い便箋の真ん中に、たったそれだけが書かれた手紙を受け取った日から。

角を生やした鹿のイラストが、封筒の差出人の欄に書かれているのを見てから。

ずっと、強風が吹いているように心の中がざわめいている。


そんなセフンの気持ちを一人娘のミナは敏感に感じ取る。

外見はまだ10才にも満たない容貌をしているが、生まれて13年が経っているし、もしかしたらその内面は普通の人間のその年齢よりも大人びて成熟しているかもしれない。


ぼんやりと窓の外を見やる父親の膝に手を置いて、顔を覗きこむ。

セフンは、慌てて手紙をポケットにねじ込むと、彼女を抱き上げ膝に座らせた。


「何か心配なことがあるの?」


「今度、お客様が来るんだ」


そのお客様がパパの心配の種なのね、と、素早く理解したミナは質問を変える。

「それは楽しみだわ。ベッキョンかチャニョルがいいな!一緒に遊んでくれるから。ああ、でも最近来たばかりだからそれはないかな。スホやディオもいいけれど、あまり面白くないのよね。お説教が多いの。じゃあクリスとタオかしら?でも、この前タオが来たとき私にゲームで負けて拗ねてたから、それはないかなぁ〜」

セフンはふふっと笑う。



今回のセフンの様子からして別の「お客様」に違いない。
けれど、ミナはそのことを直接聞いたりしない。

自分たちを取り巻く世界には『秘密』が幾つも存在していて、触れてはいけないことばかりなのだ、とミナは了承している。

なぜなら、『一緒にいるために』。
その『秘密』に触れないよう生きることが大切なのだとミナは肌で感じてきた。

たとえば。
海の見える丘の上の屋敷に住むスホとディオを訪ねることがある。その途中、たくさんの自分たち以外の人と行き違うのだが。
その『人』たちと、自分たちの存在が交わってはいけないのだ、とミナは本能で感じていた。

自分くらいの年格好の人間も、ずっと年老いた人間も、いろんな種類の人間がいるけれど。

その人たちと、自分たちは、『違う』種類なのだ。

だから、関係を持たない。

実際、ミナにとって、セフンだけがいれば良かった。

何の不自由もない。

二人だけの世界。

たまに、愉快で美しいおじさんたちが遊んでくれるし勉強もみてくれるし。充分だ。


そこへ、今度はいったいだれが来るというのだろう…。


「今度来るのはルゥハンと言って、ミナが会うのは初めてだね…赤ちゃんの時に会ってはいるけど…覚えてないだろうし」


セフンが話すのをミナは黙って聞いている。


「金色の髪で、とても綺麗な狼だよ。本当に…それはそれはとても美しく、けれど僕には時々その美しさが恐ろしくもある。」


「その人は何しにやって来るの?私たちのところへ。」


「…わからない。でも、たぶん、最後通告をしに、かな。」

「さいごつうこく?」

「うん、僕がいつまでも兄さんたちの言うことを聞かないから。手を焼いた兄さんたちがダメ元で最終兵器に最終通告をさせに送り込むんだ」

…セフンが何を言っているのか全く意味がわからないが、何かを恐れている、とミナは感じた。

こんなセフンを初めて見た、とも。

ミナが知っているセフンは、いつも冷静で迷いのない話し方をした。その風貌はどこか寂しげだけれど、その実、穏やかで優しかった。

でも、今目の前にいるのは、何かに怯えた子どものようで…


「その美しい狼はね、僕らを引き離しにやってくるんだ。」


え!

と、小さく声を漏らしたミナは、それまでの思考をストップさせ、目の前に出された言葉の意味を必死で考えた。


「どうして?どうして、」

「その方がお前の幸せに繋がると、兄さんたちは考えているんだ。」



…兄さんたち、ということは、この家に来る全ての狼たちのことだ。


あのひとたちは本当はそんな風に私たちを見ていたのか。

(私と遊びながら、私を可愛がってくれていながら。)

(私たちを引き離すタイミングを見計らっていたなんて。)


「…学校にも行った方がいいし。それになにより…」

「嫌よ」

ミナは大慌てでセフンの言葉を遮った。

「どこへも行きたくない。ここでずっと一緒に暮らしたい」


セフンは娘を抱きしめるとその小さな背中をそっとさすった。


『僕もだよ』

と、言ってほしかった言葉はもらえず仕舞いだったけれど。

優しく背中をさする大きな温かな手が、答えだと思った。


なので、その招かれざるお客様が来る日は、朝からミナの心は臨戦態勢だった。

セフンはそんな娘の心を落ち着かせようと、散歩に連れ出したのだが、小屋に戻る途中、大声でわめく声が聞こえた。

どうやら一足先に到着した『お客様』の声らしい。

ミナは驚いて、抱っこしろとセフンに催促した。

自分たちの小屋の庭に入ると、今度はドアを蹴りつける『お客様』の姿が見えた。

ますますミナはセフンの首にかじりついて警戒心を顕にした。

どんな悪魔がやって来たのだろう、と。

けれど、セフンの呼び掛けに振り返った『お客様』は、思わず見とれてしまうほどの綺麗な顔立ちをしていた。


春の陽射しに照らされた柔らかそうな金色の髪。

瞳は、星が宿っているのではないかと思うくらいキラキラ輝いてる。

唇は、さっき摘んだ野イチゴのようだ、とミナは思った。


本で読んだ悪魔ではなく、どちらかと言うとお姫さまのようだ。

…でも、騙されてはいけない。


このひとは、悪いひとだ。


その証拠に、さっきまであんなに怒鳴ってドアまで蹴っていたではないか。


…それなのに、

少し気まずそうに頭を掻きながら微笑む様子は、悪い人にはとても見えなくて…

部屋に入り、ソファに座ったお客様は、少しセフンと話をして、コーヒーを一杯だけ飲むと、ミナの名前を褒めて帰って行った。


(いったい何しに来たのだろう…)


朝からの緊張が一気にほどけるのを感じながら、ミナはお客様の後ろ姿が木々に隠れて見えなくなるまで見送った。

(また、会えるだろうか… )

そんなことまで考えながら。






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