山 鳩 通 信

日常の発見をめざして

オルガ

2017-06-17 02:02:21 | テレビ

   NHKテレビで 『大草原の小さな家』 を観せていたころの夕 5 時すぎから 6 時までの時間、私は不思議な世界にひきこまれてしまっていた。アメリカ製のこのテレビ映画が特別に私に映ったように、アメリカの視聴者にとってもそれは特別なのではないかと思われた。とにかく流行や現代性とかを超越していた。この映画は、特殊な効果をねらった方法など一切使わないで、平凡なと言えるくらいの坦々とした描写でありながら、どこか静かで、優しく、なによりも私が忘れてしまった充実した世界を見せてくれる映画であった。ある日の 「オルガの靴」 というのに特に感動した。
   少女オルガは、片方の足が 5 センチほど短い障害児である。父はそれを恥じて、オルガを外で遊ばせたがらない。母親は早く亡くなったらしい。しかし祖母 (農家の質素ななりで、とても気品のある農婦だった) は、それではいけないと考えているようである。このままでは、オルガは暗い、いじけた少女になってしまう。それで、インガルスさんのところにオルガの革靴を持参し、短い方の足用の靴の底を木で高くする工作を依頼する。靴底と木を接着したものが形もよく仕上がる。
   オルガがそれを履くと、靴底は揃った高さになった。そしてそろそろと歩き始め、次にだんだん速く歩く。オルガの歓びが伝わって来る。
   オルガは、心配そうに見ているインガルスさんのそばまで行き、深い感謝をこめたまなざしで見つめ、そして黙ってインガルスさんに身を寄せた。インガルスさんはオルガをひしと抱いた。自分の娘を抱く時と同じくらいに。メアリーやローラたちはにっこりしてそれを見ている。特にローラは、出っぱりの前歯を見せて、そんな父さんが誇らしそうである。
   オルガはその靴を履いて、早くも活発に仲間たちと三角ベースボールを始める。生き生きとしたオルガ……こんな娘の姿を見て、父は自分の今までのオルガに対する考え方が間違いであった、というような表情をする。その父を見るオルガの顔。「どう? 父さん、素敵な靴でしょ」 と言っているようだ。
   このおさげの少女が、崇高なまでに美しく見えて来て仕方がなかった。

 

(1998 ・ 秋)

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