sachipon side b

Poèmes,contes,bidon

寂しければと問いかける

2012-05-02 14:27:47 | Poems
ひとかけらの月は朧月にてぼんやりと
春の名残の普賢象が夜を照らすぼんぼり
夜道を歩く 男とふたり
夜道を歩く 女3人
これはいつの夜のことなのか
寂しければという人の
古き日よき日を思い浮かべて
寂しければと自分に問う
果たして私は寂しいのか
寂しさは終演後のシャンパンの泡?
疑問符で思い出語るかの人を真似てみたり

寂しければ
太った猫の腹に顔をうずめて息を吹きかければよい
寂しければ
チョコレートがコーティングされたトフィを口に放り込めばよい
また、寂しければ
夜空を見上げてみればよい
寂しければと自分に問いかける夜は
たいてい月が欠けている



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君のとおり道に

2012-04-20 13:21:05 | Poems
昨日の夜、酔っ払って、携帯電話をなくした
どうも帰り道で落としたらしい
たぶん、このあたりだと思うんだ
満開の桜の木の下で、いっそ首でも吊ろうかなんて
心にもないことを想像してみた
白く光る花びらの舞う雅な桜の枝にぶらさがる僕
まるで修行がつらくて逃げ出してきた坊さんみたいに
細くて頼りない体がぶらぶら、ぶらぶら
栄養失調の蓑虫みたいに、ぶらぶら、ぶらぶら
それがあんまり惨めで滑稽で僕はけたけた笑ったな

だけど、それより先のことはよく覚えていないんだ
なにしろ酔っていたからね

たしか君には会ったよね
昨日の夜のことなんだ
僕はひどく酔っていたから、何か失礼なことはしていないかな
ああ、そうそう、君はそうやって僕について来いって
それで僕はついて行ったのかな
少し進むと立ち止まって振り返り、僕がついて来ているかどうか
確認していたよね

僕はいったいどこへ行ったのだろう
気がつくと朝になっていて
いつものように自分のベッドで寝ていたんだ

あ、
ストラップの先についていたマスコットの頭を見つけたよ
やっぱり僕は君のあとをついて行ったんだね
駄目なヒモみたいにさ

ここら辺にあるのかな、僕の携帯電話
ないとけっこう困るんだ
アラームを目覚まし時計の代わりに使っているし
まだローンも残っているからさ

そんなに電話なんてかかって来ないよ
メールの打ち方もよく分からない
それでもときどき電話がかかってきたときに
出られないと失礼だろう?

こういうときに限って電話をしてくる人がいるもんなんだ
それで折り返しかけてみると、
昨夜、君を誘おうと思ったんだが残念だったよ
またの機会にぜひ
なんて言って、またの機会に誘ってくれたためしなんてない

みんな思うんだ
酔っ払って桜に見とれて携帯電話をなくすヤツなんて
そんなダメなヤツとは一緒にいたくないってね

ああ本当に情けない
だけど君と出会ったね
桜の木の枝で首でも吊ろうかなんて考えているときに
ひょっこり現れてさ
君の無邪気な顔を見ていたら嫌なことなんて忘れてしまったよ
それでバカみたいに僕は君のあとについて行ってしまったんだ

つまり、どうあら僕は君のとおり道に携帯電話を落としたらしい
見つけたら電話をくれないかな

いけないいけない
僕は携帯電話ひとつきりしか持っていないんだった
どこにも電話のかけようがない ははは

それなら、君、明日のこの時間、この場所で
もう一度会ってはくれないかな
もし携帯電話が見つかったら、そこへ僕を誘って欲しいんだ

それが、たとえ、どこでも構わないからさ
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君のいる世界

2012-03-26 12:30:35 | Poems
君のいる世界に僕はいない 
君のいる世界には君がいる
たとえ隣に僕が歩いていたとしても

僕のいる世界に君はいない
僕のいる世界には僕がいる
たとえ隣に君が歩いていたとしても

君が見ているものを僕は見ているし
僕が見ているものを君は見ているけれど
確かに同じものを見ているという証はない
ただ同じものを見ていると思い込んでいるだけだ
そのほうが安心だから

僕らは同じ地球に住んでいるけれど
同じ世界に住んでいるわけではない

もし君が僕の世界に来ることができたなら
僕は君に青い風を見せてあげよう

もし僕が君の世界に行くことができたなら
君に紅い雲を見せて欲しい

違う世界にいることを認め合えたなら
僕らは僕らの世界を行き来できるかもしれない

そうすると世界はひとつになるのだろうか

たぶんそうはならない
そうならなくていい

だって人はそれぞれだから
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不眠症の詩

2012-01-16 22:39:51 | Poems
アイマスクを付けても
本当の漆黒の闇は訪れない

耳栓を付けても
本当の無音の世界にはならない

だからもう私は長いことちゃんと眠っていない

かすかな光は正義の証
かすかな音は義務の証

あれもやらなければいけない
これもやらなければいけない

そう思うとドキドキして私は眠れない

やらなければいけないことを
すべてやり終えていても

ああすればよかった
こうすればよかった

そう思うと後悔で私は眠れない

そうして、ようやく眠りにつけても

ごめんなさい
ごめんなさい

私は悲しい夢ばかり見てしまう

小さいころ、私は母に話したことがある

防音設備が整っている
壁も窓も扉もない部屋で
夜だけ私は眠りたい

母は笑ってこう言った

それは無理だけど
押入れに入って寝たら
それに近いんじゃない?

だから私は押入れに入って寝た

そうしたら
ごそごそ ごそごそ
虫なのか、ねずみなのか
なにやら蠢く音がして
私は泣きながら
母の布団にもぐりこんだのである

そうしたら不思議とすやすや眠れたのである
母の心臓の鼓動が聞こえるのに
豆電球の明かりが付いているのに

でも、今はもう
もぐりこむ布団がない

だから何も存在しない
光も音もない部屋で
私は一晩でいいから眠りたい

たった一晩だけでいいから

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月蝕の夜

2011-12-12 21:19:19 | Poems


月が蝕まれると書いて月蝕。
いったい何に、蝕まれるというのか。
まんまるのお月さんが美しい夜
パーティと句会を梯子して、ほろ酔い加減で
タクシー帰り。

「お客さん、今日は月蝕だそうですよ。今頃欠けているころでしょうかね」

運転手さんに言われて、降りて見上げた夜空には
まるで犬にかじられたように欠けた月。
さっきまで、まんまるだったのに。

「すこし欠けはじめていますよ」

車の窓ガラスを叩いて、運転手さんにそういうと
運転手さんも車から出てきて、空を見上げ

「ほー」

ランニング途中のちょっとオタク系のお兄さんも立ち止まり
私たちを不思議そうに見てから、視線をあげる。

「え〜、あれ、なんすか?」

運転手さんが優しく微笑んで

「月蝕ですよ」

そんな夜。

なんだか、映画のワンシーンみたいに
知らない人同士が共感できる、魔法の夜。


それから私は部屋に入って、シャワーを浴びて
人心地ついてから、

そういえば、お月さんは、どうなっているかなと、外に出てみると
果たして、消えてしまいそうな、欠け具合。

しばらくすると、お月さんはすっぽり何かに蝕まれて
残ったところは、なにやらぼんやり赤く赤く。





次の夜は、何事もなかったような満月が
晴れた夜空にぽっかり浮いて
あれは、ぜんぶ幻だったのかなと思うくらい。

幻だったのかなと思うくらい
なんだか優しい夜だった。



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