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ランバート・アンド・スタンプ

2016-06-06 11:07:23 | 銀幕

5月21日から新宿のK's Cinemaで上映されているこの映画をやっと見に行きました。

映画が始まると、ドキュメンタリー映画なので字幕を必死に追いかけて読んでその合間に映像を見るような鑑賞で、英語をそのまま聞き取れない我が身の不甲斐なさを痛感させられました。
でも、そこに語られたのは1960年代ロックの創成期の物語。過去と現在の画面が交互に変わる話の展開に必死にくらいつきながら、新しい文化を生み出していくパワーを感じていました。


上の写真の向かって右がキット・ランバート。そして向かって左側がクリス・スタンプ

いまだ階級社会のイギリスで
作曲家で指揮者の父をもち、貴族でオックスフォード大学出身というエリートのキット・ランバート。とてもパワフルな人だと思いました。アマゾンの調査隊の一員になった時にタフな行動力を発揮する。そして彼はゲイで偏見に苦しみ父との関係にも苦しんでいた。

クリス・スタンプは労働者階級(という言葉が成り立つのがいかにもイギリスだ)の生まれ。とても貧しい家庭で彼の住む環境は治安がよくなく進学など考えたことのない人たちばかり。その生活から這い上がるべく兄テレンス・スタンプは俳優の道を選び成功していく。弟のクリスは不良少年で心配した兄の手引きでショウビズ界に入ってゆく。

映画撮影所で助監督として働いた二人は出会い意気投合しパートナーとなる。
みんな二人の関係をかんぐったりしたそうだけど、二人の関係はまさにソウルメイト。正反対の環境で育った二人の魂が響き合い充足され新しい一歩を踏み出す勇気を生み出してくれるという

二人は新進のロックミュージシャンがスターになるまでのドキュメント映画を作ろうと計画し、ライブハウスを見て回り、であったのがThe WHO

the Who はピート・タウンジェント(リードギター)、ロジャー・ダルトリー(ボーカル)、ジョン・エントウィッスル(ベースギター)、 キース・ムーン(ドラム)の4人のメンバーのグループ

クリスがバンドのメンバーに給料を支払う為に過酷な仕事をしていた事、キットとクリスは上流階級が住むアパートにピートも一緒に住まわせて直接音楽を教え、上流階級の特権や優遇をうまく利用する術を教える。目立つファンを取り込んでファンのイメージをかっこよく印象付けた作戦、名曲「My Generation」の独特の歌い方にクリスの発案があった事、ロジャーのルックスの変化のことなど。その中でピートがちょっとしたエピソードを語ったのが面白かったです。それはイギリスジョークなのか少しは本気だったのか煙に巻くように話終えた後ニヤリとしてましたが。
更に仕事を広げてレコードレーベルを立ち上げ新しい才能を発掘もする。今やレジェンドとなってる名ギタリストもその一人だとは。

the Who のメンバーの作る曲に対するアドバイスは暖かく柔軟で、決して上から物を言うような威圧的でなかったのも印象的でした。キットもクリスも才能を伸ばす心得を持っていたんだね。
そして二人にとって幸運なことは、メンバーそれぞれの才能は本物だったこと。
豊かな音楽の知識を伝授され、応援されピート・タウンジェントは作詞作曲の才能を開花していく。ピートがキットとクリスに作曲したばかりの曲Glittering Girl をギターの弾き語りで聞かせるシーンが印象的でした。ピートの繊細な歌声、その歌を聞く二人の真剣で優しい表情。

その結実した音楽がコンセプトアルバム「TOMMY」
このアルバムが the Who の名声を一気に高めていった
私もこのアルバムが大好きです。特に前半、本当に苦しんでる者は訴える術を失ってしまい、声なき声で救済を求め続けるのに誰も気づかれない哀しみに共感を覚えます。

映画を作る時が来た

物凄いパワーが使われる共同作業にはある程度の成果の後、これまで潜んでいた齟齬が表面化して深い亀裂を生じさせてしまう。
また二人が育てたバンドのメンバーも自我を確立していった。更には金銭トラブルが決定的になってしまう
別の人の手によって作られた映画「TOMMY」を彼らはどんな思いでみたのだろうか
キットとクリスもパートナーを解消してゆく

キット・ランバートはベネツィアに居を変えて、ボヘミアンな生活の果てに亡くなります。

年月は過ぎ、

キースとジョンが鬼籍に入り、いまやピートとロジャーの二人のみとなったthe Who はキットとクリスに深い感謝を示す間柄になった
キットとクリスなくして、どうして今のthe Who があり得るだろうか
人情厚いロジャーがクリスを大事に思っているのが嬉しかったです。
 
10年かけてインタビューしたこの映画でクリスはもともとルックスのいい方だし、かっこいい実年になって輝かしい日々を語ってました。
その中でとうとう映画を作れなかったことを、「構わないさ」と言いながら心残りをにじませていました。
クリスのその後はthe Who を離れて新たな人生を歩んだそうです。
クリス・スタンプも2012年にこの映画の完成を待たず亡くなりました。

そして思うんです。彼らが熱望したドキュメンタリー映画の主人公は、彼ら自身だったんだ。キットとクリスこそが映画の主人公として生きたんだ、と。
世間の常識に中指立てるロック界の空気がキットとクリスに羽を拡げ才能を発揮して羽ばたくチャンスを与えてくれたんだと。
彼らの大いなる計画は次世代の監督の手によってここで結実したのだと思うのです。

メンバー同志もいさかいもあったけど、今は深い友情で結ばれている。
友情もいさかいも精一杯誠実だった彼らがすごく素敵だ

そしてひょろりと背の高いピートが日本で言う四股を踏んでギターを構える姿を入れた映画ポスターがかっこいい!です


上映されたK'sCinemaでは、 the Who の貴重なコレクションが展示されていて撮影可能でしたので写真に撮りました。
その中から


名盤「Who's Next 」のサイン入りアルバム


この映画へのコメントも貼られてました。長い間ロックに関係された方々のコメントをじっくり読みました。特に加藤ひさし氏のエピソードを語った長いコメントが良かったです。

そして
ファングッズも販売☆




追記 
キット・ランバートの生涯を描いた映画を現在製作しているそうです。ドラマチックな彼の人生の軌跡を鑑賞できるのを今からとても楽しみにしてます



2 コメント

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楽しみにしてました! (マチルダ)
2016-06-06 15:03:30
ご覧になったんですね!
記事のアップ楽しみにしてました。
昼休みスマホで読んでるんですか、後ほど
じっくり読ませていただきます。

サイン入り写真も!
万がいち地元で上映なんて話になったとしてもこういうのが展示されるなんてありそうもないから、写真up してくださってほんとにうれしい。
見れますように! (blueash)
2016-06-07 00:14:35
マチルダさん
はい!6月1日に行ってきました。新宿駅の近くなのに迷ってしまいましたが、上映時間までには間に合って堪能しました。
そしてロビーに飾られたサインは初代ファンクラブ会長の保科好宏氏のコレクションなのだそうです。この映画に対するthe Who 関係者やファンの思い入れは深いのだと実感しました。
昔、キット・ランバートとクリス・スタンプのエピソードを知って、スウィンギングロンドン時代のおとぎ話のようだとわくわくしたことがありましたが、本当に映画になっていくとは、驚きそれから納得しました。

マチルダさんのお近くにも是非巡回してほしいです☆

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