小浜逸郎・ことばの闘い

評論家をやっています。ジャンルは、思想・哲学・文学などが主ですが、時に応じて政治・社会・教育・音楽などを論じます。

98%の絶望と2%の希望(その1)

2017年11月07日 17時58分47秒 | 経済



総選挙終了後、主としてフェイスブックで得た情報を手掛かりにして、今後の日本経済のお先真っ暗な情勢について書いてみます。
お先真っ暗にしているのは、もちろんすべて財務省

このテーマはもう聞き飽きているかもしれませんが、次の二つの理由から、やはり書くことにします。
①国民のマインドコントロールを少しでも解くためには、何回でも繰り返し伝える必要があること。
②二重の意味でひどい記事に接したので、その書き手のレベルのあまりの低さに腹が立ったこと(こちらは次号)。

第一に、2019年10月に予定されているという消費税の10%への値上げについて。

すでに安倍政権は選挙期間中から、増税を前提とした使い道の議論で国民を煙に巻いていました。
増税で見込まれる五兆円の増額分の一部を負債の返済にあてず、教育資金に回すというのです。
しかもそれでは3600億円足りないから、それを企業の社会保険料から徴収するとか。

突っ込みどころ満載ですね。
まず増税の理由がPB黒字化という根本的に誤った「財政再建」方針にあること。
これは、すでに三橋貴明さんや藤井聡さんによってさんざん説かれてきましたので、ここでは省きます。
次に、そもそも消費増税は、今後予想される社会保障費などの増大に充てるという名目で合意がなされていたはずです。
それがいつの間にか、政府の負債返済に充てると、すり替わってしまいました。
ありもしない財政問題の解決のために。
次に、税率2%の増加で五兆円の税収増という試算の根拠は何なのか。
増税によってさらに消費が大きな打撃を受けることが予想されます。
日本のGDPの6割は個人消費ですから、GDPが大幅に増えない限り、こんな増収は見込めないはずです。
GDPの増加が見込めないなら、負債対GDP比という正しい意味での「財政再建」も望めないわけです。
こういう机上の空論から得た数字で国民をだまそうとする手口は、2017年4月に10%への増税を予定していた時の、軽減税率論議と同じです。
なぜなら、初めに増税ありきで論議しているからです。
しかし、筆者は寡聞にして、今回、この算定根拠について疑問を呈する記事に出会ったことがありませんでした。
さらに、不足分を企業の社会保険料から徴収するというのは、実質的な増税ですから、制度破壊であると同時に、一般国民にしわ寄せが行きます。
いったい何のための社会福祉政策なのか。

●第二に、財務省が提出した診療報酬、介護報酬の減額案について
http://digital.asahi.com/articles/DA3S13198453.html?rm=150

この案をまとめると次のようになります。

①社会保障費の自然増6300億円を5000億円に抑える。
②診療報酬を2%台半ば以上減額する。
③薬価だけでなく、医師らの人件費も減らす。
④75歳以上の患者の窓口負担を1割から2割に引き上げる。
⑤今年度の介護報酬1.14%プラス改定を、元に戻す。

これらの提案の理由ですが、医療報酬については、デフレ期にもかかわらず、他産業に比べ、本体部分(人件費など)が高止まりしているから、また、介護報酬については、全体の利益率が中小企業の平均より高く、おおむね良好な経営状況だから、だそうです。
この理由はデタラメです
医療業界は深刻な医師不足に悩まされ(特に地方)、救急医療システムは壊滅の危機に瀕しています。
介護業界の仕事のきつさは格別です。
きつさと低収入のために資格や技能を持ちながら離職していく人が跡を絶ちません。
命をあずかる大切な仕事が普通より高収入を得ても当然なのに、国税庁が発表した2015年の業種別平均年収ランキングによれば、全14業種のうち、医療・福祉関係は第10位で、388万円という低所得です。
https://dc-startclub.com/asset/967/3

だいたい、何よりも政府が責任をもってデフレ脱却を果たさなければならないこの時期に、「デフレ期にもかかわらず、他の産業に比べて」とは何事か。
一方では景気は回復しつつある(あるいは、すでに回復した)などと駄法螺を吹きまくっているくせに、利用したい時には「デフレ」を利用する。
自分でデフレを認めているわけですね
このリクツは、みんな一緒に貧乏になるべきだと言っているに等しいではありませんか。
要するに財務省は、国民生活のことなどこれっぽっちも考えていず、とにかく家計と同じように、財源がない、財源がないと、ドケチな数字いじりばかりやっているのです。
臆病な精神が代々染みついているために、パイが限られているという観念に縛られていて、国民から搾り取る以外には、自ら出動してパイを積極的に大きくしていこうという気がみじんもないのです。
ここには積極財政のセの字もありません。
これで、国民経済の運命をあずかる政府の中枢機構と言えるのでしょうか

これについては、10月5日付のフェイスブックで、藤井聡さんが、次のように言及しています。

政府は今、デフレ脱却のために「賃上げ」するように激しく財界に働きかけ続けています。
・・・が、それとは逆の「賃下げ」を、介護、医療で働く人たちに対して進めようとしています。
これって、政府が民間企業に「俺が払う分は、オカネがもったいないから賃金下げるけど、俺のサイフとはカンケーないおまえ達は賃金あげろよ!」」と言っているように聞こえるのは、私だけでしょうか・・・・?
これでは永遠にデフレ脱却なんてできませんね。


この藤井さんの表現はすごくわかりやすいですね。
安倍首相は、以前にも経団連などに賃上げを「お願い」したことがあって、自分のやるべきことをやらないで、何やってんだ、と思ったものです。
筆者は腐っても「小さな政府」論者ではありませんが、資本主義を認めるかぎり、「市場の自由」の原則は守られるべきだと思っています。
政府が勝手に緊縮財政を進めた結果、デフレを長引かせているのに、もしその責任をなにも自覚せずに、市場に何かを要求するとすれば、それは、根本的なルール違反と言ってよい。
自分で出した汚物を、これはお前が出したんだからお前が片づけろよと言っているのと同じです。
いくら財界が「はあ、検討してみましょう」と答えても、実際には「こっちにはこっちの都合があらあな」で終わりです。
資本主義の当たり前の理屈が今の政権はわかっていない。
おろかな政府を持った私たち国民は、「ああ、悲しいかな」としか言いようがありません。
ジャンル:
経済
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