コドモ観察ニッキ

6歳3歳の子供達を観察しつつ思うことをつらつらと。

「ピン・ポン・バス」/「クレーン クレーン」/「せんろはつづく」

2006-08-07 01:25:46 | 絵本
ピン・ポン・バス
クレーン クレーン
作:竹下文子
絵:鈴木まもる
出版社:偕成社

せんろはつづく
作:竹下文子
絵 鈴木まもる
出版社:金の星社

竹内文子・鈴木まもるコンビの3作。乗り物好きの息子におばあちゃん(私の母)が買ってくれたもの。3作まとめてご紹介。

「クレーン クレーン」
僕の大好きなクレーン。今日はどんな仕事をするのかな。工事現場、動物園、デパートの屋上に花を吊り上げて、川に落ちた自動車を助けて・・・
「せんろはつづく」
線路をつくろう!山を越えて川を越えてどんどん線路をつなげていって、駅を作って・・・さあ汽車に乗って、出発!

「クレーンクレーン」は、いろんなところへ行っていろんなものを吊り上げては降ろし、吊り上げては降ろし・・・と、クレーン車の一日の仕事の様子を追っていったかんじ。

「せんろはつづく」の方は小さな子供たちが線路を組み立てて、山を越え川を越えてぐるりと一周させ、駅を作って汽車を走らせるというもの。おもちゃのレールを組み立てている子供が、リアルに空想を膨らましているといった感じの絵本です。

この2作品は文章が簡単で内容もさほど複雑でなく、1歳代くらいの小さな子向け。文章は「せんろはつづく」が一番簡単かな。はたらくくるま系か電車系か、好みによって分かれるところだと思います(うちは電車の方が食いつきが良かった感じです)。
逆にいえばちょっと文章が簡単すぎて、対象年齢が狭いのが難点かな。3歳で読み聞かせするには短いです。まあ自分で読めるようになる頃もう一度活躍しそうですが。


「ピン・ポン・バス」
路線バスが、いろんなお客さんを乗せたり降ろしたりしながら走っていきます。スーパーの前で買い物客が、小学校の前で小学生たちが、病院の前ではお年寄りが、乗ったり降りたり。ピンポン。次、停まります。

これは、路線バスが始発から終点までいろんなお客さんを乗せたり降ろしたりしながら走っていく様子を描いたものなんですが、文章量も少し多く、絵も細かく書かれていて、2歳以上のほうが楽しめそう。おっとりした田舎の路線っぽくてノスタルジックな雰囲気です。バスが走る間に辺りはだんだん黄昏ていくのだけど、最後の山の夕焼けの色彩が美しい!
最後のページに運転席周辺の細かい開設が描き込まれています。

このコンビ、他にもたくさんはたらくくるま系の絵本をだしていて、「ピン・ポン・バス」には「うみへいくピン・ポン・バス」という続編が出ているみたい。この3作の中では一番楽しめたので、これも機会があれば読んでみたいです。

オススメ度:
「クレーン クレーン」★★☆☆☆
「せんろはつづく」★★☆☆☆
「ピン・ポン・バス」:★★★☆☆
鈴木まもるさんの絵が個人的にちょっと好みから外れるので辛め。ごめんなさい。

「でんしゃでいこう でんしゃでかえろう」/「あめのひのえんそく」

2006-08-07 01:08:48 | 絵本
でんしゃでいこう でんしゃでかえろう
あめのひのえんそく
作・絵:間瀬なおかた
出版社:ひさかたチャイルド

間瀬なおたかさんの、電車・バスの作品。こちらもまとめて。

「でんしゃでいこう でんしゃでかえろう」
山の駅を出た電車は、山を抜け、野原を走り、鉄橋を渡り、海へ出て、やがて海の駅へ。

これは山の駅と海の駅の間を走る電車を追っていったもの。わざわざ書くほどのあらすじでもないんだけれど(笑)
山の村からいくつも山を越え、野原を抜け、鉄橋を渡り・・・雪深い山からだんだん里へ下りていって、もう春の訪れている海辺へとダイナミックに景色が変わっていきます。

文章が簡単でリズミカルでいいです。ストーリーものがまだ難しい小さい子でも十分楽しめます。
また、電車の走る音がページごとに違うのもナイス。村では「ででん どどん」、広い野原では「でで どど」、鉄橋では「ででん ごごー」なんです。この擬音のセンスが私は好きだなあ。
乗客の表情もページごとに違っていて、お客さんたちの様子に注目しても面白いです。

また、この本は最初から読んでも最後から読んでも楽しめるように作られているのが特徴。山の駅から走っていって海の駅に着いたら、今度はまた山の駅まで逆にページをめくっていって読むことが出来るんです。ちょっとしたアイデアなんだけど、それがすごくこの本の楽しめる幅を広げています。


「あめのひのえんそく」
幼稚園の遠足でぶどう狩りに行くのに、雨が降っています。雨の中を走っていくと、ぶどう山に着く頃には雨が上がって空には虹が・・・。

これは仕掛け絵本。バスが緑の山や、青い海や、桔梗の野原や・・・トンネルを抜けるたびに現れる色とりどりの7つの景色を越えて行くと、最後にはそれが素敵な虹になっているんです。面白い発想だなあ。虹が現れるのは画面右上なんだけど、ちゃんとバスが走っている間は左下に視線が集中するように、バスは左方向へ向かって走っていて、虹になった時に初めて視線が右ページに向くようになっているの。上手く出来ています。

間瀬さんの本は細かい描きこみの中に遊びを探す楽しさもあります。ページごとにたくさんの車が描かれているんだけど、その中に、どのページにも必ず登場する車があったりして、細かく見るといろんな遊びが描きこまれているのに気がつきます。また、「でんしゃで・・・」もそうなんだけど、トンネルの部分には本当にページに穴が開いているの。細かいことなんだけど、そういうの子供は大好きですよね(^^)

オススメ度:
「でんしゃでいこう でんしゃでかえろう」:★★★★★
「あめのひの えんそく」★★★★☆
こちらも私の好みにドンピシャの絵柄ではないけど、それを補って余りある楽しさがあります。オススメ!

「おとこどうしのおるすばん」

2006-07-17 02:55:38 | 絵本
おとこどうしのおるすばん
作・絵:梅田俊作/佳子
出版社:岩崎書店
岩崎書店のサイトに無いんだな・・・。もしかして絶版かな。

おかあさんとおばあちゃんが旅行に行ったので、ぼくはお父さんと5日間も2人だけで過ごした。明日は2人が帰ってくるから、汚れた家の中を掃除して、お布団干して、お風呂へ入って、男同士の最後の夜。宴会だあ、なんて調子に乗っているうちに、お父さんはへべれけになっちゃった。トイレはどこだ、むにゃむにゃむにゃ・・・。

お父さんと息子の絵本ってよくあるけど、これは2人で出かけたり何かイベントに出くわすわけじゃなく、2人はお留守番。でもこのお父さんがステキなんだなあ。お留守番すらイベントにして遊んじゃうの。最初は「命の洗濯」なんていって散らかし放題して、最後の日にばーっと片付けて、その大掃除すら楽しんじゃう。お風呂はせっかくぴかぴかにして、汚すのがもったいないから庭にプールを出して露天風呂。干したお布団はしまわずに、押入れにテーブルを持ち込んで、宴会列車に仕立てちゃう。なんて楽しいアイデア!

そして「ぼく」も成長しました。銭湯へ行ったし、お父さんの会社まで電車に乗って一人で行って、帰りには焼き鳥屋さんにまで付き合った。料理をしたり、酔っ払ったり、お父さんのいつもは知らない顔も見た。きっと、「ぼく」にとって忘れられない宝物のような思い出になるに違いありません。

「おとこは、やるときには どーんと やるべし。しっぱいなんか へいき、へいき。」

ちょっと間が抜けてておっちょこちょいだけど、見かけもすこーし頼りないけど、なんのなんの。男らしくて頼もしいお父さんです。あっぱれ!

オススメ度:★★★★★
出かけるばかりが楽しさじゃない!夏休みにちょうどいいかも。

「わたしがこぶただったころ」

2006-07-17 02:44:42 | 絵本
わたしがこぶただったころ
作・絵:梅田俊作/佳子
出版社:岩崎書店

私はとっても元気で快活で、おまけに想像力が豊かな女の子。泥んこ遊びではアーティスト、食卓では食いしん坊のこぶたちゃん、お出かけした時はあっちこっち寄り道ばかりのこいぬになっちゃう。でもお母さんにはその度「また汚して!」「お行儀よく食べなさい!」「早く!なにしてるの」と叱られる。
「少しはママの身にもなって」と言われて、私はママの身になってみた。そしたら片付け、お料理、お洗濯、お掃除・・・やることばっかり。もう、ママって大変!どうしたらママが楽になるかしら。泥んこ遊びの時は服を脱いで、それから、それから・・・考えてたらお腹が空いちゃった。ママ、ごはんまだ?と覗いたら、「ママだってちょっと前は子供だったのよね」なんて笑って、ごちそうを作ってくれた。


「ママの身になってよ!」と言ったら子供がほんとにママの身になって想像して、ちょっと反省してくれる・・・現実もそんなんだったらいいなあと思うけど、そうはいかないんだよな。だけど、現実はそうはいかないとわかっていても、この女の子もママも、どちらもなぜか身近に感じてしまいます。
この女の子はほんとに空想力が豊か。なんでもイメージして、それになっちゃうの。だけど、次から次へ出てくるそんなお話に、ママは時々疲れちゃうんですね。空想に付き合って仲良くお喋りすることもあれば、時々うんざりして「もういいかげんにして!」と爆発しちゃう。そんなところが、母親の立場でもリアルです。

このお話の後味がふんわりと柔らかいのは、子供もママも、どっちも少しずつ相手に歩み寄っているから。子供にばかり期待しないで、ママもいつもの自分を反省して、子供に寄り添おうよ、そんなメッセージも読み取れます。

この夫妻のお話は、徹底的に子供の立場に立って、子供の気持ちになって描かれていて、そこがいいんです。絵が地味っぽくて今の人には受けないらしく、古本屋なんかでも見かけるけど、どれもいいです。子供も楽しいけど、子供を育てていて、自分が子供だったことを忘れちゃってる大人にこそ読んで欲しいかも。

オススメ度:★★★☆☆
私は好きなんだけど・・・万人受けはしないと思うのでちょっと控えめ。

「ねずみとくじら」

2006-07-17 01:59:10 | 絵本
ねずみとくじら
作・絵:ウィリアム・スタイグ
訳:せた ていじ
出版社:評論社

海が大好きなネズミのエーモスは、船を作って航海に出ますが、誤って海へ落ちてしまいます。誰も助けてくれるものがなく、死を覚悟した時、くじらのボーリスに助けられ、元の陸地へ送ってもらいました。その道々、2人は大の親友になります。陸地について別れる時も、2人は一生の親友でいようと誓い、エーモスは命の恩人であるボーリスに、「僕の助けが必要な時はきっと助けてあげる」と約束しました。
それから長い年月が経ったある時、大きな嵐に遭ってくじらのボーリスが浜辺に打ち上げられてしまいます。それは奇しくもエーモスのいる浜辺でした。ボーリスを見つけたエーモスは、森から2頭の象を連れてきて、ボーリスを海に戻してあげたのでした。


スタイグの名前だけでもらってきたけど、当たりだった。

恩を受けたネズミが、恩返しを誓うけれど、大きなくじらは笑って本気にしない。けれど後になってネズミはちゃんとくじらの危機を救いました、という、大雑把に言えばイソップ童話の「ライオンとネズミ」の焼き直しと言ってもいいかな。そんなお話。

ただ、私が書くと薄っぺらいのですが、本当のお話はとってもいいです。モーリスが航海に出るくだりや、海を一人で漂う心細さ、ボーリスとであって友情を育むところ、2人の別れ、再会。そして2度目の、そしておそらくは永遠の別れ・・・一つ一つのシーンの描写が細かく、厚みがあって、イソップ童話よりずっと心に響くお話になっていると思います。

また日本語訳がいいんです。ただちょっと幼稚園児くらいには文章が難しいかな。体裁は絵本ですが、文章のボリュームが結構あるし、

かんぱんによこたわって、かぎりないほしぞらをながめて、いきて ここにいる けしつぶほどの ねずみも、いきて ひろがる だいうちゅうのなかまとして、しみじみ うちゅう ぜんたいを したしく かんじました。

なんて、ちょっと理解しにくい内容もでてくるので、どちらかというと短めの児童文学といってもいいかも。それにしては全部ひらがななんですが。
小学生以上の方がとっつきやすいと思います。

オススメ度:★★★☆☆
好き嫌いがありそう。いいと思うんだけど、つまらない子にはホントにつまらない本かも。

「ぼく おかあさんのこと・・・」

2006-04-19 12:00:03 | 絵本
ぼく おかあさんのこと・・・
作・絵:酒井 駒子
出版社:文溪堂

おかあさんキライ!だってぼくのおかあさん、日曜はねぼすけだし、テレビは自分の好きな番組ばっかり見るし、すぐ怒るし。でも、一番きらいなのは・・・ (ラストのネタバレ→絵本ナビ

今日の話題にぴったりなので紹介しとこう。
「ぼく おかあさんのこと キライ。」という、ちょっとショッキングな導入から始まるお話。ぐうたらな母の私には、ちょっと刺さる部分もあります。誰しも少なからずドキンとさせられるんじゃないかな。

でもそれだけに、後半部分はめちゃくちゃ可愛い!!読むと、子供への愛情と自分の子育てを見つめなおさずにはいられない本です。やっぱり男の子のいるお母さんにオススメ! 子供をぎゅーっと抱っこしたくなりますよ。子育てに心が疲れたら、ぜひ読んで欲しいな。

この酒井駒子さんという人、絵もお話もとてもいいです。特に絵は私のツボと言っていいかも。「キライ。」とそっぽをむく子ウサギの可愛いことといったら!
酒井さんの代表作は「よるくま」ですが、個人的にはこちらの方がイチオシです。

オススメ度:★★★★★
ただし読み聞かせには向かないかも。泣いちゃうので(苦笑)

「ぼく おばあちゃんのこに なってあげる」

2006-03-16 00:15:39 | 絵本
ぼく おばあちゃんのこに なってあげる
作:西本鶏介
絵:渡辺さもじろう
出版社:鈴木出版

いつもひろくんを幼稚園へ行くバス停まで送り迎えしてくれるおばあちゃん。おばあちゃんは元気だけれど、ときどき「むかしの国」へ行ってしまい、ひろくんのことを「よしお」なんてお父さんの名前で呼んだりします。けれどある日、おばあちゃんはバス停に迎えに来ませんでした。お母さんからおばあちゃんがいなくなったと聞いたひろくんは、お母さんといっしょにあちこち探し回ります。お父さんが帰ってきて、大人たちはおばあちゃんを探しに出かけ、ひろくんは家で待つことになりました。ひとりぼっちで待っていると、だんだん悲しい気持ちがこみ上げてきます。そして、心当たりを思い出したひろくんは雪の降る中を駆けて行きます。おばあちゃんは見つかりました。すっかりむかしの国へ行ってしまったおばあちゃん。でも、ひろくんのことをお父さんの名前で呼ぶおばあちゃんを、ひろくんはもう睨んだりしません。「いいよ。ぼく、おばあちゃんの子になってあげる。」

重いテーマだなあ・・・。おばあちゃんは痴呆(ま、最近は認知症とか言いますね)を発症していて、どんどんひどくなっています。足腰が達者だから、いきなり遠くへ行っちゃったりしてまたやっかいなのね。しかも、お父さんはおばあちゃんの痴呆がここまで重くなってきていることを、この行方不明事件が起きるまでわかってない。すごくいろいろな「現実」が織り込まれています。

ただ、扱っているテーマは重いけど、家族の愛があったかいお話にしてくれているんだなあ。読んでいて哀しい雰囲気はちっともありません。当のおばあちゃんが、最初から最後まで終始にこにこと笑顔でなんとも幸せそう。
「おばあちゃんは、ときどきむかしの国へ行っちゃうの」というお母さんのセリフも温かくて愛があって、素敵なセリフだなあと思います。むかしの国って、幸せなところなのかな。

オススメ度:★★★★☆
今の子供たちには、小さいうちにこういう本を読ませてあげたいな。

「三びきのやぎのがらがらどん」

2006-03-05 06:40:42 | 絵本
三びきのやぎのがらがらどん
作:(北欧民話)
絵:マーシャ・ブラウン
訳:瀬田貞二
出版社:福音館書店

話題が出たんでついでに(笑)

むかし、あるところに三匹のやぎがいました。名前は、どれもがらがらどんといいました。あるときやぎ達はおいしい草を食べるために山へ登ろうとしますが、谷川にかかる橋の下にはおそろしいトロルがいて、やぎ達を食べようとします。小さいやぎも、二番目のやぎも、次に来るやぎの方が自分より大きいからといって難を逃れますが、一番大きいやぎのがらがらどんは・・・。

いわずと知れた有名な作品。これも息の長い絵本です。
お話自体も面白いけど、この本がここまで息の長い作品になったのはやっぱりマーシャ・ブラウンのすばらしい挿絵の力によるところが大きいと思うなあ。青と黒ベースの暗い色調、力強い線がお話とばっちり合って、一つの作品として完璧に調和している。もともと民話だから、ももたろうやさるかに合戦のように、同じ話をいろいろな挿絵をつけて本にしている可能性もあるけど、このお話に関してはもうマーシャ・ブラウン以外ありえない!・・・と思っていたら、福音館書店のサイトを見たら「こどものとも」で最初に出版されたときは、違う人が絵をつけていて、単行本として出版されるときにマーシャ・ブラウンの絵が付いたらしいです。

また、原文ではやぎはもともとなんていう名前だったのか知らないけど、「がらがらどん」という名前をつけた訳者の瀬田貞二さんも、ほんとにすごい。どっから思いつくんだろう、こんな名前(笑)

トロルの気味悪さ、大きながらがらどんの荒々しさや迫力、怪物に食べられそうになるところを、機転を利かせて切り抜けるスリル・・・絵本の魅力って、ふわふわしたやさしさだけじゃない、こういう力強さや怖さもとても子供を惹きつけるものだと、私自身大好きなこの本を見ていて思います。

オススメ度:★★★★★
おばけとかがわかるようになったら是非。

「いやいやえん」

2006-02-14 10:44:01 | 絵本
いやいやえん
作:中川李枝子
絵:大村百合子
出版社:福音館書店

ちゅーりっぷほいくえんに通うしげるは、ある朝機嫌が悪くて「保育園へ行かない」と駄々をこねていました。お父さんが昨夜買ってきてくれた自動車が、赤い色だったのが気に入らなかったのです。おべんとうもいや、お姉さんのお下がりのブラウスもいや・・・
お母さんと先生は困り果て、しげるを「いやいやえん」につれていくことにしました。「いやいやえん」では、いやなことはしなくていいし、嫌いなものは食べなくていいのです。でも、行ってみたら、そこはちょっと変わった園でした・・・


ちゅーりっぷほいくえんに通うしげるを中心に、表題作「いやいやえん」など7つのお話が入っています。これも私の幼き日の友。なぜかとっても好きな本でした。とにかくしげるが悪ガキなの!園のお約束はかたっぱしから破る、先生の言いつけは聞かない、自分のした悪いことを「友達がやったから」と言い訳をする・・・ほんと、気持ちいいくらいの悪ガキなんです(笑)

でも、こういうのを「悪い見本だ」と子供から遠ざけちゃダメだと思うんです。子供たちはしげるの悪ガキっぷりを見て、安心するんじゃないかな。いい子の出てくる本ばかりでは、子供は感情移入がしにくい。悪ガキやみそっかすが主人公の絵本が人気があるのは、その為だと思います。
悪ガキといってもしげるはほんとにその辺にいそうな感じ。おかあさんとのやりとりは、いかにもありそうで、いずこも同じだなあと苦笑が漏れます(笑)

また、親の立場になってみると、いやいやえんはかなり衝撃的。嫌なことは一切させないの。しげるを連れて行ったお母さんとのやりとりがすごい。

「おべんとうはどうしましょう?」
「いりません。きらいなんだから。」
「このようふくは?」
「いりません。きらいなんだから。」


こうしてしげるはその日一日肌着とズボンだけで過ごし、お弁当もなしなんです。それだけじゃなく、おもちゃを取っても、返すのが嫌なら返さなくていい。お弁当の中のほうれん草を捨てようが、毎日玉子焼きだけ、おいなりさんだけのお弁当だろうがお咎めなし。嫌いなものは食べなくていい。そして赤が嫌いと言ったしげるのおやつはりんごからビスケットに変えられ、クレヨンの箱からは赤色が抜き取られているのです。徹底してます。

いやいやえんは極端だけど、思うに中川李枝子さんは、一般的な保育・教育のあり方に疑問を投げかけたかったんじゃないかなあ。ごく普通の保育園児のしげるは、おもちゃを取られると、「おばあさん、あの子はぼくのつみきをとっちゃったよ。かえしてもらってよ」と言いに行き、叩かれると「おばあさん、あの子はつみきでぼくのおしりをぶったよう!」と言いに行きます。普通なら、保育者が出てきて「おもちゃを取っちゃダメ」「積み木で叩いたりしちゃダメ」と言うのでしょう。でもおばあさんは何にもしない。全部子供たちのしたいようにさせとくんです。そして、おばあさんにほっとかれたしげるはちゃーんと相手の子に仕返しをしにいくの(笑)

だけど、ただほっとくわけじゃない。しげると他の子が取っ組み合いの喧嘩になった時のおばあさんのセリフがこれまたぶっ飛んでます。

「まあ、すごいけんかだね。いまに、ふたりとも、手か足をおっちゃうだろうよ。そうしたら、おしえておくれ。きゅうきゅうしゃをよぶからね。」


髪の毛を引っ張ったり噛み付いたりと、すごいことになってるのに、まだ止めない。だけど、この言葉で2人はちゃんと自分で喧嘩にきりをつけるんですね。で、その後でおばあさんは赤チンをつけてくれる。

このおばあさんは単なる面倒くさがりの放任主義なのかもしれないけど、作者は最近の(といってもこの本、初版はなんと40年以上前の1962年なんだけど)大人が関わり過ぎる保育のあり方をちょっぴり皮肉っているのかもしれません。
イヤイヤが始まったら、「そう、嫌いなの」と受け流して、代わりに自分の言ったことの責任を取らせる---お弁当がなくても我慢させ、赤色のないクレヨンの箱を渡すように。喧嘩だって、大人が無理矢理引き剥がすより、ほっといて自分からやめるまでやらせとく方がいい。そんなメッセージのように私は感じました。

「いやいやえん」のことばかり書いちゃいましたが、全部の話面白いです。特に、ちょっとドジなおおかみの話が私は好き。

オススメ度:★★★★☆
3歳児にはちょっと長いかな。4歳、5歳くらいからでも。

「すいかのたね」

2006-02-02 11:56:09 | 絵本
すいかのたね
作・絵:さとう わきこ
出版社:福音館書店

ばばばあちゃんがスイカの種を植えると、こねこが掘っては「なんだ、スイカの種か。つまらない」と埋めなおし、こいぬが掘っては「くだらない」と埋めなおし、うさぎ、きつね・・・と掘り返されたすいかの種がとうとう怒り出したから大変!

ほじくりかえされ、「つまらない」「くだらない」と言われ続けたスイカの種が怒り出しちゃうのが面白い。またしつこいんです、このスイカ(笑)自分を「つまらない」と言った奴らにことごとく仕返しをし、なったスイカを割ってもまだ怒ってる。
でもこのスイカってある意味とても健全だなあと思います。自分のことを罵倒する奴らに、「なんだとコノヤロー!」とちゃんと言い返すことが出来る。「そうか、自分ってつまんないものなんだ」って萎縮してしまわずに、ちゃんと自分の価値を信じて、叫ぶことが出来る。そういう意味でも気持ちのいい本です。

そしてこれは是非声に出して読んで欲しい。スイカの怒鳴るシーンが痛快なんです!威勢が良くて、テンポもいい。また怒鳴り返すばばばあちゃんのタンカもこれまた気持ちのいいこと!これは読み聞かせが楽しいタイプの絵本です。読んであげるなら一度下読みしてからどうぞ。つっかえるとセリフの面白みが半減します。

オススメ度:★★★☆☆
ほかのばばばあちゃんのシリーズも読んでみようかな。

「しろくまパパのソフトクリーム」

2006-02-02 11:53:55 | 絵本
しろくまパパのソフトクリーム
作・絵:とおやましげとし
出版社:金の星社

森の奥に住んでいるしろくまパパは、あるとき無性にソフトクリームが食べたくなり、翌日バスに乗って街へ出かけます。しかし、興奮して道路に飛び出し、おまわりさんに叱られて、しろくまパパは自分が何をしに来たのかころっと忘れてしまいました。そこでデパートに行ってみるのですが、靴、服、帽子に小物など、目に付いたものすべて「これを買いに来たような気がする」と買ってしまいます。たくさん買い物をして疲れたしろくまパパは、喉が渇いて、冷たいものが欲しくなります。そこでようやくソフトクリームのことを思い出し、ソフトクリームをたくさん買って帰ったのでした。

ほのぼのした楽しいお話。なんといっても主人公のしろくまパパが、とぼけた愛すべきヤツなのだ。このしろくまパパ、作者の遠山さんの飼っていたラッキーという犬がモデルなんだそうで、朴訥として、ちょっと間が抜けてて、絵がこれまたばっちり合っていて、なんともいえないひょうきんなキャラクターになっている。モデルの犬を髣髴とさせるしろくまパパの動きや表情から、作者のラッキーに対する愛がじんわりと伝わってくるんだなあ。

さて、しろくまパパの持っていた荷物が小さながま口1つだったので、私は最初、往復のバス代とソフトクリーム程度の小銭しか持っていないと思っていて、彼が靴を買った時点でお金なくなってハイ終わり、かと思っていたんだけど、パパってばつぎつぎ買い物をするので「大丈夫?大丈夫なの?」とドキドキさせられた。で、最後のソフトクリームはどうやって家までもって帰るのか、あっという間に溶けちゃってがっかりになるのか、それもかなり心配だったんだけど、落ちが予想を超えていて楽しかった。しろくまパパ、大胆!

オススメ度:★★★★☆
いやあ、好きだなあこういうの。

「どろんここぶた」

2006-02-01 10:19:16 | 絵本
どろんここぶた
作・絵:アーノルド・ローベル
訳:岸田 衿子
出版社:文化出版局

お百姓の夫婦が飼っているこぶたは泥んこが大好き。でも飼い主の奥さんが、大掃除ついでにこぶたの大事な泥んこをきれいにしてしまって、こぶたは怒って家出してしまいます。こぶたは街でやっと素敵な泥んこを見つけますが、それは実は・・・。

なんといってもこぶたが可愛い!怒った顔も拗ねた顔も泥んこに浸かった幸せな顔もぜーんぶ。この表情の良さはやっぱりアーノルド・ローベル。シンプルなペン書きの線も彼ならではの味。また、オチがおもしろいの(笑)

で、懲りたご夫婦はちゃんと元の泥んこをこぶたに返してくれるんですね。ヨカッタヨカッタ。
飼い主(=親)の価値観で良くないもの、汚いものがあっても、こぶた(=子供)にとってはそれが必要なこともあるからむやみに捨てたり避けたりしてはいけないんですねえ。子供ってよくわかんないものにすごく強く思い入れを持ってたり執着したりしますから。

アーノルド・ローベルはたくさん作品がある割に私自身はあんまり読んでないのですが(^^;)、もっとどんどん読もうっと。

オススメ度:★★★★☆
一度は読んで欲しいな。

「ぐるんぱのようちえん」

2006-02-01 10:18:21 | 絵本
ぐるんぱのようちえん
作:西内ミナミ
絵:堀内誠一
出版社:福音館書店

ぐるんぱは、とってもおおきなぞう。ひとりぼっちで汚れててさみしかったけれど、仲間の象たちに送り出されて働きに出ます。けれどどの仕事先でも失敗ばかり、すぐ追い出されてしまいます。がっかりしていると、大勢の子供を抱えたお母さんに子守を頼まれて、子供たちの遊び相手をすることに。そして・・・。

私が子供の頃から大好きな福音館書店のシリーズの一つ。
失敗ばかりするぐるんぱが、最後に自分の居場所を見つけるストーリーは、なんだかほっとして元気になれます。ぐるんぱの失敗は、失敗と言ってもミステイクではなくて、頑張りすぎて空回りしているんです。一番良いと思うやり方で自分なりに頑張ってるのに、結局は受け入れられない。そんなぐるんぱに、読者はどうしても自分を重ねてしまうんでしょうね。だからこそ、最後にぐるんぱが今までの積み重ねを生かして素敵な居場所を手に入れられたことが、自分のことのように嬉しく感じるんだと思います。長らく愛されて、子供にも大人にも受け入れられているのは、そんな風に心を癒すストーリーだからなんだろうなあ。

堀内誠一さんの絵も素敵。洗ってもらってきれいになったぐるんぱが、元気に手を振って歩き出すシーンが私は大好きです。堀内さんは本職はアートディレクターだそうだけど、挿絵画家としてもほんとに素晴らしい人だと思います。

ところで、仕事もせずにひとりで寂しくて泣いちゃって・・・ぐるんぱって今で言うニート?(笑)

オススメ度:★★★★★
読み聞かせるとウルッと来ちゃうんですけどね(笑)

「1、2、3 どうぶつえんへ」

2006-01-27 10:02:54 | 絵本
1、2、3 どうぶつえんへ
1、2、3 どうぶつえんへ」(ボードブック版)
作・絵:エリック・カール
出版社:偕成社

貨物車を繋いだ機関車が走っています。貨物車にはさまざまな動物たちが乗っています。動物園へ運ばれていくのです。象、かば、キリン、ライオン・・・さあ、動物園の開園です!

私が息子のために買ったエリック・カールの最初の本。文字はないので、上のあらすじは適当に書いたもの(笑)

まず表紙のライオンがすごいインパクト(新版のほう。上に紹介しているボードブック版はおそらく旧デザインです)。
1ページごとにどーんと大きく動物たちが描かれていて、めくると次の動物が現れる。これといったストーリーもないので、自由に楽しめる本。貨車の1両目には象が1頭、2両目にはカバが2頭・・・という感じで1両ごとに動物が1頭増えていき、10までの数に対応した形になっている。また、各車両に必ず小さなネズミがいたり、ページのしたには列車のシルエットがあったり、最後のページの動物園はお客さんたちの様子や入り口で風船を配るピエロなどが細かく書き込まれていて楽しい。

ただ、絵本ナビには対象年齢3,4歳からとあるけど、個人的にはシンプルすぎて3歳を過ぎるともうちょっとつまらないかも・・・と思います。2歳までの方が楽しめるんじゃないかな。ま、対象年齢なんて紹介しているサイトによってすら書いてること全然違うし、当てにしないことですな。

オススメ度:★★★☆☆
ま、すでに有名なんで私があえて勧めなくてもねえ(笑)

「はらぺこあおむし」

2006-01-27 09:41:24 | 絵本
はらぺこあおむし
作・絵:エリック・カール
訳:もり ひさし
出版社:偕成社

日曜日の朝に生まれた小さなあおむしは、いろいろなものをどんどん食べてぐんぐん大きくなり、さなぎになって、きれいなちょうちょになりました。おしまい(笑)

もっとも有名な絵本のひとつかも。
あおむしが食べたものに穴が開いていたり、ページをめくるごとに果物が一つづつ増えていくというちょっとした仕掛け絵本的な作りになっています。

私自身は子供時代にこれは読まなかったので、実は特別な思い入れはないのだけど、大好きな絵本の一番目に挙げる人も多い。あおむしが食べるものが一つずつ増えていくところとか、めちゃくちゃに食べまくってお腹を壊すところとかが楽しいんだろうな。

絵はカラフルできれい。エリック・カールは色彩の美しさが群を抜いていると思います。特に最後のページのちょうちょがとてもステキなのだけど、個人的にはさなぎになる前のふとっちょあおむし(表紙の絵)のが可愛くてスキ。ストーリーが単純なので、赤ちゃんに読んであげる初めての絵本として紹介されることも多いけど、数や曜日の概念を教える2、3歳児にもぴったり。

普通の版の他に、小さめのボードブックや、ぬりえになってるのとか、いろいろ出ています(こちら)。あおむしのおもちゃつきバージョンもどっかで見たな。

ただ、どんな本にもあるけれど、「合う・合わない」は人それぞれなので、定番だからといって必ず手元に置いて読ませるべきかというと・・・そんなことはないと思います。

オススメ度:★★★☆☆
持っといても損はしないな。